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9.移ろい
486.新学年
朝のホームルームで担任が受験について話をする。
もうガッツリ受験モードに入ってる人もいれば、まだまだ部活に集中という人もいるし、将来の目標なんかなくて先生の話も聞かずにスマホを弄っている人もいる。
ツンツンと背中を突かれて、後ろを向く。
「永那、放課後遊ばない?空井さん、忙しいんでしょ?」
「用事あるから無理」
「用事?どんな用事?」
「燈夏には関係ないでしょ」
「…どうせ用事なんてないくせに」
燈夏は両腕を枕にして、そっぽを向く。
「勉強すんだよ」
視線が私に戻る。
「どこで?」
「家の近くの図書館」
「…ひとり?」
「そうだけど」
「じゃあ私も行っていい?」
「家の近くだよ?学校の近くじゃなくて。電車乗るよ?」
「べつにいいよ?」
“えー…”と内心思うけど、断る理由も特にない。
「まあ、いいなら、いいけど…」
「やった!嬉しいっ、永那と2人で遊ぶの、めっちゃ久しぶり」
「遊ぶんじゃなくて」
「勉強ね、勉強」
「ハァ」と息を吐いて、前を向く。
先生と目が合って、睨まれた。
ペコリと小さく頭を下げると、先生はクラス全体を見渡した。
「穂」
休み時間、穂の席のそばにしゃがむ。
「永那ちゃん、おはよう」
微笑みを向けられて、蕩けそうになる。
「好き」
フフッと彼女が笑う。
両眉を上げて、目だけ動かしてキョロキョロと周りを見る。
顔が少し近づいて、彼女が囁く。
「私も、好きだよ」
「キスしていい?」
「だ、ダメ」
可愛い。
「今日さ?」
「うん」
「燈夏と勉強することになった」
「八嶋さん?…わかった」
ジッと彼女の目を見る。
彼女が見つめ返してくれる。
首を傾げ、彼女の口角が上がる。
“どうしたの?”と聞いてくれているみたいだ。
「私の家の近くの図書館なんだけど、いいかな?」
「うん。いいんじゃない?…その方が、永那ちゃん、早く帰れるもんね」
私のことを考えてくれる穂が好き。
私のことを信じてくれる穂が好き。
「嫌じゃないの?」
「え?どうして?」
「燈夏と2人きりだから」
少し、彼女の眉頭に力が込もる。
パチパチと瞬きした後「嫌じゃ、ないよ?」と、心底不思議そうに言った。
“何が嫌なんだろう?”と、考えるように。
そうだよね、穂はそういう子。
なんにも疑っていない。
何かが起こるかもしれないなんて、少しも考えていない。
当然、なんにも起きないけど。
なんにも起きなくとも、過去の私のやってきたことを知っているのに、なぜ疑わずにいられるのだろう?
私だったら私を疑う。
私だったら心配になる。
「おっ」
頭と背中に重みを感じて、少し前のめりになる。
「おはよ」
慣れた重み。慣れた感触。
「おはよう、千陽」
「なに話してたの?」
「永那ちゃんが、八嶋さんと勉強するんだって」
「燈夏と…?なんで?」
「一緒に勉強したいんだと。私の家の近くの図書館まで来てくれるって言うから、いいよって言った」
「ふーん?…穂、気をつけなきゃダメだよ?」
「なにを?」
「燈夏、あたしと似てるから」
私の背中に抱きつく千陽がゆらゆらと前後に揺れるから、私も視界が揺れる。
「千陽と…?それで、何を気をつけるの?」
千陽が小さく笑う。
「べつに…。永那がしっかりすればいいだけの話だし、なんでもない」
わざと体重をかけられた。
…重い。
そんな圧かけなくたって、なんにもないし。
そもそも燈夏って、同性と付き合うようなタイプなのかな?
チラリと燈夏を見る。
一瞬目が合って、すぐにそらされた。
他のクラスメイトと話しているから、こちらの会話までは聞こえていないんだろうけど、気になるらしい。
私の経験上、世の中には大まかに3タイプいると思う。
パートナーが、絶対に異性じゃないと嫌な人。
反対に、絶対に同性じゃないと嫌な人。
そして、どちらでもない人。
結婚や妊娠を視野に入れると話は変わってくるんだろうけど、特に女子の場合、ただ恋人関係になるだけなら同性でもOKという子が、かなりの数いる。
そういう子達が“どちらでもない人”に属する。
“異性・同性じゃないと嫌”というのは、もはや嫌悪感に近いものがある。
“異性・同性が良い”のではなく“異性・同性じゃないと嫌”なのだ。
“◯◯が良い”のと“◯◯が嫌”なのは、意味合いが似ているようで、全然違う。
“◯◯が良い”のは、何かしらの影響を受けて変わる可能性が高いけど、“嫌”なのはなかなか変わらないと、私は思っている。
それはきっと、天地がひっくり返っても変わらないのだろう。
…さすがに、天地がひっくり返ったら変わるかな?
芹奈は、私と恋人になることを望んでいた。
彼女は最初“異性が良い”と思っていた、“どちらでもない人”だった。
私のことを好きだと言ってくれたのは嬉しかったけど、まあ…私は芹奈のことを友達だと思っているし、マッチョな男が好きなのも知っていたから、相性が良さそうな奴とくっつけさせた。
今でも上手くいってるみたいだし、なかなか私の見る目は素晴らしいんじゃないかと自画自賛。
燈夏は…芹奈ともまた違う感じがするんだよな。
裏表が激しくて、真意がわからない。
もうガッツリ受験モードに入ってる人もいれば、まだまだ部活に集中という人もいるし、将来の目標なんかなくて先生の話も聞かずにスマホを弄っている人もいる。
ツンツンと背中を突かれて、後ろを向く。
「永那、放課後遊ばない?空井さん、忙しいんでしょ?」
「用事あるから無理」
「用事?どんな用事?」
「燈夏には関係ないでしょ」
「…どうせ用事なんてないくせに」
燈夏は両腕を枕にして、そっぽを向く。
「勉強すんだよ」
視線が私に戻る。
「どこで?」
「家の近くの図書館」
「…ひとり?」
「そうだけど」
「じゃあ私も行っていい?」
「家の近くだよ?学校の近くじゃなくて。電車乗るよ?」
「べつにいいよ?」
“えー…”と内心思うけど、断る理由も特にない。
「まあ、いいなら、いいけど…」
「やった!嬉しいっ、永那と2人で遊ぶの、めっちゃ久しぶり」
「遊ぶんじゃなくて」
「勉強ね、勉強」
「ハァ」と息を吐いて、前を向く。
先生と目が合って、睨まれた。
ペコリと小さく頭を下げると、先生はクラス全体を見渡した。
「穂」
休み時間、穂の席のそばにしゃがむ。
「永那ちゃん、おはよう」
微笑みを向けられて、蕩けそうになる。
「好き」
フフッと彼女が笑う。
両眉を上げて、目だけ動かしてキョロキョロと周りを見る。
顔が少し近づいて、彼女が囁く。
「私も、好きだよ」
「キスしていい?」
「だ、ダメ」
可愛い。
「今日さ?」
「うん」
「燈夏と勉強することになった」
「八嶋さん?…わかった」
ジッと彼女の目を見る。
彼女が見つめ返してくれる。
首を傾げ、彼女の口角が上がる。
“どうしたの?”と聞いてくれているみたいだ。
「私の家の近くの図書館なんだけど、いいかな?」
「うん。いいんじゃない?…その方が、永那ちゃん、早く帰れるもんね」
私のことを考えてくれる穂が好き。
私のことを信じてくれる穂が好き。
「嫌じゃないの?」
「え?どうして?」
「燈夏と2人きりだから」
少し、彼女の眉頭に力が込もる。
パチパチと瞬きした後「嫌じゃ、ないよ?」と、心底不思議そうに言った。
“何が嫌なんだろう?”と、考えるように。
そうだよね、穂はそういう子。
なんにも疑っていない。
何かが起こるかもしれないなんて、少しも考えていない。
当然、なんにも起きないけど。
なんにも起きなくとも、過去の私のやってきたことを知っているのに、なぜ疑わずにいられるのだろう?
私だったら私を疑う。
私だったら心配になる。
「おっ」
頭と背中に重みを感じて、少し前のめりになる。
「おはよ」
慣れた重み。慣れた感触。
「おはよう、千陽」
「なに話してたの?」
「永那ちゃんが、八嶋さんと勉強するんだって」
「燈夏と…?なんで?」
「一緒に勉強したいんだと。私の家の近くの図書館まで来てくれるって言うから、いいよって言った」
「ふーん?…穂、気をつけなきゃダメだよ?」
「なにを?」
「燈夏、あたしと似てるから」
私の背中に抱きつく千陽がゆらゆらと前後に揺れるから、私も視界が揺れる。
「千陽と…?それで、何を気をつけるの?」
千陽が小さく笑う。
「べつに…。永那がしっかりすればいいだけの話だし、なんでもない」
わざと体重をかけられた。
…重い。
そんな圧かけなくたって、なんにもないし。
そもそも燈夏って、同性と付き合うようなタイプなのかな?
チラリと燈夏を見る。
一瞬目が合って、すぐにそらされた。
他のクラスメイトと話しているから、こちらの会話までは聞こえていないんだろうけど、気になるらしい。
私の経験上、世の中には大まかに3タイプいると思う。
パートナーが、絶対に異性じゃないと嫌な人。
反対に、絶対に同性じゃないと嫌な人。
そして、どちらでもない人。
結婚や妊娠を視野に入れると話は変わってくるんだろうけど、特に女子の場合、ただ恋人関係になるだけなら同性でもOKという子が、かなりの数いる。
そういう子達が“どちらでもない人”に属する。
“異性・同性じゃないと嫌”というのは、もはや嫌悪感に近いものがある。
“異性・同性が良い”のではなく“異性・同性じゃないと嫌”なのだ。
“◯◯が良い”のと“◯◯が嫌”なのは、意味合いが似ているようで、全然違う。
“◯◯が良い”のは、何かしらの影響を受けて変わる可能性が高いけど、“嫌”なのはなかなか変わらないと、私は思っている。
それはきっと、天地がひっくり返っても変わらないのだろう。
…さすがに、天地がひっくり返ったら変わるかな?
芹奈は、私と恋人になることを望んでいた。
彼女は最初“異性が良い”と思っていた、“どちらでもない人”だった。
私のことを好きだと言ってくれたのは嬉しかったけど、まあ…私は芹奈のことを友達だと思っているし、マッチョな男が好きなのも知っていたから、相性が良さそうな奴とくっつけさせた。
今でも上手くいってるみたいだし、なかなか私の見る目は素晴らしいんじゃないかと自画自賛。
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裏表が激しくて、真意がわからない。
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