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9.移ろい
489.新学年
「じゃあ、中川さんのことは全然思い出せないんだ?」
穂が私の顔を覗き込む。
「はい…」
「よっぽど出会いが衝撃的だったのかねー?わざわざ同じ高校に入学するくらいなんだし」
階段を上る私の両側には、穂と優里が並んでいる。
私達の後ろを、千陽と桜が歩く。
「わざわざ同じ高校にってのは、正直ビビったよ…。桜は、たまたま私達と同じ高校になったんだよね?」
振り向くと「うん」と彼女が小さく頷く。
「誰かに私達がこの高校通ってること言ったりした?」
首を横に振られる。
「だよね。…どうやって高校調べたんだろう?私と千陽の進学先、先生くらいしか知らないはずなのに」
「先生が教えちゃったとか?」
優里が言う。
「えー!?そんなことある?」
「昔ならあったかもしれないけど…ちょっと考えられないよね」
穂が真剣に考え始める。
「あんたが制服で歩いているのをどっかで見られてたなら、簡単に調べられるんじゃない?」
「ハッ!そっか!!そういうことか!!!」
「昔、あんたストーカーされてたしね。…あの子も、永那とろくに喋ったこともない、一目惚れじゃなかった?」
あれは…そんなに悪い思い出ではなかったよ…?
過酷な中3を乗り越えるのに、必要な出会いだったと思ってる。
1番、私のストレス発散に付き合ってくれた子だったから。
後腐れもなく、すっきり別れられた、数少ない相手だった。
「永那ちゃん、ストーカーされてたの?」
穂がチラリと千陽を見ながら聞く。
昔、千陽がストーカーされていた話を思い出しているんだろう。
あれとは全然毛色が違う。
千陽のやつは、本格的な、犯罪の臭いがするやつだ。
千陽の送り迎えをする時、いつも警戒していたけど、結局犯罪まがいのことは起きなかったな。
通報されるかもとビビって諦めたんだろうけど…諦めてくれるような相手で良かった。
今日の今日まで、とりあえず千陽の身には何も起こっていないのだから。
「ん~、ストーカーっていうか…なんか、こう…会いたくて後つけちゃった~みたいな感じで、ストーカーではない。うん」
「へえ…」
「さすが永那、モテモテですな~」
「まあなー」
「このこのこのー!羨ましい!」
優里に頬を抓られる。
「永那ちゃん…グサッとされない…?」
教室の手前で穂が立ち止まり、眉をハの字にする。
下唇を噛んで、心配そうな表情を浮かべた。
…可愛すぎる!!
「グサッと?」
優里が私の頬を抓っていた手を離す。
「グサッ!」
優里に見えないナイフを突き刺す。
「ぐおおおっ」
大袈裟にお腹を押さえて、軽く壁にぶつかる。
角にぶつかって、本当に痛そう。
…ドジだなあ。
「何してるんですか?授業始まりますよ」
先生に声をかけられ、みんな慌てて教室に入った。
放課後、授業が終わって、すぐに穂が私のそばに来た。
「グサッとされないでね?気をつけてね?わかった?」
子供に言い聞かせるみたいに言うから、思わず笑みが溢れる。
「わかったよ。穂も、生徒会終わったら気をつけて帰るんだよ?」
「うん。…じゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」
穂がパタパタと小走りに、自分の席に戻る。
急いで荷物をまとめて、また私のそばに来た。
「気をつけてね!絶対だよ!」
「わかってるって。大丈夫だよ」
心配性だなあ。…可愛い。
「家に帰ったら連絡して?」
「ん」
彼女がソワソワするから、彼女の手を握った。
「大丈夫。生徒会、行ってきな?」
2度頷いて、決心するように彼女が歩き出す。
何度も私の方を振り向くから、手を振った。
心配そうに、振り返してくれる。
「大好きだよ!」
大声で言うと、一気に彼女の顔が真っ赤に染まった。
人差し指を唇に当てて「シーッ!」とする。
可愛い。
逃げるように彼女は教室から出て行った。
「イチャイチャすんなし」
冗談っぽく言いつつも、本気でそう思っているのが伝わってくる。
「なんで?」
「見てて…イタい」
「べつにいいよ?イタがられても」
燈夏がふんっと鼻を鳴らす。
「燈夏~、本当は燈夏もイチャイチャしたいんだろ~?羨ましいんだろ~?」
ニヤリと笑うと、燈夏は唇を突き出す。
「うるさっ」
「燈夏なら、告れば彼氏くらい出来るんじゃないの?」
「なんで私が告る前提?」
「早々に相手が欲しいなら、積極的になるべきじゃない?」
「ハァ」とため息を吐かれる。
「そんな欲してないし」
「ふーん?」
千陽が桜の元へ来た。
「今日も予備校?勉強熱心だね」
「今日は桜の家に遊びに行くの」
「へえ?仲が良さそうで何よりだわ。一緒に帰る?」
千陽がチラリと燈夏を見る。
その視線を追って、私も燈夏を見た。
燈夏は“良い”とも“嫌”とも取れる顔つきで、千陽はその反応がどうでもいいかのように、「帰る」と一言呟いた。
ここにいるのが桜じゃなくて、他の女子だったら、1年の時に戻ったみたいだ。
桜がいることで、1年の時とはまるで違うけど。
だって、なんかちょっと空気が重たい。
決して桜のせいではないけど、少なくとも陽気な雰囲気はなかった。
穂が私の顔を覗き込む。
「はい…」
「よっぽど出会いが衝撃的だったのかねー?わざわざ同じ高校に入学するくらいなんだし」
階段を上る私の両側には、穂と優里が並んでいる。
私達の後ろを、千陽と桜が歩く。
「わざわざ同じ高校にってのは、正直ビビったよ…。桜は、たまたま私達と同じ高校になったんだよね?」
振り向くと「うん」と彼女が小さく頷く。
「誰かに私達がこの高校通ってること言ったりした?」
首を横に振られる。
「だよね。…どうやって高校調べたんだろう?私と千陽の進学先、先生くらいしか知らないはずなのに」
「先生が教えちゃったとか?」
優里が言う。
「えー!?そんなことある?」
「昔ならあったかもしれないけど…ちょっと考えられないよね」
穂が真剣に考え始める。
「あんたが制服で歩いているのをどっかで見られてたなら、簡単に調べられるんじゃない?」
「ハッ!そっか!!そういうことか!!!」
「昔、あんたストーカーされてたしね。…あの子も、永那とろくに喋ったこともない、一目惚れじゃなかった?」
あれは…そんなに悪い思い出ではなかったよ…?
過酷な中3を乗り越えるのに、必要な出会いだったと思ってる。
1番、私のストレス発散に付き合ってくれた子だったから。
後腐れもなく、すっきり別れられた、数少ない相手だった。
「永那ちゃん、ストーカーされてたの?」
穂がチラリと千陽を見ながら聞く。
昔、千陽がストーカーされていた話を思い出しているんだろう。
あれとは全然毛色が違う。
千陽のやつは、本格的な、犯罪の臭いがするやつだ。
千陽の送り迎えをする時、いつも警戒していたけど、結局犯罪まがいのことは起きなかったな。
通報されるかもとビビって諦めたんだろうけど…諦めてくれるような相手で良かった。
今日の今日まで、とりあえず千陽の身には何も起こっていないのだから。
「ん~、ストーカーっていうか…なんか、こう…会いたくて後つけちゃった~みたいな感じで、ストーカーではない。うん」
「へえ…」
「さすが永那、モテモテですな~」
「まあなー」
「このこのこのー!羨ましい!」
優里に頬を抓られる。
「永那ちゃん…グサッとされない…?」
教室の手前で穂が立ち止まり、眉をハの字にする。
下唇を噛んで、心配そうな表情を浮かべた。
…可愛すぎる!!
「グサッと?」
優里が私の頬を抓っていた手を離す。
「グサッ!」
優里に見えないナイフを突き刺す。
「ぐおおおっ」
大袈裟にお腹を押さえて、軽く壁にぶつかる。
角にぶつかって、本当に痛そう。
…ドジだなあ。
「何してるんですか?授業始まりますよ」
先生に声をかけられ、みんな慌てて教室に入った。
放課後、授業が終わって、すぐに穂が私のそばに来た。
「グサッとされないでね?気をつけてね?わかった?」
子供に言い聞かせるみたいに言うから、思わず笑みが溢れる。
「わかったよ。穂も、生徒会終わったら気をつけて帰るんだよ?」
「うん。…じゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」
穂がパタパタと小走りに、自分の席に戻る。
急いで荷物をまとめて、また私のそばに来た。
「気をつけてね!絶対だよ!」
「わかってるって。大丈夫だよ」
心配性だなあ。…可愛い。
「家に帰ったら連絡して?」
「ん」
彼女がソワソワするから、彼女の手を握った。
「大丈夫。生徒会、行ってきな?」
2度頷いて、決心するように彼女が歩き出す。
何度も私の方を振り向くから、手を振った。
心配そうに、振り返してくれる。
「大好きだよ!」
大声で言うと、一気に彼女の顔が真っ赤に染まった。
人差し指を唇に当てて「シーッ!」とする。
可愛い。
逃げるように彼女は教室から出て行った。
「イチャイチャすんなし」
冗談っぽく言いつつも、本気でそう思っているのが伝わってくる。
「なんで?」
「見てて…イタい」
「べつにいいよ?イタがられても」
燈夏がふんっと鼻を鳴らす。
「燈夏~、本当は燈夏もイチャイチャしたいんだろ~?羨ましいんだろ~?」
ニヤリと笑うと、燈夏は唇を突き出す。
「うるさっ」
「燈夏なら、告れば彼氏くらい出来るんじゃないの?」
「なんで私が告る前提?」
「早々に相手が欲しいなら、積極的になるべきじゃない?」
「ハァ」とため息を吐かれる。
「そんな欲してないし」
「ふーん?」
千陽が桜の元へ来た。
「今日も予備校?勉強熱心だね」
「今日は桜の家に遊びに行くの」
「へえ?仲が良さそうで何よりだわ。一緒に帰る?」
千陽がチラリと燈夏を見る。
その視線を追って、私も燈夏を見た。
燈夏は“良い”とも“嫌”とも取れる顔つきで、千陽はその反応がどうでもいいかのように、「帰る」と一言呟いた。
ここにいるのが桜じゃなくて、他の女子だったら、1年の時に戻ったみたいだ。
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