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9.移ろい
501.パーティ
「永那、これ、おまけ」
「おまけ…?」
別れ際、千陽が袋を渡してきた。
「ひとりの時に見て」
「ん?うん、わかった。ありがと」
千陽が頷いて、桜と歩き出す。
彼女達の背中を見送ってから、穂と家に向かった。
「なんだろうね?」
「ね?」
「私も見ちゃダメなのかな?」
「さあ?とりあえず私が最初に見てみるね?」
貰ったたくさんのプレゼントを穂に預け、歩きながら袋の口を開ける。
覗き見ても、暗くてよくわからない。
手を突っ込む。
「ん?」
「なに?」
手を抜いて、もう一度、よく中身を見る。
「なんだこりゃ」
「なに?」
穂が興味津々に袋の中を見ようとする。
けど、私は袋を閉じた。
「まあいいや、帰ったら見てみる」
むぅっと穂が唇を突き出す。
だからチュッとキスした。
…あれ?
何も文句を言われない。
「嫌じゃないの?」
「なにが?」
「チューされるの」
「嫌じゃないよ?」
「ふーん。じゃあ、もっと」
普段なら、ここで“だめー”って言うのに、言わない。
なので遠慮なくキスする。
彼女の両手が私のプレゼントで埋まっているのを良いことに、肩を掴んで、普通にキスする。
念のため、本当に良いのか1回確認して、また唇を重ねた。
何度も、何度も。
夜風に急かされるまで。
「うへへ、幸せ」
「…良かった」
ジト目で見られた。
やっぱり本当は嫌だった…?
「永那ちゃんの18歳の最初が、幸せで良かった」
「もう1回キスしてもいい?」
「もう、帰ろ?」
「帰ったら出来ないじゃん」
「…1回だけだよ?」
できるだけ長く触れ合う。
“長く”と思ったのに、離れてしまうと寂しくて。
近づこうとすると「だめ」と言われてしまった。
もっと長くしておけばよかった。
ドアを開けると「永那~!」とお母さんに抱きしめられた。
帰るのが遅くなったから泣いてると思ったけど、元気そうでホッとする。
「お母さん、こんばんは」
「穂ちゃん!どうぞどうぞ!!」
「お邪魔します」
「じゃ~ん!!」
お母さんがリビングに向けて両手を広げる。
「わ!すごい!」
穂が拍手する。
「え?お母さんが準備したの…?」
「そうだよ!奮発しちゃった!」
小さなテーブルには所狭しと豪華な食べ物が置かれていた。
真ん中にはケーキもある。
「あれ?…てか、穂が来ること、わかってたの?」
お箸が3膳用意されている。
「うん!永那、知らなかったの?」
「お母さん!サプライズです!」
「わ~!そうだった!」
「え!?え!?なんで!?…そもそもなんでお母さんと穂が連絡取り合ってんの!?」
「春休みに連絡先交換しておいたの。知らなかったでしょ?」
穂が子供みたいに笑う。
「最近、お母さんがよくスマホさわってんなって思ってたけど…もしかして、相手、穂?」
「うん!」
ボランティアで仲良くなった人だとずっと思っていた…。
穂に背中を押され、2人で手洗いうがいをする。
まさかこんなサプライズまで用意されていたとは…。
「永那ちゃんっ、嬉しい?」
「うん…。なんか…なんか…めちゃくちゃ嬉しい」
上手く言葉が出てこないほどに。
「良かった。永那ちゃんに喜んで貰いたくて、張り切っちゃった。やり過ぎかな?って心配にもなったけど…喜んでくれて良かった」
「私、きっと忘れない」
洗面台の前で、穂を抱きしめる。
「忘れないよ」
彼女が鏡越しに頷く。
「…行こ?お母さん、待たせちゃう」
「うん」
お母さんは、私が学校で貰ってきたプレゼントの山に驚いていた。
もちろん、千陽からのおまけは、見られないように鞄の底にしまってある。
ご飯は、スーパーで買った惣菜がほとんどだったけど、卵焼きや豚肉ともやしの炒め物、きのこの酢の物はお母さんの手作りだった。
包丁を使わずに出来る料理を作ってくれている。
「ありがとう、お母さん、穂」
2人が顔をくしゃくしゃにして笑った。
…こういうのを、幸せって言うんだ。
ご飯を食べ終えて、小さなホールのケーキも頂く。
シンプルな苺のショートケーキ。
その後は、お母さんが靴下をプレゼントしてくれた。
ワンポイントで太陽の刺繍が施されたグレーの靴下と、紺と緑を基調にしたタータンチェックの靴下の2足。
…お母さんが、こんなにちゃんと私の誕生日を祝ってくれたのなんて、いつぶりだろう?
小学6年生ぶりかな…?
ちょうど離婚したのが、私が中学入りたての時で、誕生日の直前だった。
お姉ちゃんがコンビニのカットケーキを買ってきてくれたのは覚えてる。
気づけば、涙が溢れていた。
「永那ちゃん…?」
穂が心配そうに私を見る。
お母さんは準備で疲れたのか、大きくあくびをしていた。
濡れた頬を指で拭う。
「いやあ、マジで幸せだなって、思って…ごめん」
笑って誤魔化すけど、溢れて止まらない。
手を握られ、握り返す。
…終わってほしくない。
この時間が、続いてほしい。
そう願っても、残酷にも時は過ぎていく。
テレビのバラエティ番組が、区切りの良い時間で切り替わる。
そろそろ、穂を家に帰らせなきゃ。
これ以上留まらせちゃ…ダメ…なのに…帰ってほしくない。
「おまけ…?」
別れ際、千陽が袋を渡してきた。
「ひとりの時に見て」
「ん?うん、わかった。ありがと」
千陽が頷いて、桜と歩き出す。
彼女達の背中を見送ってから、穂と家に向かった。
「なんだろうね?」
「ね?」
「私も見ちゃダメなのかな?」
「さあ?とりあえず私が最初に見てみるね?」
貰ったたくさんのプレゼントを穂に預け、歩きながら袋の口を開ける。
覗き見ても、暗くてよくわからない。
手を突っ込む。
「ん?」
「なに?」
手を抜いて、もう一度、よく中身を見る。
「なんだこりゃ」
「なに?」
穂が興味津々に袋の中を見ようとする。
けど、私は袋を閉じた。
「まあいいや、帰ったら見てみる」
むぅっと穂が唇を突き出す。
だからチュッとキスした。
…あれ?
何も文句を言われない。
「嫌じゃないの?」
「なにが?」
「チューされるの」
「嫌じゃないよ?」
「ふーん。じゃあ、もっと」
普段なら、ここで“だめー”って言うのに、言わない。
なので遠慮なくキスする。
彼女の両手が私のプレゼントで埋まっているのを良いことに、肩を掴んで、普通にキスする。
念のため、本当に良いのか1回確認して、また唇を重ねた。
何度も、何度も。
夜風に急かされるまで。
「うへへ、幸せ」
「…良かった」
ジト目で見られた。
やっぱり本当は嫌だった…?
「永那ちゃんの18歳の最初が、幸せで良かった」
「もう1回キスしてもいい?」
「もう、帰ろ?」
「帰ったら出来ないじゃん」
「…1回だけだよ?」
できるだけ長く触れ合う。
“長く”と思ったのに、離れてしまうと寂しくて。
近づこうとすると「だめ」と言われてしまった。
もっと長くしておけばよかった。
ドアを開けると「永那~!」とお母さんに抱きしめられた。
帰るのが遅くなったから泣いてると思ったけど、元気そうでホッとする。
「お母さん、こんばんは」
「穂ちゃん!どうぞどうぞ!!」
「お邪魔します」
「じゃ~ん!!」
お母さんがリビングに向けて両手を広げる。
「わ!すごい!」
穂が拍手する。
「え?お母さんが準備したの…?」
「そうだよ!奮発しちゃった!」
小さなテーブルには所狭しと豪華な食べ物が置かれていた。
真ん中にはケーキもある。
「あれ?…てか、穂が来ること、わかってたの?」
お箸が3膳用意されている。
「うん!永那、知らなかったの?」
「お母さん!サプライズです!」
「わ~!そうだった!」
「え!?え!?なんで!?…そもそもなんでお母さんと穂が連絡取り合ってんの!?」
「春休みに連絡先交換しておいたの。知らなかったでしょ?」
穂が子供みたいに笑う。
「最近、お母さんがよくスマホさわってんなって思ってたけど…もしかして、相手、穂?」
「うん!」
ボランティアで仲良くなった人だとずっと思っていた…。
穂に背中を押され、2人で手洗いうがいをする。
まさかこんなサプライズまで用意されていたとは…。
「永那ちゃんっ、嬉しい?」
「うん…。なんか…なんか…めちゃくちゃ嬉しい」
上手く言葉が出てこないほどに。
「良かった。永那ちゃんに喜んで貰いたくて、張り切っちゃった。やり過ぎかな?って心配にもなったけど…喜んでくれて良かった」
「私、きっと忘れない」
洗面台の前で、穂を抱きしめる。
「忘れないよ」
彼女が鏡越しに頷く。
「…行こ?お母さん、待たせちゃう」
「うん」
お母さんは、私が学校で貰ってきたプレゼントの山に驚いていた。
もちろん、千陽からのおまけは、見られないように鞄の底にしまってある。
ご飯は、スーパーで買った惣菜がほとんどだったけど、卵焼きや豚肉ともやしの炒め物、きのこの酢の物はお母さんの手作りだった。
包丁を使わずに出来る料理を作ってくれている。
「ありがとう、お母さん、穂」
2人が顔をくしゃくしゃにして笑った。
…こういうのを、幸せって言うんだ。
ご飯を食べ終えて、小さなホールのケーキも頂く。
シンプルな苺のショートケーキ。
その後は、お母さんが靴下をプレゼントしてくれた。
ワンポイントで太陽の刺繍が施されたグレーの靴下と、紺と緑を基調にしたタータンチェックの靴下の2足。
…お母さんが、こんなにちゃんと私の誕生日を祝ってくれたのなんて、いつぶりだろう?
小学6年生ぶりかな…?
ちょうど離婚したのが、私が中学入りたての時で、誕生日の直前だった。
お姉ちゃんがコンビニのカットケーキを買ってきてくれたのは覚えてる。
気づけば、涙が溢れていた。
「永那ちゃん…?」
穂が心配そうに私を見る。
お母さんは準備で疲れたのか、大きくあくびをしていた。
濡れた頬を指で拭う。
「いやあ、マジで幸せだなって、思って…ごめん」
笑って誤魔化すけど、溢れて止まらない。
手を握られ、握り返す。
…終わってほしくない。
この時間が、続いてほしい。
そう願っても、残酷にも時は過ぎていく。
テレビのバラエティ番組が、区切りの良い時間で切り替わる。
そろそろ、穂を家に帰らせなきゃ。
これ以上留まらせちゃ…ダメ…なのに…帰ってほしくない。
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