執筆徒然日記

常森 楽

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大人になって気づいたこと

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当たり前なんだけど、「人って変わるもんだなあ…」と。
良い意味で変わる人もいるんだろうけど、どちらかと言うと少数派な気がしている。

自分が変わっている意識はずっとあった。
…というより、「変わろう」と意志を持って行動してきたから、時代によって、他者からの私への印象はすごく違う。
小学生の時はガキ大将?みたいな感じだっただろうし、中学生の時はヘラヘラ笑ってる不真面目な人間だったろうし、高校生の時は陽キャだったろうし、大学生の時は意識高い系だったろうし…。
社会人になってからは、どうだろう…?
まあ、それも新人の頃と今とでは印象は変わるのだと思う。
私は小学生の時の自分が1番好きで(笑)
素直で正義感が強くてリーダーシップがあって勉強も出来て遊び心もあって…暗い過去から抜け出そうとした時に目指したのは小学生の時の自分だった。
虐待は物心ついた時からされていたと記憶しているんだけど、なぜか小学生の時の私は真っ直ぐな人間だった。
たぶん、家族以外の環境が良かったんだろうなと思う。
小学校高学年から少しずつ性格が歪んでいった…というか、家庭環境以外の環境も悪くなり、信じられる人間が周りにいなかった。
だからひとりで生き抜くしかなかった。
鎧を身に着けるしかなかった。

大学生の時の、意識高い時が1番苦しかったし楽しかったから不思議。
たぶん感情が一気に豊かになった時期だったんだと思う。
だから、大学の時の友人に会うと、いつも居心地の悪さを感じる。
(まあ、どの時代の友人に会っても、どう接すればいいかわからなくて勝手に気まずいんだけど…)
成績が良くて、いろんなことにアクティブに取り組んでいて、バイトも3、4つこなして…みたいな感じだったから、周りから少し浮いていたようにも思う。
私の通っていた大学はやる気のない人が多かったから、尚のこと。
やる気のない人が多い中、そこそこやる気のある人達が集まっていたサークルに所属していて、大人になった今でも関わっているのはその人達。
最近、久々に会った。
会って、思った。
「人って変わるんだな」と。

大きな変化は感じないんだけど…なんていうか…“印象が変わった”というほうがしっくり来るのかもしれない。
大学の時は自分のことに必死だったから、相手がちゃんと見えていなかったのかもしれない。
穏やかで紳士でノリも良い、結構仲良くしていた男性がいる。
物理的な距離ができてしまって、ここ数年は会えていなかった。
最初は、特に印象の変化はなかった。
いつも通り、穏やかでノリの良い人だった。
でも、ふとした瞬間…彼がポロッと溢した言葉に、何度か違和感を抱いた。
彼が冗談のつもりだったのはわかっているんだけど、「あ、この人でも、こういうことを言うんだ」と思ってしまった。
割と真面目な話になっても、「あれ?この人って、こんな感じなんだ」と何度か思った。

社会人になると、年上との関わりも多くなる。
彼は社員寮に住んでいたと言っていたから、尚更関わりは濃密になるんだろう。
すると、きっと本人も知らず知らずの内に影響を受けて…所謂男性社会の圧力的なものの影響を受けて、無意識にそっちに偏ってしまったりするのかもしれない。
ストレスとかもあるんだろうけど。
“年上と関わると”という偏見は良くないのは頭では理解している。
けれども、私個人としては、年上の男性に好印象を抱いたことがないので、この偏見は自分ではなかなか払拭することができないでいる。
…ああ、最近、ひとりだけ、“良い大人だな”と思えた人に出会った。
最近じゃないか。数年前。
今でもその印象は変わらず、そう思わせてくれていることに、ひっそりと心の中で感謝している。

私は昔から男性が多い環境で過ごすことが多かった。
もちろん女友達もいたけれど、女性の割合が少ない環境で育った。
でも、だからこそ?男性がみんな優しくしてくれていることには気づいていた。
いつも気遣ってくれて、丁寧に接しようとしてくれているのを感じていた。
でも、気遣われ過ぎるわけでもなく、くだらない冗談で笑い合う日々だった。
粗暴な人もいたけれど、それは性別関係なくいたし、“そういう性格の人”と思えばどうでも良かった。
それに、私はある程度は流したり我慢したりするのだけれど、耐えられなくなるとハッキリ相手に色々言ってしまう性格なので、粗暴な人に恐れられていた感はある。
1度キレてしまえば、それからは大体丁寧に接してくれるようになる。
結果、みんな良い人だと思えてしまう。
(“もっと早く言えば良かった”とか呑気に思ってた)
だから、私は男女関係なく、みんな好きだった。

でも大人になって思う。
みんな良い人なのに変わりはない。
各々短所長所があって当たり前だ。
当然、私にだってある。
だけど、私が思っていたよりも、みんな、大人じゃない。
…上手い言葉が思いつかない。
“大人じゃない”というより…なんていうか…うーん…難しい。
学生の頃、穏やかで優しいと思っていた人…もちろん今でも優しい。
優しいけれど、そうじゃない一面もあるのだと、気づく。
レズビアンの人の中には、嫌悪とまではいかないまでも、男性が苦手という人も結構多い。
私は、彼女たちの言葉に耳を傾けつつ「まあ、そういう嫌な人もいるよね」くらいにしか思っていなかった。
でも最近は、少し男性に苦手意識を持つことが多くなった。
必死に首を横に振るのだけれど、1度抱いてしまった違和感が拭いきれない。

私の男性社会のイメージは、実力社会。
例えば単純な話、鍛えていて、ほんのり色黒で、髪をカチッとセットしていて、ハッキリものを言うような人は…男性社会で強いんだろうな、という印象があったりする。
(めちゃくちゃ偏見だけど。私の身近にいる、そういう人が、笑いながら過去のイジメ話を自慢気に話していたのがいやに思い出される。しかも本人はイジメていた自覚なし)
“強い”というのは、単純な力の強さもあるし、そういう人達が強引に男性社会を作り上げていってしまうんだろうなと思う。
で、男性全体が、その社会に無意識に引っ張られてしまう。
男性の中にも男性社会を嫌っている人はいて、何度か近況ボードとかで話に出ているけれど、昔女性に迫られたことがあって、少し女性に苦手意識のあるイケメンとか…。
そういう話を男同士ですると「羨ましい」と言われることが多いのだと、何かで聞いた。
だから友人に相談する気が起きないのだと…。
他にも、「接待で店に連れて行かれるのが苦痛」みたいな話をしていた人もいる。
でもやっぱり、多くの男性からは「羨ましい」と言われてしまって、なかなか悩みを打ち明けられない。
男性の自殺率が高いのは、そういうところからもくるんだろうなあと推測している。
悩みを誰にも打ち明けられない、打ち明けたとしても軽くあしらわれたり羨ましがられたりすることが多くて、結局誰にも寄り添ってもらえない。

そういう社会で生活していると、本当に無意識に、どんなに紳士で優しかった男性でも、染まってしまう部分があるんだろうな…と思う。
それが寂しくもあり、悲しくもある。
まあ、とは言え、なにも変わるのは男性だけではない。

長い付き合いの女友達がいる。
私がとあることで悩んでいた時、彼女は「良い方にいくといいね。私は、ちゃんとそうならないように対策してきたし、旦那もいるし、大丈夫だけど!」と、謎のマウントを取られた。
ここ2、3年、会う度に、ちょいちょいマウントのようなことをされてきたのだけれど、こんなにもあからさまにされたのは初めてのことで、驚いた。
瞳に溜まっていた涙も、凄い勢いで引っ込んでいった。
私は散々彼女の悩みに寄り添ってきたのに、なぜ私が悩んでいる時は寄り添ってくれないのだろう…?と、虚しくなった。
思い返してみれば、私はほとんど彼女に悩みを打ち明けたことがなかった。
いつも私が聞く側だった。
彼女が変化したのではないのかもしれない。
ただ、私が抱いていた印象が変わっただけなのかもしれない。

彼女との出会いも、そもそも、彼女がクラスでイジメられていたのがきっかけだった。
当時、私達は別々のクラスで、噂で彼女の存在を知っている…程度の関係だった。
野次馬のようなノリで、そのクラスを見に行った。
彼女はずっとひとりだった。
私は友人が多かったから、彼女と合いそうな友人を紹介してあげた。
最初、彼女は私が話しかけたことにビクビクしていたけれど、そのうち私の後をついて回るようになった。
次第にイジメはなくなり、学年が上がると同じクラスにさせられた。
鬱陶しくなって、友人に彼女を任せて、私は放浪した。
我ながら無責任だと思う。
それでも彼女は言った。
「あなたが私の1番の友達。人生で初めて出来た友達で、親友だ」と。
“鬱陶しくなった”と言いつつ、彼女に相談される度に話は聞いていた。
アドバイス出来ることがあるなら、した。
私はいつもそうだった。
心の中では「めんどくさいな」とか「鬱陶しいな」とか思っているのに、表面上は優しくしてしまう。
そんな自分が大嫌いだった。

だけど次第に、私も彼女を親友だと思うようになった。
私は人とあまり喧嘩をしないのだけれど、彼女とだけは喧嘩をした。
(喧嘩をする方が珍しいかもしれないけど)
素直に、感情のままに。
私は基本的に、傷ついても怒っても、笑って流す。
さすがに何度も同じことを言われたりされたりしたら注意するけど、注意しても止めないなら、その人からは離れる。
だから、喧嘩というより、そもそも素直に感情を吐き出すことがなかったのだ。
だけど、彼女とは喧嘩した。
彼女は相手の気持ちを察するのが苦手だった。
感情をコントロールするのが苦手だった。
わかっていたから、私はあえて自分の感情を表に出した。
だからこそ、なんでも言える仲になった。
なのに…なぜ…。

彼女のおかげで、感情を素直に出す練習が出来た。
彼女のおかげで、人を信じられるようになった。
(“みんな好き”と、“信じられる”はイコールで結びつかない)
初めて人にカミングアウトした時、その人には引かれてしまったけれど、彼女は普通に受け入れてくれた。
「引かないの?」と聞いたら「あなたが付き合っている相手が男だろうが女だろうが、どっちでも想像できるから」と彼女は笑った。
彼女が普通に受け入れてくれたからこそ、私は今、“この人なら”と思える人にはカミングアウト出来ている。
直接的な悩み相談は彼女にしたことがなかったけれど、そういう彼女の言葉や態度に、救われてきた。
彼女がいたから、私は変われた。
だからこそ、彼女の妙な変化に戸惑った。
マウントを取るような人じゃなかった。
…それとも、私の印象が変わっただけ?
私が今まで彼女に悩み相談をしたことがなかったからマウントを取られなかっただけで、もし、過去にも悩み相談をしていたら、そうされていたのだろうか?

よく、ライフステージが変わると、昔の友達と合わなくなる…なんて話を聞くけれど、本当にそうなのだと実感することが増えた。
なるほど…人はこうやってどんどん孤独感が増していくのか…と、焦燥にも似た何かを感じる。
父や母には友達がいなかった。
いないと思っていた。
だって、誰かとどこかに遊びに行く姿を見たことがなかったから。
でも最近、若かった頃の話を聞くと、どうも友達は多かったらしいということがわかった。
蛙の子は蛙、なのか…?
それとも、それが大人というものなのか。

推しがいればなあ…と思う。
趣味があれば、趣味仲間が出来ることもあるだろうに…。
そういう意味で、小説を書いていて、好意的なコメントをくれる人達とは、例えネット上だけの関係だったとしても、仲良くあり続けたいなと思ったりする。
いつもコメントをしてくれる人達には、本当に感謝感謝だ。
襲ってくる孤独感が、薄らぐ。
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