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第七章・二人の絆。11

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 私達は元の持ち主の実家であるブルーラン公爵家に向かった。こちらの方が信頼が出来るからだ。
 すぐに知らせで聞いて迎えを待っていた両親に医者に診てもらえるように頼んだ。
 両親は、かなり戸惑っていたが娘の私の焦りように渋々だが応えてくれる。すぐに主治医をしている医師を呼ぶと治療をしてしまった。
 幸い急所を外れていたのと、出血の割には傷が浅かったため命に別状はなかったらしい。ただ傷の影響で高熱が出てしまったらしい。元々身体の弱い人だったから。
 とりあえずゲストルームで寝かせるが熱で苦しそうだ。私は必死に看病する。すると数日後知らせを聞いたロンが駆け付けてくれた。
「ユリア様。陛下が怪我をしたって聞きまして大丈夫なんですか⁉﹂
「えぇ大丈夫よ……ロン。幸い傷が浅くて命に別状はないわ。ただ高熱を出してしまって寝込んだままなの」
「そ、そうですか……それなら良かった。高熱ならとりあえず心配ありませんね」
 陛下の無事を聞いて安堵するロンだった。一国の皇帝であるから、もし死んだら大変だ。そうではなくても国の皆に愛されているから人だから。
 ロンも相当心配しただろうに。
「ごめんなさい。私が庇って怪我をさせてしまったの。他の方にも申し訳ないわ」
 自分が行くと言ったからこんなことに。罪悪感と後悔をしてしまう。
 もっと体力と……ううん。私がしっかりしていたら、怪我は防げれたのに。
「ユリア様のせいではありませんよ。例えユリア様が言わなくても陛下は、アース帝国の安否を心配して自分から無茶してでも動いていたでしょう。この方は、そういう優しいお方ですから」
「そ、そうね……」
 確かに。陛下の性格なら無理やり理由をつけてでも誤解を解くために動いてくれただろう。そういう人なんだ……この人は。
 私は陛下の方を見る。するとロンが、
「ユリア様。心配しなくても陛下は強い方です。それよりも陛下は熱を出しやすい方でもあるのですが、そうすると面白い現象が起きるんですよ!」
 と教えてくれた。面白い現象? 何よ……それは? きょとんと首を傾げるとロンはクスッと笑う。
「それは、陛下が起きたら分かりますよ! とりあえず無事で安心しました。今回の件は私の方からユリア様のご両親とアース王国の国王に事情を話しておきます」
 ロンは、さらりとそう答えた。もう……ちゃんと教えてくれてもいいのに。
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