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第一話 茉莉花の香る夜(5)※
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「ビビ、足を開いて」
「うん」
囁くと、ボハイラが大きく膝を曲げ、局部を曝け出した。腿に絡んでいた下着を取り払い、茎を愛撫し、陰嚢を揉み、後孔に指をもぐり込ませる。丁寧な手の動きひとつひとつに、ボハイラは甘く息を吐いては兄を呼ぶ。
――私が淫らな真似をしなければ、ビビは。
美しく、純真な後宮の花として、誰にも嗤われることなく風に吹かれていることができただろうか、と、ラアドの胸が軋んだ。
ボハイラは後宮の外は王宮までしか知らない。その彼が、王宮から離れた痩せた土地に送られる。まるで流刑だとラアドは思う。弟は何の罪も犯していない。ただ、王の弟として生まれてしまったという理由でボハイラは罰されるのだと。
王妃と約束したのはラアド。誰も領地として欲しがらない土地を与える決定を下したのはラアド。
――後宮に留め続けることは、将来にわたってボハイラ様を守る手立てとはなりません。
自分の中から聞こえてくる声は防げても、王妃の凜とした眼差しから逃げることはできなかった。
「兄、上。はやくいれてぇ」
ボハイラのぐずぐずに溶けた声で我に返った。ボハイラの琥珀色の瞳は伏せられてよく見えない。目尻が濡れていた。
「ビビ」
無理しなくていいんだよ、という言葉は音にならなかった。挿入をねだる言葉を、ボハイラの口から聞くことはほぼなかった。弟が最後まで自分を気遣ってくれている。すまないとしか言えない自分が、情けなかった。
「い、れたくない……?」
「そんなことないよビビ。そんなことない。ビビ……」
柔らかくなった蕾に、雄があてがわれる。互いの琥珀を見つめながら、兄弟はひとつになった。
「んーっ、あにうえ、ん、ん……!」
「ビビ、あいしてる」
「あ。っは、ぅ……」
「ビビ」
膝を抱えた弟をラアドが揺さぶる。時折じっと兄を見つめては首を振るボハイラの結い紐が解け、長い髪が敷布一杯に広がる。あまりの美しさに胸が詰まった。
「あにうえぇ」
「ビビ、あいしてる」
違う、とラアドは首を振る。
これは愛じゃない。愛はもっと滋味深く、炎のように広がり、あたたかなもので包まれた気持ちになるものだろう。まるで神に抱かれたように。
ビビの泣き声が高まるにつれて腰の動きが激しくなる。
これは愛じゃない。――これほど激しい、雷のような情念を、自分はビビ以外に抱いたことがない。
「ビビ!」
逞しい腰を抱き直す。あたたかい襞が兄の欲望を慰撫する。
声はウード、優れた体躯と長い縮れ毛は雄羊、瞳は琥珀、魂はジャスミン。ラアドはいつも、ボハイラを己が美しいと信じるものに喩えてきた。それを失ってしまう。ボハイラが瞳を見せた時から、たったひとつだけ慈しんできた宝を、自らの手で放逐するのだ。
どうしても言えなかった叫びが、喉をついて出た。
「いくな。どこにも行くな、ビビ!」
ボハイラが息を荒げる兄を抱きしめた。両手両足を絡ませ、びくびくと震える。
汗がたまるボハイラのへそに、白濁が流れこんだ。殊更妖艶なジャスミンの香りを感じながら、王も逐情した。
「あ、い、し……て、る」
「あぁ」
「ずっと……」
黄桃色の唇が、兄にキスをした。
「いっしょう……」
俺はここにいる、と、ラアドの胸の中心を、ボハイラの指がなでた。
「うん」
囁くと、ボハイラが大きく膝を曲げ、局部を曝け出した。腿に絡んでいた下着を取り払い、茎を愛撫し、陰嚢を揉み、後孔に指をもぐり込ませる。丁寧な手の動きひとつひとつに、ボハイラは甘く息を吐いては兄を呼ぶ。
――私が淫らな真似をしなければ、ビビは。
美しく、純真な後宮の花として、誰にも嗤われることなく風に吹かれていることができただろうか、と、ラアドの胸が軋んだ。
ボハイラは後宮の外は王宮までしか知らない。その彼が、王宮から離れた痩せた土地に送られる。まるで流刑だとラアドは思う。弟は何の罪も犯していない。ただ、王の弟として生まれてしまったという理由でボハイラは罰されるのだと。
王妃と約束したのはラアド。誰も領地として欲しがらない土地を与える決定を下したのはラアド。
――後宮に留め続けることは、将来にわたってボハイラ様を守る手立てとはなりません。
自分の中から聞こえてくる声は防げても、王妃の凜とした眼差しから逃げることはできなかった。
「兄、上。はやくいれてぇ」
ボハイラのぐずぐずに溶けた声で我に返った。ボハイラの琥珀色の瞳は伏せられてよく見えない。目尻が濡れていた。
「ビビ」
無理しなくていいんだよ、という言葉は音にならなかった。挿入をねだる言葉を、ボハイラの口から聞くことはほぼなかった。弟が最後まで自分を気遣ってくれている。すまないとしか言えない自分が、情けなかった。
「い、れたくない……?」
「そんなことないよビビ。そんなことない。ビビ……」
柔らかくなった蕾に、雄があてがわれる。互いの琥珀を見つめながら、兄弟はひとつになった。
「んーっ、あにうえ、ん、ん……!」
「ビビ、あいしてる」
「あ。っは、ぅ……」
「ビビ」
膝を抱えた弟をラアドが揺さぶる。時折じっと兄を見つめては首を振るボハイラの結い紐が解け、長い髪が敷布一杯に広がる。あまりの美しさに胸が詰まった。
「あにうえぇ」
「ビビ、あいしてる」
違う、とラアドは首を振る。
これは愛じゃない。愛はもっと滋味深く、炎のように広がり、あたたかなもので包まれた気持ちになるものだろう。まるで神に抱かれたように。
ビビの泣き声が高まるにつれて腰の動きが激しくなる。
これは愛じゃない。――これほど激しい、雷のような情念を、自分はビビ以外に抱いたことがない。
「ビビ!」
逞しい腰を抱き直す。あたたかい襞が兄の欲望を慰撫する。
声はウード、優れた体躯と長い縮れ毛は雄羊、瞳は琥珀、魂はジャスミン。ラアドはいつも、ボハイラを己が美しいと信じるものに喩えてきた。それを失ってしまう。ボハイラが瞳を見せた時から、たったひとつだけ慈しんできた宝を、自らの手で放逐するのだ。
どうしても言えなかった叫びが、喉をついて出た。
「いくな。どこにも行くな、ビビ!」
ボハイラが息を荒げる兄を抱きしめた。両手両足を絡ませ、びくびくと震える。
汗がたまるボハイラのへそに、白濁が流れこんだ。殊更妖艶なジャスミンの香りを感じながら、王も逐情した。
「あ、い、し……て、る」
「あぁ」
「ずっと……」
黄桃色の唇が、兄にキスをした。
「いっしょう……」
俺はここにいる、と、ラアドの胸の中心を、ボハイラの指がなでた。
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