王の愛は血より濃し 吸血鬼のしもべ第2部

時生

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第二章 月ニ鳴ク獣

第二十三話 手がかりを求めて(2)※

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 深夜に来た客は、外套を脱ぐや否や「お腹ぺっこぺこなんだよね」と言い放った。
 外套を脱いだ姿は細身で、手足がひょろりと長い。若いな、と月鳴は驚く。月鳴の客は年配の者が多い。
 客は、少年から青年へのまさに過渡期といった様子だった。背は高いが、薄い体はいかにも少年らしかった。椅子に座ってぷらぷらと足を揺らしたり、頬杖をついて部屋を見回したりしている客に、違和感がずんずんと強くなる。

この部屋に上がったということは、金を払ったということだ。だが、男娼を前に「お腹減った」なんて、飯屋と間違えているんじゃないかとすら疑いたくなる。

「ご夕食を用意いたしますか?」
「それって普通のごはんのこと?」
「え、えぇ、普通のご飯、ですが……」
「いらなーい。お茶もうれしいけど早く寝てくれた方がいいかな。立ったままとか座ったまま嫌なんだよねぇ、見下ろされてるみたいでさ」

 茶を淹れる手を止め、首を傾げながら寝台に行くと、すぐに肩を押され少年が馬乗りになる。大きな瞳が悪戯っぽく微笑むので、することはするようだなと安心したが、いきなり下着をはぎ取られそうになって思わず膝を閉じてしまった。

「え! 食べさせてくれないの!?」
「ご飯をですか……?」
「んー!? ねえ、ぼく御覧のとおり夢魔むまなんだけど」

 意味ありげに、少年が耳の先を指でいじった。少年は右側の一房だけを顔の横に残して髪を髷にしている。その奥にある耳の先が、尖っていた。

「あ」

 空腹の夢魔、そこまで考えてようやく月鳴は合点した。夢魔は淫魔とも呼ばれ、精気がなければ生きていけないという。つまり、彼の言う「ごはん」は「精液」だ。

「すぐに気づかず、申し訳ございません」

 気を取り直し、月鳴は下着を自らほどいた。少し体を横向きにし、片膝を立てて竿をしごく。むくむくと大きくなるそれに、青年の喉がごくりと上下した。大きな、猫に似た目が輝きだす。

「お口でお食べになりますか。それとも、お腹に?」

 仕切り直しとばかりに、月鳴は吐息を混じらせて尋ねる。「大きい♡」と喉を鳴らした少年は寝台に手をついて尻を揺らす。

「お口でと思ってたけど、後でお腹にももらっちゃおうかな~♡♡ でもまずはお口で!」

 そのまま体を倒して仰向けになると、青年が膝を掴んだ。さらに割り開かれる。さらりと、黒髪が内ももをなでるのを感じた。
 ちゅぷちゅぷと先をしゃぶられ、すぐに裏側を根元から先端までなぞり上げられる。

「ん……んぅ……」
「おいひいのはやくらひて」
「あ、しゃべらないで……」
「があんひひゃらめらよ」
「わかって、ん……あぁ、ん」
「おひるれてひた」

 先走りが滲んだらしい。うれしそうな声が聞こえたと思うと、じゅうぅっと強く吸われた。舌が甘い力で離れた途端に、ぐっと猛りが増す。ちゅ、ちゅと先に吸い付かれながら、しなやかな手にしごかれ、たまに袋を指で押したり弾かれたりする。

 ふうふうと青年の息が荒くなっている。ただ食われるよりは興奮してくれた方がまだましと、月鳴は下腹の辺りをひょこひょこと上下している顔を見る。

見られていることに気づいたのか、少し目を上げた大きな瞳がぱちぱちっと瞬きをした。優しく頭をなでると、頬が赤くなり目がとろんと細くなる。かわいい。若い淫魔はこんなにかわいらしいのかと驚きが生まれる。

「いま、ん、出るからっ」
「ん……ん、らひてぇ」

 いまだ中性的な青年のかすれ声に後押しされて、幹がぐうっと膨らんだ。膝をさらに開いて右手でこすりあげ、極める瞬間に喉を突かない程度に腰を突き出した。
 ぴゅるぴゅると先から出したものを、少年が喉を鳴らして飲んだ。口を拭った少年はそのまま月鳴に抱きついた。

「うふ、おいしかった。ねぇ、あのさ……あ、名前なんていうの? さっき下で聞いたけど忘れちゃったよ」

 言いながら青年はもじもじと体を動かす。月鳴の胸がはだけ、先ほど緩めた帯の中に手を入れられた。柔らかい指がへそをなでる。
 悪びれない物言いに月鳴は微笑んで答えた。

「月鳴」
「そうだった。月鳴ちゃんさぁ、吸血鬼だよね? 牙なくない? どうして?」
「よく吸血鬼だとお分かりになりましたね」
「味で分かる」

 付き合いの深い客にはされ慣れている質問だ。青年の唇をなでながら、月鳴は言った。

「もともと生えぬのか、それともどこかで牙が折れてしまったのでしょう。実は以前の記憶が曖昧で、よく覚えていません。それでもこうして生きています。かわいがってくださる方々のおかげで」
「月鳴ちゃん、年はいっちゃってるけど、雰囲気あるもんねぇ」

 年はいっちゃってるは余計だ、と月鳴は笑いながら胸中でつぶやいた。幻市げんしの娼妓は年齢層が広い。よその歓楽街では若さに勝る価値なしというところも多いそうだが、幻市は老いも若きも揃っている。青年期の中ほどにいる月鳴は、文句なしの若手だった。
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