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神の授け

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 あれから何年経っただろう。
 坊やは中学生くらいになっただろうか。外にひとりで遊びに行くことも増え、少々寂しく感じることが多くなってきた。これも思春期、仕方がない。
 ひとりで遊びに出かけることも増えたが、夜にはきちんと帰ってきた。
一緒にご飯を食べ、魔法の練習をし、他愛のない話をして、眠った。

 ある日の夜中、私は胸騒ぎがして目を覚ました。坊やの気配が、そこにはなかったのだ。
 そんなに広くはない家の、隅から隅まで探したが、坊やを見つけることはできなかった。

「坊や……! 坊や……! どこだい? どこに行ったんだい?」

 返ってくるのは静寂。どんなに大きな喧嘩をしても、家を出たことは一度もなかった。その坊やが、私に何も告げずにどこへ行ったというのだろうか。
 箒があったなら、空から探せるのだが、あいにく愛用の箒は坊やに変えてしまった。今の私の移動手段は、徒歩しかない。

 いないとわかっていてもじっとしていられず、家の中を歩き回った。あるわけがないけれど、玄関を開けていつも箒を立てかけていた場所を確認すると……。

 ──そこには箒が立てかけてあった。

「ああ、神よ。私に箒を授けてくださったのか。感謝しきれぬ。ありがとう」

 私は箒にまたがり、空へと飛んだ。
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