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箒が捕らえた最後のひらがな
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「……これは……!」
私の予想は、当たってしまった。
私のような大人が使えば、もっと強く、壊れないような魔法をかけることができたはずだ。
これは、坊やがかけた、か弱い魔法。中学生くらいの子供がかけた、か弱くて優しい魔法だ。
みるみるうちに、箒からは緑と紫の血液が溢れてきた。
「ああっ……! 坊や……! 坊やなんだろう?」
坊やは、自分がこの世に生み出されたのと引き換えに、私が空を飛ぶのを辞めたことに気付いていたのだ。私にまた空を飛んでほしくて、自分に『人間をモノに変える魔法』をかけたのだ。
「なんてことをしてくれたんだい……! お前さえいてくれたら、もう空なんか飛べなくてもよかったんだよ……!」
細い箒をギュッと抱きしめると、まるで涙を流すように緑と紫の温かい血液が溢れた。
モノに変わってしまった坊やは、あんなに欲しがっていた声も、もう出すことができない。
今、悲しんでいるのだろうか。喜んでいるのだろうか。その涙は、何を伝えているのだろうか。
時間を忘れて、ただひたすらに泣いた。私も、坊やも、泣いた。
涙が枯れるまで泣き続けるという表現を人間はよく使うが、それがこういうことなのだと気付いた。身体の水分が目からどんどん奪われていく。
260年生きてきた。長すぎた魔女としての人生の幕を、今、最愛の息子と一緒に閉じようとしている。
身体がミシミシと、枯れ木のような音を立てて固くなっていく。
魔法が解けた箒の坊やも、固く乾く。
私の声も枯れ、出なくなったが、もう言葉などいらなかった。
触れ合うことで我が子だと確信し、坊やも触れているのが私だとわかって、抱き合い、涙を流し、枯れてゆく2人は、まるで二本の箒が複雑に絡まったように解けなくなり、床に散らばったゴミを知らないうちに穿き集めていた。
二本の箒が穂先で捕らえたゴミの中に、何か文字を書いて破ったような紙屑がいくつも存在した。
そこには、上手なひらがなで、『おかあさん、ありがとう』と書いてあったという。
私の予想は、当たってしまった。
私のような大人が使えば、もっと強く、壊れないような魔法をかけることができたはずだ。
これは、坊やがかけた、か弱い魔法。中学生くらいの子供がかけた、か弱くて優しい魔法だ。
みるみるうちに、箒からは緑と紫の血液が溢れてきた。
「ああっ……! 坊や……! 坊やなんだろう?」
坊やは、自分がこの世に生み出されたのと引き換えに、私が空を飛ぶのを辞めたことに気付いていたのだ。私にまた空を飛んでほしくて、自分に『人間をモノに変える魔法』をかけたのだ。
「なんてことをしてくれたんだい……! お前さえいてくれたら、もう空なんか飛べなくてもよかったんだよ……!」
細い箒をギュッと抱きしめると、まるで涙を流すように緑と紫の温かい血液が溢れた。
モノに変わってしまった坊やは、あんなに欲しがっていた声も、もう出すことができない。
今、悲しんでいるのだろうか。喜んでいるのだろうか。その涙は、何を伝えているのだろうか。
時間を忘れて、ただひたすらに泣いた。私も、坊やも、泣いた。
涙が枯れるまで泣き続けるという表現を人間はよく使うが、それがこういうことなのだと気付いた。身体の水分が目からどんどん奪われていく。
260年生きてきた。長すぎた魔女としての人生の幕を、今、最愛の息子と一緒に閉じようとしている。
身体がミシミシと、枯れ木のような音を立てて固くなっていく。
魔法が解けた箒の坊やも、固く乾く。
私の声も枯れ、出なくなったが、もう言葉などいらなかった。
触れ合うことで我が子だと確信し、坊やも触れているのが私だとわかって、抱き合い、涙を流し、枯れてゆく2人は、まるで二本の箒が複雑に絡まったように解けなくなり、床に散らばったゴミを知らないうちに穿き集めていた。
二本の箒が穂先で捕らえたゴミの中に、何か文字を書いて破ったような紙屑がいくつも存在した。
そこには、上手なひらがなで、『おかあさん、ありがとう』と書いてあったという。
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