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命ある限り…渉太の選択
命ある限り…渉太の選択③
確かに渉太のことになると建前などを忘れて血相を変えて怒り出す律仁さんを見てきているので否定はできない。
渉太は苦笑を浮かべるしかなかった。
そんな那月と星杏さんが話している背後で、ふと黒い人影が目に入る。距離で言ったら数メートル。向かいの歩道から車をかい潜り、黒づくめの男が那月の背後に迫ってきているのが見えてしまった。
明らかに様子がおかしい。
フードを被っていて男の表情は分からないが、那月のことを捕えているのは明確だった。
那月と男の距離がほんの数メートルの所で男が銀色に光る刃物のようなものを上着のポケットから出してきた時、渉太は咄嗟に那月の身体を押し除けていた。
「那月くん、あぶないっ」
「おいっ‼」
よろけて星杏さんにぶつかった那月の代わりに渉太が突進してきた黒ずくめの男と衝突した。
途端に脇腹に異物感を感じ、視線を下ろすと男の持っていたナイフが自分の脇腹に突き刺さっていた。同時に星杏さんが両手を口元に当てて悲鳴をあげる。
目の前の男が渉太の姿を見留め、戸惑った表情を見せた後で、絶望とした目をしながら逃げ去っていった。
「おい、あんた大丈夫かよ。きゅ、救急車。星杏、何突っ立ってんだよ。早く救急車呼べ」
じわりと脈打つように患部が熱くなる。次第に立っていられなくなり、直後に駆け寄ってきた那月に支えられながら地面に座り込んだ。
通りがかった人達が近寄ってくる。
遠くの方で数名の大人が黒い男を捕えて羽交い絞めにし、怒号も聞こえてきた。
渉太が庇っていなかったらきっと那月が刺されていたに違いない。
那月は沢山の人に愛されている存在だから助けることができて良かった。
旭君だって那月にこんな所で終わってほしくないと思っているだろう。
遠のいていく意識と共に自分の死期が僅かながらに頭によぎる。
もう少し好きな人と一緒にいたかったけど……。
せめて最後に律仁さんに会いたかったけど……。
那月が声を荒らげて何か声を掛けて来ていたが、渉太の意識は遠のいていき、眠気のようなものを感じて瞼を落とすと那月の声も周りのけたたましい音も完全に聞こえなくなっていた。
渉太は苦笑を浮かべるしかなかった。
そんな那月と星杏さんが話している背後で、ふと黒い人影が目に入る。距離で言ったら数メートル。向かいの歩道から車をかい潜り、黒づくめの男が那月の背後に迫ってきているのが見えてしまった。
明らかに様子がおかしい。
フードを被っていて男の表情は分からないが、那月のことを捕えているのは明確だった。
那月と男の距離がほんの数メートルの所で男が銀色に光る刃物のようなものを上着のポケットから出してきた時、渉太は咄嗟に那月の身体を押し除けていた。
「那月くん、あぶないっ」
「おいっ‼」
よろけて星杏さんにぶつかった那月の代わりに渉太が突進してきた黒ずくめの男と衝突した。
途端に脇腹に異物感を感じ、視線を下ろすと男の持っていたナイフが自分の脇腹に突き刺さっていた。同時に星杏さんが両手を口元に当てて悲鳴をあげる。
目の前の男が渉太の姿を見留め、戸惑った表情を見せた後で、絶望とした目をしながら逃げ去っていった。
「おい、あんた大丈夫かよ。きゅ、救急車。星杏、何突っ立ってんだよ。早く救急車呼べ」
じわりと脈打つように患部が熱くなる。次第に立っていられなくなり、直後に駆け寄ってきた那月に支えられながら地面に座り込んだ。
通りがかった人達が近寄ってくる。
遠くの方で数名の大人が黒い男を捕えて羽交い絞めにし、怒号も聞こえてきた。
渉太が庇っていなかったらきっと那月が刺されていたに違いない。
那月は沢山の人に愛されている存在だから助けることができて良かった。
旭君だって那月にこんな所で終わってほしくないと思っているだろう。
遠のいていく意識と共に自分の死期が僅かながらに頭によぎる。
もう少し好きな人と一緒にいたかったけど……。
せめて最後に律仁さんに会いたかったけど……。
那月が声を荒らげて何か声を掛けて来ていたが、渉太の意識は遠のいていき、眠気のようなものを感じて瞼を落とすと那月の声も周りのけたたましい音も完全に聞こえなくなっていた。
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