最愛はすぐ側に

なめめ

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命ある限り…渉太の選択

命ある限り…渉太の選択④

都内某所の大型病院。病院特有の消毒液の匂い。
左手の甲から繋がれた点滴チューブは抗生剤だと看護師さんが言っていた。
まさか凡人である大学生の自分が二十二年間生きていて入院する機会があるなんて思ってもみなかったが、こうして生きていられることは奇跡というべきであろうか。

渉太は個室である病室のベッドの背もたれを起こして、日が沈み始めた窓の外をぼんやり眺めていた。

「渉太、貴方の着替え置いておくわね」
「うん、ありがとう母さん」

 渉太から見て右手にある、コート掛けの戸棚から着替えを持ってきてもらっていた母親に声を掛けられて、頷いた。

今年の年末に帰省して以来会っていなく、お盆休みの時に帰ろうと思っていたところをこんな形で会いに来てもらうことになるとは思ってもいなく……。

「それにしても良かったわ……。貴方がこうして目を覚ましてくれて。何かあったらすぐにコール鳴らすのよ?」
「うん」

 母親がわざわざ地方から心配してお見舞いに来てくれたのは無理もなく、那月との別れ際で那月を庇い、何者かに腹部を刺され、病院に運ばれて集中治療室で治療を終えた後も渉太は二、三日目を覚まさなかったらしい。

幸い刺された場所が左下腹部でナイフは臓器に到達せず即死には至らなかったらしいが、外部の傷が深いため大事を取って数週間入院することになった。

「母さんも無理させてごめんね。わざわざこんなところまで毎日……。俺がちゃんと注意してなかったから……」

「そんなことないわよ。息子に何かあったら駆けつけるのは当然のことだもの。貴方、優しいから……。でも、今回のことはお母さんも怒ります。いくら友達を助けたかったからだとしても無茶はしないで。自分の命を大事にしなさい」
「はい……。ごめんなさい」

 頭を撫でられると、険しい表情で渉太を叱咤してくる。
自分のことを思う故の母親の怒りなので渉太は、ただただ頷いて謝るしかなかった。

あの状況から今こうして生きて居られているのは奇跡のようで、自分の身を顧みなかった行動には反省すべきことではあるが、自然と後悔はない。
 むしろ何もできずに那月が刺されるのを見ていた方が今の何倍も後悔したと思う。

「しょーた?」

 ふと病室の入り口付近からコンコンと音がした直後に扉が開かれると、聞き慣れた声が名前を呼んだ。

「あら、律仁さん」

部屋に入ってきた人物は背が高く、深く被ったバケットハットにサングラスとマスクをしている。扉が閉まると同時にそれらを取ると、母親に向かって会釈をしていた。
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