最愛はすぐ側に

なめめ

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突然の別れ(律仁side)

突然の別れ④

「ふっ。唯の留守だったらよかったな。早坂君はもうその家にはいない。退去したって話だぞ。お前は退院する日も教えて貰えなかったってことは見限られたってことなんじゃないのか?」

 吉澤に鼻で笑われたことによって、律仁の逆鱗に触れる。

 ああ、鈴奈の時と一緒だ。また此奴か。

 此処までアイドル律を続けていけたことは、間違いなく吉澤さんのサポートがあったからだと感謝してる。

未熟な自分を親も同然、兄弟同然のように扱ってくれたのは彼だけだ。だから過去のことは、自分が未熟だったと反省して目を瞑って水に流してきたつもりだった。

ただ、今回は自分もモノの良し悪しくらいは判断できる立派な大人だ。何を大切にできるかくらい判断できる。

「またあんたかよ」

律仁は車の扉から手を離すと、吉澤の襟ぐちを左手で掴む。シャツの襟元がしわくちゃになろうが関係ない。
目の前の男が憎くて仕方がなかった。

 憎たらしいくらい真っすぐと見据えてくる、吉澤の瞳に負けじと律仁も睨みつける。

「あんたが渉太に何か吹っ掛けたんだろ」
「だからなんだ。決めたのは早坂君自身だ。恋人ならそれを素直に受け入れてやるのも優しさなんじゃないのか」
「ふざけんな。俺のプライベートにずかずかと。そうやってあんたは俺の幸せを邪魔する気かよ」
「この業界下りて、早坂君と一緒になるのが幸せだなんてお前はホント私情が絡むと頭お花畑だな、いい加減学習したらどうだ?歌うことしか出来ないお前が辞めて何ができる?」
「ふざけんな。歌以外にだって俺には何でもできる、こんな事務所の力を借りなくたってっ」

 掴んだ左手により一層、力が込められると右手の拳を振り上げていた。
殴りたいくらいに腸が煮えくり返っている。

「喧嘩でもする気か?俺に勝てるとでも思ってんのか?」

 動揺と怒りが織り交ざった気持ちの揺らぎに連動して拳が震える。表情を歪ませる律仁に対して、吉澤の表情は平然としたままだった。それどころか、シャツを掴んだ手首を、彼の右手が掴んで僅かに捻ってくる。

 微かな痛みにこれ以上吉澤とやり合うのは身の危険を案じた律仁は大人しく拳を振り下ろした。

 悔しいけど若い頃、不良のヤンキーだった聞いている男に喧嘩で勝てる訳もなく。四十過ぎてもその衰えた様子がないのが吉澤だ。
マネージャーとしては安心できる反面、真意を突いてくるような冷たい物言いは、律仁の心に憂いを与えてくる。

律仁は掴んでいた手を乱暴に話すと、無言で車の扉を開けて中へと乗り込んだ。此処は住宅街で人目につきやすいのであまり大声で争いごとを起こすわけにはいかなかった。

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