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助けた代償
助けた代償⑤
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かと思えば、鈴奈はその場から立ち上がると両手を後ろで組んで遠くの方を眺め始めては寂しそうに「私の歌声なんてきっとこの業界からしたら腐るほどいるだろうし……」と独り言ちた。
「それでも沢山の人にあんたの歌を聞いてもらって、自分の歌で家族の助けになりたいんだろ」
ボディガード初日の日、駅までの帰り道で鈴奈は自身のことについて語ってくれた。彼女は今年の春に高校を中退してまで地元の福岡から出てきたという。
高校も行かずにラーメン屋でアルバイトをしながら、自分の歌で家族を養うためにストリートミュージシャンをしている。
鈴奈の家庭は母子家庭で小学生と律仁の一つ下の弟が二人。母親は父親が鈴奈が中学校一年生のときに病で亡くなり、母親もその後に働きずめで大病を患ってしまったことからあまり裕福ではない暮らしをしているのだと聞いた。
昔から好きだった歌。そんな歌うことが好きだった彼女に父親が生前にプレゼントしてくれた白いアコースティクギターが命よりも大切だと言っていた理由をこの時に知った。
「だけど上手くいかないことの方が多いのよ。どんなに楽しくても、強気でいてもショック受けることもあるし、私誤解されやすい性格みたいでさトラブルも多いから」
確かに鈴奈は初対面の律仁に当たりが強かったし、第一印象としては最悪だ。
けれど少し言葉足らずなだけで、ちゃんと彼女の心には温かさが宿っている。
それを彼女の歌声が証明してくれている。
「あんたは充分巧いんだし、自信持てよ。自分が自分の歌を信じないでどうすんだよ。まぁ性格はもっと丸くなったほうがいいと思うけど」
鈴奈を元気でづけるために放った言葉だったが自分で発言していて、歌から逃げている律仁には耳が痛くなる言葉だった。最後に余計な一言を口走ってしまたかとドキリとしたが、彼女は「余計なひとこと」と拗ねた様子を見せていたが然程怒りには触れていなかったのか、頬を緩めて振り返っては微笑んできた。
「でもなんだか不思議、律仁くんが私の歌聞いてると安心するし。なんか元気づけられる」
大したことを言っている訳でもないが、自分の発言は誰かを元気づける力があるのは薄々気づいてはいる。廉介にも「律仁の言葉ってなんか説得力あるっていうか、魔法でもかけてるんじゃないかってくらい元気もらえるよな」と顔に似合わずメルヘンチックなことを言っていたのを思い出した。
「人を励ましてるくらいなら自分のこともしっかりしてほしいくらいだけどな。というかレッスンから逃げてるわりにはえらい一丁前なこと言ってるじゃないか」
鈴奈の目線が律仁じゃなくその先の方に向けたと同時に頭上からチョップが降ってきて背筋が凍る。「いてぇ」と呟きながら振り返るとマネージャーである吉澤が腕を組んで立っていた。
寮から出掛ける時、細心の注意を払い吉澤が迎えに来る時間を避けて早朝に出てきた。吉澤の連絡も着信拒否までしてレッスンのことを一切考えないようにしてきたのに……。
「それでも沢山の人にあんたの歌を聞いてもらって、自分の歌で家族の助けになりたいんだろ」
ボディガード初日の日、駅までの帰り道で鈴奈は自身のことについて語ってくれた。彼女は今年の春に高校を中退してまで地元の福岡から出てきたという。
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けれど少し言葉足らずなだけで、ちゃんと彼女の心には温かさが宿っている。
それを彼女の歌声が証明してくれている。
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「でもなんだか不思議、律仁くんが私の歌聞いてると安心するし。なんか元気づけられる」
大したことを言っている訳でもないが、自分の発言は誰かを元気づける力があるのは薄々気づいてはいる。廉介にも「律仁の言葉ってなんか説得力あるっていうか、魔法でもかけてるんじゃないかってくらい元気もらえるよな」と顔に似合わずメルヘンチックなことを言っていたのを思い出した。
「人を励ましてるくらいなら自分のこともしっかりしてほしいくらいだけどな。というかレッスンから逃げてるわりにはえらい一丁前なこと言ってるじゃないか」
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