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交渉決裂
交渉決裂③
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義務教育を共に過ごした蓮介に別れを告げて、事務所で待ち合わせをしていた鈴奈と落ち合う。見慣れ会社の外装は鏡のようなガラスで覆われいる。ちょっとお洒落でデザイナーズマンションにありそうな建物だ。
業界では創設して日が浅いのでどこぞの大手事務所のような建物の老朽感はない。
合同作の曲のデモテープはあるものの、生歌を聞いて貰って判断してもらいたかった二人はギターを背負い、律仁と鈴奈はお互いに顔を合わせ頷くと正面玄関からロビーに向かった。向かって正面にある「OKASHIMA」の文字の下に座る受付嬢に挨拶しては、内線で内部に繋いでもらい、吉澤がいることを確認する。
緊張感を漂わせながらエレベーターに乗り上げて3階の事務所へと上昇していく。
全て律仁の未来はこの一時にかかっていると言っても過言では無い。
「鈴奈、緊張してる?」
「律仁じゃないんだから、あたしは至って冷静よ……。それに結局、事務所の方針次第だからあまり期待はしてないけど……」
腕を組み、落ち着いた様子を見せていても何度も深呼吸をしていることから鈴奈も多少なりとも緊張しているようだった。
目的の階数へと到着して足を踏みおろしては
廊下奥のガラス扉を押し開ける。
中には無数のデスクがあり、そこには見覚えのある芸能人専属のマネージャーが居た。
部屋の一番奥にいる吉澤を見つけるなり、律仁は大きく手を振って呼びかけると彼はデスクから顔をあげて目を合わせてきた。
「律仁、鈴奈。なんだ?」
「吉澤さん、頼みがあるんだけど。俺たちユニット組もうと思ってるんだ」
お互いに目で合図をして、発起人である律仁が吉澤に告げる。すると吉澤は瞠目した後で眉間に皺を寄せ、深い溜息を吐いた。
「急なんだ。それは鈴奈のマネージャーには通したのか?」
もちろん、二人だけで進めていた話だっただけに事務所の誰にも打ち明けてもいない。
事前に話したところで渋い顔をされるのが分かっていたし、現に吉澤の表情も険しいものだった。
「まだ、これから話す。来週の路上ライブから本格的に活動しようと思う。だから個人じゃなくて二人で活動すること許可もらいに来た……」
「貰いに来たってな、こういうのは突発的にするもんじゃない。事前に話し合いをしてだな……」
「だから、そういうのが面倒臭いから来たんだけど。いいから曲作ったから聴いてから判断してよ」
うだうだと説教をする吉澤が鬱陶しくて律仁は鞄からデモテープを取り出して彼に突きつけた。いいか、悪いかで判断してくれない大人にヤキモキした感情を燃やしながらも、吉澤がテープを受け取ったことに安堵する。
「鈴奈は……。どうなんだ?」
そんな感情的になる律仁の傍ら、吉澤は至って冷静に隣に佇む鈴奈へと問うた。
「私も出来れば律仁と組みたいと思ってます。彼は私の歌声と相性は悪くないですし、作曲のセンスもあるので……。いいか悪いかは別として、ひとまず私たちの歌を聞いてほしいです。お願いします」
自分が先導するつもりで前に出て吉澤に交渉をするつもりが、隣で礼儀正しく頭を下げる鈴奈に恥ずかしくなった。しまいには、「あんたも」と言われて後頭部を押されては強制的にお辞儀をさせられる。
「分かった。商談室開けてくる。三郷さんも呼んでくるから、二階で待ってろ」
吉澤が椅子から立ち上がると、早速と事務所から出て行ってしまった。
吉澤の後を追うように商談室へ向かう途中で
鈴奈に頭を軽く叩かれ「あんた人に物を頼む時はまず頭下げるって習わなかった?」と小声で詰られては不甲斐ない気持ちになった。
業界では創設して日が浅いのでどこぞの大手事務所のような建物の老朽感はない。
合同作の曲のデモテープはあるものの、生歌を聞いて貰って判断してもらいたかった二人はギターを背負い、律仁と鈴奈はお互いに顔を合わせ頷くと正面玄関からロビーに向かった。向かって正面にある「OKASHIMA」の文字の下に座る受付嬢に挨拶しては、内線で内部に繋いでもらい、吉澤がいることを確認する。
緊張感を漂わせながらエレベーターに乗り上げて3階の事務所へと上昇していく。
全て律仁の未来はこの一時にかかっていると言っても過言では無い。
「鈴奈、緊張してる?」
「律仁じゃないんだから、あたしは至って冷静よ……。それに結局、事務所の方針次第だからあまり期待はしてないけど……」
腕を組み、落ち着いた様子を見せていても何度も深呼吸をしていることから鈴奈も多少なりとも緊張しているようだった。
目的の階数へと到着して足を踏みおろしては
廊下奥のガラス扉を押し開ける。
中には無数のデスクがあり、そこには見覚えのある芸能人専属のマネージャーが居た。
部屋の一番奥にいる吉澤を見つけるなり、律仁は大きく手を振って呼びかけると彼はデスクから顔をあげて目を合わせてきた。
「律仁、鈴奈。なんだ?」
「吉澤さん、頼みがあるんだけど。俺たちユニット組もうと思ってるんだ」
お互いに目で合図をして、発起人である律仁が吉澤に告げる。すると吉澤は瞠目した後で眉間に皺を寄せ、深い溜息を吐いた。
「急なんだ。それは鈴奈のマネージャーには通したのか?」
もちろん、二人だけで進めていた話だっただけに事務所の誰にも打ち明けてもいない。
事前に話したところで渋い顔をされるのが分かっていたし、現に吉澤の表情も険しいものだった。
「まだ、これから話す。来週の路上ライブから本格的に活動しようと思う。だから個人じゃなくて二人で活動すること許可もらいに来た……」
「貰いに来たってな、こういうのは突発的にするもんじゃない。事前に話し合いをしてだな……」
「だから、そういうのが面倒臭いから来たんだけど。いいから曲作ったから聴いてから判断してよ」
うだうだと説教をする吉澤が鬱陶しくて律仁は鞄からデモテープを取り出して彼に突きつけた。いいか、悪いかで判断してくれない大人にヤキモキした感情を燃やしながらも、吉澤がテープを受け取ったことに安堵する。
「鈴奈は……。どうなんだ?」
そんな感情的になる律仁の傍ら、吉澤は至って冷静に隣に佇む鈴奈へと問うた。
「私も出来れば律仁と組みたいと思ってます。彼は私の歌声と相性は悪くないですし、作曲のセンスもあるので……。いいか悪いかは別として、ひとまず私たちの歌を聞いてほしいです。お願いします」
自分が先導するつもりで前に出て吉澤に交渉をするつもりが、隣で礼儀正しく頭を下げる鈴奈に恥ずかしくなった。しまいには、「あんたも」と言われて後頭部を押されては強制的にお辞儀をさせられる。
「分かった。商談室開けてくる。三郷さんも呼んでくるから、二階で待ってろ」
吉澤が椅子から立ち上がると、早速と事務所から出て行ってしまった。
吉澤の後を追うように商談室へ向かう途中で
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