君のために僕は歌う

なめめ

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シークレットライブ

シークレットライブ③

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「顔で売り出してもらえるだけでもいいじゃない。それでいて歌も上手かったら上出来だし、アイドルだってそう簡単にできるものじゃないのよ」

「それは分かってるけど·····。鈴奈だってさっきは俺との歌認めて欲しかったって言ってただろ?このまま話が流れて俺が他のやつと活動始めてしまってもいいのかよ。アイドルって女にキャーキャー言われんだろ?鈴奈はそんな俺のことどう思うんだよ……」

鈴奈の細い指を払うと不貞腐れたようにそっぽを向いて呟く。本来であれば全て順調にいけば鈴奈に告白して恰好がついたのに……。この際、恰好が悪くても鈴奈の本心は知りたかった。「嫌よ、あたしの律仁じゃなきゃ」だなんて鈴奈が瞳を潤ませて縋ってくるのを期待して鼻の下が伸びてしまうのを必死に歯を食いしばって堪える。

「どう思うって……。あんた馬鹿なの、アイドルはキャーキャー言われてなんぼじゃない」

そんな浮かれた想像をしていた律仁の心を見透かしてなのか、突如鈴奈の指で額を弾かれて、一瞬だけ頭部が後ろに傾いた。やっぱり鈴奈を前にしていい雰囲気に持ってこようとするのは一万年早いらしい。

「馬鹿って、相変わらず口悪っ。これでも本気で凹んでるんだから年上なら慰めるくらいしろよ……」
「ふーん」

背けた顔を覗き込むように鈴奈がじっと眺めてくる。
その視線がやけに緊張して、鼻毛が出てるのではないかと良からぬ心配をしてしまう。

「よしよし、律仁は顔なんかじゃない歌の方が上手いから元気だして?」

律仁の言葉通りに鈴奈が頭を撫でて慰めてくる。
いつもはおちょくって犬も食わないような口喧嘩を始まると言うのに、
自分が子供のように扱われて恥ずかしいのに、心地よく感じてしまっている自分がいる。

律仁は鈴奈に頭を撫でられて羞恥心で我慢できずに、崩れるように屈むと両手で顔を覆った。

「鈴奈、いざ慰められたら恥ずかしい……からやめろよ……。変な気起こしそう……」
「ちょ、変な気ってあんたが言ったんじゃない。道端で変なこと言わないでよ」
「変なことってこれでも俺だって男の子なんだけど……。好きな人に頭撫でられたらそりゃ……」

膝の上に腕を置き、顎を乗せる。
鈴奈に触れたい、抱き締めたい。愛おしい。甘えたい。
理性と煩悩の狭間でどうにかなってしまいそうになる。

ふと鈴奈も律仁と同じ目線まで屈んでくると、少しだけ身を乗り出して先ほど指ではじかれた額にキスを落とされた。

「これでどうにかおさめてよ。それに……あんたがキャーキャー言われるのはあんまりいい気はしないかも……」

口を尖らせながらも頬を赤らめて呟く彼女に胸を強く締め付けられる。
事務所とのユニットの話はうまくいかなかったけど、鈴奈の本音がみれたところは大きな進歩だった。


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