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気持ちを揺るがす
気持ちを揺るがす⑥
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律仁のことなど目もくれずに立ち上がった鈴奈の前まで来ると、胡散臭そうな笑みを浮かべて話し掛けてくる。二人ともにならともかく、律仁のことなど気に留めない辺りに怪しさが増す。漠然と嫌な胸騒ぎがして、片付けの手を止めると鈴奈と男の間に入るように立った。
「あんた、何ですか」
以前鈴奈は見知らぬ男に襲われそうになったことがある。
自分がついていながら鈴奈を危険な目に合わせるようなことはさせられない。
男が一歩でも彼女に触れぬように警戒していると男は声を出して笑い始めた。
「いやだなー。凄い剣幕。別に怪しい者じゃないよ。僕はこういうもので
音楽プロデュサーをしてるんだ」
男は胸ポケットから名刺を取り出すと律仁と鈴奈にそれぞれ渡してきた。
モノクロのレコーディング機材の背景に『音楽プロデューサー 樫谷哲平 Tel 090-xxx-oooo』と書かれた少し洒落た名刺。
確かにそうと言われれば納得できなくもない身なりではあるが、男に対する不信感は拭えない。
「君の名前は雪城鈴奈くんでその隣が……浅倉律仁くんだったよね」
名刺から視線を移すとしたり顔をしている男に一驚しては、思わず鈴奈と顔を見合わせた。二人で活動しているときは一切名前を明かしていない。事務所に見つかるいかなかったが故に敢えて単純にR&Rとして活動していた。
「え、なんであたしちたちの名前……」
「ああ、それはね。君、鈴奈くんが路上でやっていた時から君に目を付けていたんだ。君の声は日本中を虜にする魅力を持っている原石だってね」
鈴奈も突然のことに戸惑っているのか、半歩後ろで律仁の洋服の裾を掴んでいる感覚がした。そんな二人を余所に、男は話を続ける。
「律仁くんには悪いけど、雪城鈴奈くん。君がその気なら、僕にプロデュースさせてくれないか?こんないつ日の目に出るかも分からない活動を続けているより、僕の手にかかれば君はすぐに日本中が魅了する歌姫にさせてあげられる。悪い話じゃないと思うけどな」
鈴奈の声が音楽プロデューサーと名乗る男に評価されたことは嬉しいけど
素直に喜べない。引き抜きを受けるほど鈴奈の声に魅力があることは頷けるが、そもそも音楽プロデューサーがこんな道端で唐突に声を掛けてくることなどあるのだろうか。
「あんた、何ですか」
以前鈴奈は見知らぬ男に襲われそうになったことがある。
自分がついていながら鈴奈を危険な目に合わせるようなことはさせられない。
男が一歩でも彼女に触れぬように警戒していると男は声を出して笑い始めた。
「いやだなー。凄い剣幕。別に怪しい者じゃないよ。僕はこういうもので
音楽プロデュサーをしてるんだ」
男は胸ポケットから名刺を取り出すと律仁と鈴奈にそれぞれ渡してきた。
モノクロのレコーディング機材の背景に『音楽プロデューサー 樫谷哲平 Tel 090-xxx-oooo』と書かれた少し洒落た名刺。
確かにそうと言われれば納得できなくもない身なりではあるが、男に対する不信感は拭えない。
「君の名前は雪城鈴奈くんでその隣が……浅倉律仁くんだったよね」
名刺から視線を移すとしたり顔をしている男に一驚しては、思わず鈴奈と顔を見合わせた。二人で活動しているときは一切名前を明かしていない。事務所に見つかるいかなかったが故に敢えて単純にR&Rとして活動していた。
「え、なんであたしちたちの名前……」
「ああ、それはね。君、鈴奈くんが路上でやっていた時から君に目を付けていたんだ。君の声は日本中を虜にする魅力を持っている原石だってね」
鈴奈も突然のことに戸惑っているのか、半歩後ろで律仁の洋服の裾を掴んでいる感覚がした。そんな二人を余所に、男は話を続ける。
「律仁くんには悪いけど、雪城鈴奈くん。君がその気なら、僕にプロデュースさせてくれないか?こんないつ日の目に出るかも分からない活動を続けているより、僕の手にかかれば君はすぐに日本中が魅了する歌姫にさせてあげられる。悪い話じゃないと思うけどな」
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