憧れはすぐ側に

なめめ

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ホテルで迎えた朝

4-7

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「好きな人はいないです·····」

何も好きな人がいるかいないか、なんて隠さなくてもいいことだが、いると認めてしまえば全てがなし崩しのように、自分の性癖まで見透かされてしまうような気がして嘘をついた。

「そう。でも大樹じゃなくて、ごめんね」

多少の罪悪感はあったものの保身の為。
律仁さんはあっさりと納得した様子だったのでこれ以上突っ込んでこないことに安堵しては、律仁さんの言葉の意図が理解出来ずに小首を傾げる。

「さっき俺の顔みた時、すげぇガッカリしてたみたいだったから。渉太くんの好きな人って大樹かなーって思ったんだよね」

落ち着きを取り戻したかと思えば再び鼓動が早くなる。確かに律仁さんを見たとき、『今が大樹先輩だったら·····』なんて思ってしまっていた。そんなに露骨に表情に出していたつもりは無かったが、読み取られてしまったのだろうか。

「ち、違います·····」

渉太は食事の手を止めると両手を膝の上に置いては強く握った。この人だけには悟られたくない。先輩の友達だし、告げ口でもされて先輩に気持ち悪いなんて思われるのだけは避けたい。歯を食いしばるが手に汗を握る。

「ふーん、じゃあさ。大樹が昨日の渉太くんのこと何て言ってたか気にならない?」

気にならないと言えば嘘になるが、聞くのは怖い。格好悪い所を先輩に見られてしまったのは変わらないし、完璧な先輩だからそんな自分を見て呆れられたかもしれない。

だけど、この気持ちがバレてることよりはマシ。うんともスンとも頷かずに黙秘をしていると右手で頬杖をついて此方をじっと見てくる。

「大樹ねー君のこと·····」

別に聞きたいとは言っていないのに話始めようとする律仁さん。渉太は無意識に律仁さんの口元に集中しては、息をのんだ。
やっぱり気になる·····。
しばらくして、律仁さんは口角を上げると
突然笑い始めた。

「渉太くん分かりやすすぎ。そんなに大樹のこと気になるんだ」

不愉快なくらい笑う律仁さんに渉太はからかわれたのだと諭すと椅子から立ち上がった。
泣いたら負けだと分かっていたが、堪えられなくなり、部屋の隅にしゃがんでは膝を抱える。

何もかも終わった。

律仁さんに先輩が好きだとバレたことも。
もともと始まってすらいなかった恋だが、大樹先輩に軽蔑されるのだけは嫌だった。
こうなったら、もう先輩のいる教室に覗きに行くことも出来ない。

「ごめん。渉太くんをそんな泣かせるつもりじゃなかったんだ」

背後から律仁さんの気配を感じたが渉太は一切振り向かずに塞ぎ込んでいた。
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