憧れはすぐ側に

なめめ

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大樹先輩の彼女

7-2

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鞄から財布を取り出し中身を確認する。
野口さん三枚あれば足りるだろうか·····。

「3000円」
「え!?」

せいぜい1枚半くらいだと思っていただけに、まさか全財産だとは思わず渉太は思いのほか声を上げてしまった。
周りが一瞬だけ此方を見たが、再び何事もなかったかのように各々の輪の中に意識を戻す様子がみられる。

律仁さんはやたらとキョロキョロしては口元に人差し指を当てて、声のトーンを落とすように促してきた。渉太は小声で「すみません」と謝ると肩を窄める。

「渉太は気にしなくていいから。まぁその代わり身体で払ってもらうことになるけど」

「え····じゃあ、いいです」

身体で·····の意味を考えては一気に顔が熱くなる。あの時だってそうだった。
直ぐに変な考え起こして周りに勘づかれて·····自分は何も学習してない。

その様子を律仁さんに見られたくなくて渉太は俯きながらお弁当を律仁さんに返すようにテーブルの上でスライドさせた。

「冗談だよ。俺が渉太と一緒に食べたくて買ってきてるだけだから、そう言わずに付き合って?」

 再びお弁当が自分の手元へと戻ってくる。
本当、自分は律仁さんにからかわれてばかりだ。

手をつけることを躊躇っている渉太の傍ら、律仁さんは早速と蓋を開けては何事もなく「いただきます」というなり食べ始めていた。

人が食事をしているのを見ると余計にお腹が空く。渉太は意を決して箸を持ってはお弁当に手をつけた。
最初は遠慮がちにしていたものの一口頬張った途端に目の前に律仁さんがいることも忘れて顔が綻んでしまっていた。

律仁さんはこんなものをごく日常的に口にしているのかと。

「渉太と律仁じゃん。何してんの」

顔を綻びを隠せずにいると頭上から声がした。大樹先輩が後ろに女の人を連れて立っていた。
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