憧れはすぐ側に

なめめ

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近づく距離

14-2

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律仁さんは窓際から離れると、初めて来た部屋にもかかわらず、遠慮もなしにローテーブルに無造作にコンビニの袋を置く。するとローテーブルの前にベッドを背もたれにして腰を掛けた。

フローリングに灰色の絨毯を敷いているとはいえ、こういう時の為に座布団を用意しておけば良かった……。
渉太は気休め程度にベッドに置いてあったクッションを渡すと「ありがとう」と言っては快く受け取ってくれたかと思えば、そのまま隣に置かれてしまった。

やっぱり、要らなかったんだろうかと思っていると、そのクッションの場所をポンポンと叩かれる。断った理由が律仁さん自身の為じゃなくて俺の為の気遣いだと分かるとなんだか胸がキュッとした。

渉太は自分だけ楽する訳にもいかず、律仁さんの隣を促されたのでクッションを避けては少し距離を取りながらも正座で座った。

「でもこれくらいの広さの家好きだよ。俺も小さい頃は似たような部屋で母親と住んでたから」

「じゃあ今、お母さんは……?」

「んー俺が仕事で成功するようになってから
金だけ貰ってどっかで再婚相手とでも暮らしてんじゃないかな?」

律仁さんの家庭の事情を聞かされ、驚くと同時にもしかして聞いてはいけないことを問いかけてしまった気がして後悔した。

何事もないように明るく話しているけど、律仁の口調から、明るみに出すようなとてもいい家庭環境のようには思えなかった。

再婚相手ってことは実の父親は……?
なんて勘繰ってしまいそうになるが訊いてはいけない気がする。

もし自分がこんな複雑な家庭環境だったら誰にも話したくないし、完全に塞ぎ込んでしまっていた気がしたから……。

「えっと……律仁さんの家庭って複雑なんですね。なんか、ごめんなさい……」

「いいよ、お金だけで繋がってるようなもんだから。居ないも同然だと思ってるし」

テーブルに肘を立てては頬杖をつく律仁さん。正面を見つめた瞳がどこか一点だけを見つめて遠い目をしていた。いい加減だとかなんだとか思ってきたけどこの人は本当は寂しい人なんじゃないかとさえ思えてきた。

    
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