憧れはすぐ側に

なめめ

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触れたいのに

21-6

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ソファに押し倒されて、律仁さんは自分の腰の脇と下肢の間に膝を置き跨って来ては夢中でキスを交わしていた。

次第に右手の絡まる指がそっと解かれては、渉太の洋服の中に入って来た。
腰をなぞられ、それに気がついた渉太の身体がビクリと跳ねる。

「ちょっ……律仁さんっ………」

たんまを掛けようとするものの、そのまま気にせずに身体に沿わせながら進んでいく、律仁さんさんの手に動揺した渉太は顔を背けると少しだけ上体を起こして、身体を捻った。

「渉太……」

律仁さんの手を避けようにもソファの上じゃ上手く身動きが取れず、ふと顔を見上げると睨むとは違う獲物を捉えた獣のような鋭い目をして、此方を見下ろしてくる律仁さんがいた。

途端にあの自分を見世物にしようとしていた友達の表情、藤咲ふじさきの冷たい視線と交差しては、恐怖心で身体が硬直しだす。

律仁さんは俺を本気で傷つけて揶揄うような人じゃない、でもあの時みたいに自分の醜い姿を見られて軽蔑されたらと思うとこの先へ進むことへの恐怖が増す。

そんな渉太の気持ちを露知らずに律仁さんに強引にキスで口を塞がれてしまった。

「んっっ……んっ…んっ」

先程感じていた心地良さよりも、恐怖心が強くなってキスに集中ができない。
止めなきゃと思っているうちに、律仁さんの手がスラックスの中に掛かったとき、危機感を覚えた渉太は精一杯の力で律仁さんを蹴り飛ばしていた。

「いやだっ……」

ソファの端へと後ずさると体育座りで身を縮める。俺が押したことによってバランスを崩してソファから落ちてしまった律仁さんは、腹部を抑えながら驚いた様子で此方を見ては、辛烈な表情をしていた。

「律仁さんっ……ごめんなさい……」

それを見て、自分は律仁さんにとんでもないことをしてしまったのだと悟ると深く頭を項垂れさせては謝る。

だけど律仁さんへの申し訳ない気持ちよりも恐怖心が勝ってそれ以上に何も考えられなく、渉太は両腕をさすって気持ちを落ち着かせるのでいっぱいいっぱいだった。

律仁さんが嘲笑うわけないと思っていても、あの日のあの人の顔、周りの奴らのことを思い出しては身震いが止まらなくなる。

あの天体観測の日で過去に囚われたままの自分から脱却出来たと思っていた。だけど、トラウマは何年経ったって心に蛇のようにまとわりついて、克服することを許してくれないみたいだった……。

「俺こそ、ごめんね。調子に乗りすぎた……」

律仁さんは静かに立ち上がるとテーブルの横の籠に丸めてあったブランケットを広げては
頭から被せてくれた。
僅かな暖かさに気持ちも徐々に落ち着いてくる。

ブランケット越しに、律仁さんが頭を撫でてきたのを感じると、優しい声音で「ちょっと頭冷やしてくるね」と言ってはリビングの扉が閉まった音が聴こえた。
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