憧れはすぐ側に

なめめ

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甘くて醒めない気持ち

29-10

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不謹慎かもしれないけど弱い部分を見せて甘えてきている律仁さんが愛おしくて優しく撫でてあげたい衝動に駆られた。

渉太は上げた左手をゆっくり律仁さんの背中に近づけては静かに触れる。

「せめて律のことだけは、渉太の前で完璧でいたかったけど、ダメだね。やっぱり律でも俺は俺だから……渉太の前では取り繕えないや」
「充分です。俺の前では取り繕わないでください。こ、こいびと…だから……辛いときは沢山の俺に甘えて欲しいです」

「ほんと?幻滅しない?」

「しないです。言ったじゃないですか……欲張りだけど、俺はアイドルの律仁さんも俺の前で意地悪そうに笑う律仁さんもどっちも好きなんです」

律仁さんは肩口から額を離すとじっと俺の顔を見つめてきた。惹き込まれそうなくらい眼鏡の奥の瞳が近づいてきては、キスされる気配に目を瞑った。

掴まれる腕に胸をドキドキと高鳴らせているうちに唇が触れ合い、下唇を優しく律仁さんの唇で噛まれて離れた。いつものキスだけど、どこか弱々しい。

数回重ねたところで、律仁さんは渉太から手を離して微笑みかけてくる。

「今日はもう疲れたし寝よっか?
渉太とキスして少し元気貰ったよ」

このまま続けられると思ったキスがあっさりと終わって少し物足りなさを感じながらも、深く頷くと「片付けるから、先に行ってて?」と言われたので渉太は律仁さんの寝室へと向かった。

広いダブルベッドの布団の中へと入っては渉太の中で何処か悶々としていた。

正直、律仁さんともう少しキスしていたかった……。軽いキスじゃなくていつぞやの時みたいな身体が痺れそうなくらい熱くなるキス。
律仁さんが意図的に軽いキスで終わらせたのは分かっていた。

あの日以来、熱を帯びるような口付けを律仁さんとはしていない。
感情のまま沢山求め合うようなキスをしたらその先を望みたくなる。だけど、まさにこの場所で「俺と居れるだけでいい」と言った律仁さんはこの間みたいに俺を怖がらせないように、歯止めを聞かせているんだと思った。

でも、あのキスは嫌じゃなかった。
むしろ気持ち良くて、律仁さんと愛し合えているんだと実感できた。だけど、渉太にとってはその先が怖い。トラウマのこともあるが、欲望をさらけ出した自分を見て、律仁さんに引かれないだろうかと踏み込めなかった。

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