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別れ話
別れ話 10-6
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入室と共に西田が開けた窓から吹き抜けた風によって保健室独特の薬剤の匂いが鼻をかすめる。
殆どの生徒や教員は授業中なので余程のことがない限り来ることはないが、念の為最後に入った亨が鍵をかけた。自ら別れを告げるのは初めてだ。緊張とは無縁な性格の亨でも今日ばかりは身が引き締まる思いでいた。
·····ここを乗り越えなければ自分が望む葵との未来は閉ざされたままだ。
「ねぇ、亨。保健室から花壇が見えること知らないでしょ」
「知らない·····」
窓の外を眺める西田はきっと、俺が先程葵と居たであろう花壇を眺めているようだった。
保健室から見える景色なんて知らない。
こんなに頻繁に通っていても常に閉められたカーテンの向こう側なんて眺めることは早々ない。
掛けられた鍵に教卓前に並べられた椅子テーブル。西田の愛に答える為だけに乗ってきた白いベッド。西田との関係はこの保健室の中だけ全て完結している世界だ。
「だから、あなたが此処に来ない間もずっと見てたの。私が亨にあんなに会いたいって連絡してるのに適当にはぐらかされて。そんな時、毎朝毎朝、見るのは葵くんと楽しそうに花壇にいる姿」
西田はゆっくりと窓際から此方へ近づいてくると亨の胸ぐらを弱い力で掴んできた。
長いまつ毛の奥に潤む瞳。
自分が悲劇のヒロインであるかのような姿に亨の心は冷めきっていた。
「ねぇ、なんでよ。あんなに葵くんに近寄らないでって言ったじゃないっ。なんで彼女の言うことが聞けないの」
「俺は最初から葵と関わらない約束は受け入れたわけじゃないよ。俺は西田の為に生きてる訳じゃない·····」
感情的になる西田に対して亨は冷静な頭で彼女と向き合っていた。
亨の言葉で彼女の涙を溜めた瞳が大きく見開かれる。その瞳に『西田は俺の何が好きなんだよ』『言うこと聞くって何·····?』と問いかけたところで薄っぺらい自己中心的な返答がくるのは分かりきっていた。
この様子だと別れを告げても、そう一筋縄ではいかないだろう。簡潔に尚且つ、余計な感情を表に出さないように告げるしかない。
亨は掴まれた胸倉を払い落とし、皺になった制服を直しては西田のことを見据えると、浅く深呼吸をした。
殆どの生徒や教員は授業中なので余程のことがない限り来ることはないが、念の為最後に入った亨が鍵をかけた。自ら別れを告げるのは初めてだ。緊張とは無縁な性格の亨でも今日ばかりは身が引き締まる思いでいた。
·····ここを乗り越えなければ自分が望む葵との未来は閉ざされたままだ。
「ねぇ、亨。保健室から花壇が見えること知らないでしょ」
「知らない·····」
窓の外を眺める西田はきっと、俺が先程葵と居たであろう花壇を眺めているようだった。
保健室から見える景色なんて知らない。
こんなに頻繁に通っていても常に閉められたカーテンの向こう側なんて眺めることは早々ない。
掛けられた鍵に教卓前に並べられた椅子テーブル。西田の愛に答える為だけに乗ってきた白いベッド。西田との関係はこの保健室の中だけ全て完結している世界だ。
「だから、あなたが此処に来ない間もずっと見てたの。私が亨にあんなに会いたいって連絡してるのに適当にはぐらかされて。そんな時、毎朝毎朝、見るのは葵くんと楽しそうに花壇にいる姿」
西田はゆっくりと窓際から此方へ近づいてくると亨の胸ぐらを弱い力で掴んできた。
長いまつ毛の奥に潤む瞳。
自分が悲劇のヒロインであるかのような姿に亨の心は冷めきっていた。
「ねぇ、なんでよ。あんなに葵くんに近寄らないでって言ったじゃないっ。なんで彼女の言うことが聞けないの」
「俺は最初から葵と関わらない約束は受け入れたわけじゃないよ。俺は西田の為に生きてる訳じゃない·····」
感情的になる西田に対して亨は冷静な頭で彼女と向き合っていた。
亨の言葉で彼女の涙を溜めた瞳が大きく見開かれる。その瞳に『西田は俺の何が好きなんだよ』『言うこと聞くって何·····?』と問いかけたところで薄っぺらい自己中心的な返答がくるのは分かりきっていた。
この様子だと別れを告げても、そう一筋縄ではいかないだろう。簡潔に尚且つ、余計な感情を表に出さないように告げるしかない。
亨は掴まれた胸倉を払い落とし、皺になった制服を直しては西田のことを見据えると、浅く深呼吸をした。
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