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亨の家のシクラメン
亨の家のシクラメン⑥
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母親から貰った住所のメモを頼りに葵の実家とは真逆の方向へ向かった所にある鉄コン筋クリートの三階建てのアパート。お店から15分程度と大学生から差程遠くは無い。亨がいつからひとり暮らしをしているのかは分からないが、毎日通うのであれば不便のない立地であった。
駐車場はないので、近くのパーキングエリアに停める。車を降りて、アパートのガラス扉を引き、狭くて短い階段を上ると3つほど茶色い扉が並ぶ中、203号室の前で立ち止まった。
表札にはサインペンで自分で書いたのか、『塩谷』と達筆な字で書かれている。亨はその器用さの通り、字も綺麗であることは伝票や伝達事項のメモを見る度思っていた。
葵は果物の入ったビニール袋を握りながら深く息を吐く。寝込んで居るのだから、インターホンを押したところで出てこれる状態じゃないかもしれない。
そしたら、電話だけ鳴らしてドアノブに掛けて帰ろう。葵は意を決して亨の部屋のインターホンを鳴らしてみると、案の定、応答はなかった。
気は進まないが、黙って果物を置いて帰る訳にもいかず、緊急連絡先として一緒にメモってきた亨の携帯に電話をかけてみる。
『はい·····』
『もしもし、塩谷くんですか』
『星野か?なんだよ·····ごほごほっごほごほっ』
十コールほどして漸く出た彼の超えはどこか覇気がなく、時折からっ咳をしていることから、電話越しからでもだるそうなのが伝わってくる。
『見舞いなら、いらないからっ·····お前にうつったら佐和田にも迷惑かかんだろ·····げほっげほっ·····』
亨は誰かと間違えているのか、葵が返事をする前にお見舞いを断られてると直ぐに電話が切れてしまった。普段の亨と違う少し砕けた口調にドキッとしながらも少し寂しさを覚えた。
自分と話す時の亨はこう·····遠慮がちというか、気を張っているというか、肩の力を抜いて接してきているような感じはしない。
きっとそれは僕がそうさせているような気がして余計に虚しくなった。
本人も言っている事だし、そのままドアノブに掛けてSMSにでもメッセージだけ残して帰ろうか·····。電話で安否は確認出来たし、オレンジを渡せば目的は果たせる。
本人は突っぱねた様子だったけど、声は枯れていたし、大分弱っているような気もした。
ひとりでちゃんとご飯とか、水分は取れているのだろうか……。
葵はオレンジの入った袋をドアノブに提げてしばらく考え込んでいた。
何の気なしに試しにドアノブを捻ると、扉が少し開く。どうやら鍵は閉めていないらしい……。不用心にも程があるとはいえども、独り身の亨では何かあった時の為に開けているという線があってもおかしくはなかった。
外に袋をかけていても亨が気づかないかもしれない……などと言い訳をして、オレンジを置いたら帰るつもりで、葵は扉を開けると静かに玄関先へと入っていった。
駐車場はないので、近くのパーキングエリアに停める。車を降りて、アパートのガラス扉を引き、狭くて短い階段を上ると3つほど茶色い扉が並ぶ中、203号室の前で立ち止まった。
表札にはサインペンで自分で書いたのか、『塩谷』と達筆な字で書かれている。亨はその器用さの通り、字も綺麗であることは伝票や伝達事項のメモを見る度思っていた。
葵は果物の入ったビニール袋を握りながら深く息を吐く。寝込んで居るのだから、インターホンを押したところで出てこれる状態じゃないかもしれない。
そしたら、電話だけ鳴らしてドアノブに掛けて帰ろう。葵は意を決して亨の部屋のインターホンを鳴らしてみると、案の定、応答はなかった。
気は進まないが、黙って果物を置いて帰る訳にもいかず、緊急連絡先として一緒にメモってきた亨の携帯に電話をかけてみる。
『はい·····』
『もしもし、塩谷くんですか』
『星野か?なんだよ·····ごほごほっごほごほっ』
十コールほどして漸く出た彼の超えはどこか覇気がなく、時折からっ咳をしていることから、電話越しからでもだるそうなのが伝わってくる。
『見舞いなら、いらないからっ·····お前にうつったら佐和田にも迷惑かかんだろ·····げほっげほっ·····』
亨は誰かと間違えているのか、葵が返事をする前にお見舞いを断られてると直ぐに電話が切れてしまった。普段の亨と違う少し砕けた口調にドキッとしながらも少し寂しさを覚えた。
自分と話す時の亨はこう·····遠慮がちというか、気を張っているというか、肩の力を抜いて接してきているような感じはしない。
きっとそれは僕がそうさせているような気がして余計に虚しくなった。
本人も言っている事だし、そのままドアノブに掛けてSMSにでもメッセージだけ残して帰ろうか·····。電話で安否は確認出来たし、オレンジを渡せば目的は果たせる。
本人は突っぱねた様子だったけど、声は枯れていたし、大分弱っているような気もした。
ひとりでちゃんとご飯とか、水分は取れているのだろうか……。
葵はオレンジの入った袋をドアノブに提げてしばらく考え込んでいた。
何の気なしに試しにドアノブを捻ると、扉が少し開く。どうやら鍵は閉めていないらしい……。不用心にも程があるとはいえども、独り身の亨では何かあった時の為に開けているという線があってもおかしくはなかった。
外に袋をかけていても亨が気づかないかもしれない……などと言い訳をして、オレンジを置いたら帰るつもりで、葵は扉を開けると静かに玄関先へと入っていった。
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