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秘密は3人いないと成立しないんだ
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夏休み明け初日、小学校では始業式が行われた。
肌を黒く焦がした、健康的な少年少女たちの姿が多く見られる。
そんな中では当然、肌の色が長期休み前と一切変わっていない2人の少年と少女は、酷く浮いて見えてしまうのだった。
それでも、互いに顔を見合わせて笑みを浮かべ、堂々と前を向く姿は、この中で一番無垢な子供らしかった。
「それでは皆さん、また明日」
柔かな笑みと共に、大量の宿題を全て集め切った教師が、皆を家へ帰らせた。
教師に見送られ、未だお休み気分が抜けない彼等は、また公園で集まる約束をして、一度家へと帰った。
その様子を後ろから見ていた少年と少女は、小さな声で話し始めた。
「もう、いないよね」
「ああ、大丈夫そうだよ。今日も来るかい?」
「…うん」
会話はそれだけだった。
「またね」も無しに、彼等は道を別れた。
数時間後。
背の高い野草を掻き分けたその先、瓦礫で組み立てられた秘密基地に、2人の姿があった。
二人の手には、それぞれラムネ瓶が握られていた。
秘密基地に響くのは風に揺れる野草の音だけだが、不思議と空気は暖かかった。
少年が、ラムネを飲み干した。
中のビー玉が転がって、カランと夏の音色を奏でた。
少女も後に続いてラムネを飲み干し、真似してビー玉を鳴らした。
カラン、カラン。
重なり、共鳴するビー玉を、2人は黙って聞いていた。
「このビー玉の音、別の場所で聴いたことある気がする」
「うーん、風鈴とか?」
「あ、それだ。どっちも夏の音って感じがする」
「確かにそうだね。夏はこんなに綺麗な音がするんだね」
「…夏を思わせる音ってだけで、夏から音がする訳じゃないでしょ」
「いや、これは確かに夏から聴こえて来たんだよ。
ラムネ瓶は基本夏にしか見かけない。
ラムネ瓶が夏の産物なら、このビー玉の音も夏の産物なんだ」
少女は、今日初めて笑った。
「やっぱり、達観してるよね」
何度目かもわからないその言葉を、少年は笑って受け流した。
この秘密基地で、色々な話をして来た。
しかしどれも展開は同じで、少女が挙げる一般論に、少年が反論を述べる。
少年の独特な思考から導き出される反論は、てんで可笑しい筈なのに、何故か納得してしまいそうになる。
夏休み中、毎日此処へ来ていたのは、家から逃げ出したかっただけではないのだ。
「ねぇ、時々後悔するんだ。
君が似たような境遇だからって、私の秘密は簡単に背負わせることはできない物だった。
本当に此処にいて、背負ってもらってて良いのかな、って」
少女の、いつもより小さな声も、少年は聞き逃さなかった。
暗い表情の少女の横で、少年は明るい笑みを浮かべてみせた。
「秘密は、3人いないと成立しないんだ。
秘密を抱える者と、秘密を隠される者、そして秘密を共有される者。
1人で抱えるには、秘密って物は重すぎる。
それがどんな秘密だとしても、ね。
だから僕たちは、秘密を共有する。
秘密は、必ず誰かに共有される物なんだ」
少女は、その目を見開く。
少年は、不器用ながら、彼なりの激励の言葉を紡ぐ。
「僕は、君の秘密に対して、『秘密を共有される者』になっただけだ。
僕がその役目についたお陰で、君の秘密はようやく完全になった。
これで、自分自身を壊すことなく、秘密を隠しておけるだろう?」
少女は、瞳を潤ませながら笑った。
「やっぱり、達観してるよね」
肌を黒く焦がした、健康的な少年少女たちの姿が多く見られる。
そんな中では当然、肌の色が長期休み前と一切変わっていない2人の少年と少女は、酷く浮いて見えてしまうのだった。
それでも、互いに顔を見合わせて笑みを浮かべ、堂々と前を向く姿は、この中で一番無垢な子供らしかった。
「それでは皆さん、また明日」
柔かな笑みと共に、大量の宿題を全て集め切った教師が、皆を家へ帰らせた。
教師に見送られ、未だお休み気分が抜けない彼等は、また公園で集まる約束をして、一度家へと帰った。
その様子を後ろから見ていた少年と少女は、小さな声で話し始めた。
「もう、いないよね」
「ああ、大丈夫そうだよ。今日も来るかい?」
「…うん」
会話はそれだけだった。
「またね」も無しに、彼等は道を別れた。
数時間後。
背の高い野草を掻き分けたその先、瓦礫で組み立てられた秘密基地に、2人の姿があった。
二人の手には、それぞれラムネ瓶が握られていた。
秘密基地に響くのは風に揺れる野草の音だけだが、不思議と空気は暖かかった。
少年が、ラムネを飲み干した。
中のビー玉が転がって、カランと夏の音色を奏でた。
少女も後に続いてラムネを飲み干し、真似してビー玉を鳴らした。
カラン、カラン。
重なり、共鳴するビー玉を、2人は黙って聞いていた。
「このビー玉の音、別の場所で聴いたことある気がする」
「うーん、風鈴とか?」
「あ、それだ。どっちも夏の音って感じがする」
「確かにそうだね。夏はこんなに綺麗な音がするんだね」
「…夏を思わせる音ってだけで、夏から音がする訳じゃないでしょ」
「いや、これは確かに夏から聴こえて来たんだよ。
ラムネ瓶は基本夏にしか見かけない。
ラムネ瓶が夏の産物なら、このビー玉の音も夏の産物なんだ」
少女は、今日初めて笑った。
「やっぱり、達観してるよね」
何度目かもわからないその言葉を、少年は笑って受け流した。
この秘密基地で、色々な話をして来た。
しかしどれも展開は同じで、少女が挙げる一般論に、少年が反論を述べる。
少年の独特な思考から導き出される反論は、てんで可笑しい筈なのに、何故か納得してしまいそうになる。
夏休み中、毎日此処へ来ていたのは、家から逃げ出したかっただけではないのだ。
「ねぇ、時々後悔するんだ。
君が似たような境遇だからって、私の秘密は簡単に背負わせることはできない物だった。
本当に此処にいて、背負ってもらってて良いのかな、って」
少女の、いつもより小さな声も、少年は聞き逃さなかった。
暗い表情の少女の横で、少年は明るい笑みを浮かべてみせた。
「秘密は、3人いないと成立しないんだ。
秘密を抱える者と、秘密を隠される者、そして秘密を共有される者。
1人で抱えるには、秘密って物は重すぎる。
それがどんな秘密だとしても、ね。
だから僕たちは、秘密を共有する。
秘密は、必ず誰かに共有される物なんだ」
少女は、その目を見開く。
少年は、不器用ながら、彼なりの激励の言葉を紡ぐ。
「僕は、君の秘密に対して、『秘密を共有される者』になっただけだ。
僕がその役目についたお陰で、君の秘密はようやく完全になった。
これで、自分自身を壊すことなく、秘密を隠しておけるだろう?」
少女は、瞳を潤ませながら笑った。
「やっぱり、達観してるよね」
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