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第2章
第90話 『嫉妬』の消滅
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それは格闘家であるグリムロックのカンであった。
「そんな……馬鹿な。まさか、魔導書使いが7人以上いる?」
あり得ないとはわかっている。 操作系のように、無関係の者を仲間にすれば――――
(例えば、支援が得意な魔法使いを仲間にすれば、同じ技でありながら差が生まれるのこともあるだろう。しかし――――)
しかし、疑問を口にした途端、しっくり来るものを感じた。
そして、それは事実であるように隠れていた人物の手には魔導書が握られている。
「うむ……やはり、隠れながら戦うのは好みではない」
戦いの場でありながら、ゆっくりと―――― いや、堂々と言うべきか? ――――その8人目の魔導書使いは近づき、素顔を見せる。
その顔は――――
「ルオン王子と同じ顔……影武者? いや、双子か?」
「どちらも違う。余の顔を見忘れたか?」
その言葉遣いに「……」と面を食らうグリムロック。 この男は何を言ってるのか?
しかし、確かにその顔は見覚えがあった。 それは奇妙な感覚だ。
その人物はルオン王子と同じ顔。ならば、ルオン王子を見た時に――――
「いや、あり得ない。年齢が違いすぎる」
「ほう……気づいたか。だったら、片膝と頭を地面につけるがよい」
その声で気づく。 この国の民なら、何度となく聞いた声だ。
だが、同時にグリムロックは信じられなかった。
「まさか、そんな……モンド王?」
それはルオン王子に父親の名前――――つまり、国王の名前であった。
「その通りだ。今まで不敬を許そう」とモンド王は笑みを浮かべる。それからナイフを取り出す。
「だから、自害するが良い。これを使うとよいぞ」
「――――ふざけるな!」と手にしたナイフを投げつける。
だが、そのナイフはモンド王に届かなかった。 直前で、ルオン王子が剣で叩き落したからだ。
「王に対する不敬……その命、刈り取らせてもらう」
王子である彼も、父親であるモンド王の前では護衛のような立ち振る舞いになり、剣をグリムロックに向けた。しかし――――
「構わぬ、ルオン。 民草との楽しき会話は王の特権じゃぞ」
「はい、心得させていただきます」と一歩、下がる。
「さて……えっと、名はなんと言ったかのう。歳を取ると物忘れが酷くなってな」
その言葉にグリムロックは、どうしても違和感が拭えない。
彼が知るモンド王の顔は、初老だ。正確な年齢は知らないが……おそらく50代後半。 しかし、今のモンド王は20代のように見えた。
なぜか? その疑問に他ならぬ王が答える機会がやってきた。
「父上、この者は、グリムロックと申します」
「そうであったか……では、グリムロック。余を楽しませた礼をくれてやる」
「はぁ? まだ、戦いの最中だろが」
「ふむ、まだ勝つつもりであったか」
「やはり、お主は面白い」と笑いながら「お主は、この第一次魔導書大戦をどう思っておる?」と訊ねてきた。
「どう思っているか? それは……」
何も思っていない。 何も考えていない。
いや、何も考えていないわけではない。
彼は単純に、不思議なアイテムを手に入れた事で王になる試練を受ける事に――――
「王になる?」とグリムロックは自分の思考から浮かんだ疑問を口にした。
「そう、これは魔導書を持つ者同士が戦って王を決める闘い……では、おかしなことがあるじゃろ?」
「……」
無言、それは肯定を意味する。
「そうじゃ、王を決める闘いが実在するなら――――余の存在はなんじゃ?」
「……わからない」とグリムロックは素直に答えた。
今は戦いの最中。しかし、聞かなければならない。そう感じていた。
「なんてことはない。神代から続く魔導書の奪い合いは5000年続く。その5000年間、余が1人勝ちを続けたからこそ、余が王であり、ここに国があるのだ」
「な、何を言ってる? イカれているのか?」
「当然の道理のはずが、理解が追い付かぬか。それも仕方あるまい。なんせ、『第一次魔導書大戦』などとふざけた名を付けている輩もいるくらいじゃからな」
「お前がいう事が正しいなら、アンタは5000歳か? とても、そう見えないぞ」
「ふっ、息子と同じ年齢の父親。それが証拠だと思うが……年齢で言うなら使徒という怪物どもは、どうじゃ? 奴らの言う5000歳は信じるのじゃろ?」
「――――」
「反論はなし……か? では、最後に本気を見せてやろう」
モンド王、その圧力が増していく。 彼の手にした魔導書が怪しく輝く。
5000年間。
もしも本当に彼が勝ち続けていたのなら、5000年分の魔力は、どれほど膨張しているのか?
それが、グリムロックに向けられた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
その日、7人の魔導書使いから『嫉妬』の名前が消滅した。
「歯ごたえもない。 残りは6人であったかな?」
「はい、父上。 次は誰を討ちましょうか」
「最強を自称する『憤怒』 跳ねっ返りの『強欲』 順調に戦力を増やしてる『怠惰』……選り取り見取りではないか」
モンド王は、ご満悦と言った感じで、ニンマリとした笑みを見せる。
「お前は、誰と遊びたい? ルオンよ?」
ルオンは「……」と考え込んだ。それから、
「では、まずは未知の存在である『暴食』へ探りをいれましょう」
「そんな……馬鹿な。まさか、魔導書使いが7人以上いる?」
あり得ないとはわかっている。 操作系のように、無関係の者を仲間にすれば――――
(例えば、支援が得意な魔法使いを仲間にすれば、同じ技でありながら差が生まれるのこともあるだろう。しかし――――)
しかし、疑問を口にした途端、しっくり来るものを感じた。
そして、それは事実であるように隠れていた人物の手には魔導書が握られている。
「うむ……やはり、隠れながら戦うのは好みではない」
戦いの場でありながら、ゆっくりと―――― いや、堂々と言うべきか? ――――その8人目の魔導書使いは近づき、素顔を見せる。
その顔は――――
「ルオン王子と同じ顔……影武者? いや、双子か?」
「どちらも違う。余の顔を見忘れたか?」
その言葉遣いに「……」と面を食らうグリムロック。 この男は何を言ってるのか?
しかし、確かにその顔は見覚えがあった。 それは奇妙な感覚だ。
その人物はルオン王子と同じ顔。ならば、ルオン王子を見た時に――――
「いや、あり得ない。年齢が違いすぎる」
「ほう……気づいたか。だったら、片膝と頭を地面につけるがよい」
その声で気づく。 この国の民なら、何度となく聞いた声だ。
だが、同時にグリムロックは信じられなかった。
「まさか、そんな……モンド王?」
それはルオン王子に父親の名前――――つまり、国王の名前であった。
「その通りだ。今まで不敬を許そう」とモンド王は笑みを浮かべる。それからナイフを取り出す。
「だから、自害するが良い。これを使うとよいぞ」
「――――ふざけるな!」と手にしたナイフを投げつける。
だが、そのナイフはモンド王に届かなかった。 直前で、ルオン王子が剣で叩き落したからだ。
「王に対する不敬……その命、刈り取らせてもらう」
王子である彼も、父親であるモンド王の前では護衛のような立ち振る舞いになり、剣をグリムロックに向けた。しかし――――
「構わぬ、ルオン。 民草との楽しき会話は王の特権じゃぞ」
「はい、心得させていただきます」と一歩、下がる。
「さて……えっと、名はなんと言ったかのう。歳を取ると物忘れが酷くなってな」
その言葉にグリムロックは、どうしても違和感が拭えない。
彼が知るモンド王の顔は、初老だ。正確な年齢は知らないが……おそらく50代後半。 しかし、今のモンド王は20代のように見えた。
なぜか? その疑問に他ならぬ王が答える機会がやってきた。
「父上、この者は、グリムロックと申します」
「そうであったか……では、グリムロック。余を楽しませた礼をくれてやる」
「はぁ? まだ、戦いの最中だろが」
「ふむ、まだ勝つつもりであったか」
「やはり、お主は面白い」と笑いながら「お主は、この第一次魔導書大戦をどう思っておる?」と訊ねてきた。
「どう思っているか? それは……」
何も思っていない。 何も考えていない。
いや、何も考えていないわけではない。
彼は単純に、不思議なアイテムを手に入れた事で王になる試練を受ける事に――――
「王になる?」とグリムロックは自分の思考から浮かんだ疑問を口にした。
「そう、これは魔導書を持つ者同士が戦って王を決める闘い……では、おかしなことがあるじゃろ?」
「……」
無言、それは肯定を意味する。
「そうじゃ、王を決める闘いが実在するなら――――余の存在はなんじゃ?」
「……わからない」とグリムロックは素直に答えた。
今は戦いの最中。しかし、聞かなければならない。そう感じていた。
「なんてことはない。神代から続く魔導書の奪い合いは5000年続く。その5000年間、余が1人勝ちを続けたからこそ、余が王であり、ここに国があるのだ」
「な、何を言ってる? イカれているのか?」
「当然の道理のはずが、理解が追い付かぬか。それも仕方あるまい。なんせ、『第一次魔導書大戦』などとふざけた名を付けている輩もいるくらいじゃからな」
「お前がいう事が正しいなら、アンタは5000歳か? とても、そう見えないぞ」
「ふっ、息子と同じ年齢の父親。それが証拠だと思うが……年齢で言うなら使徒という怪物どもは、どうじゃ? 奴らの言う5000歳は信じるのじゃろ?」
「――――」
「反論はなし……か? では、最後に本気を見せてやろう」
モンド王、その圧力が増していく。 彼の手にした魔導書が怪しく輝く。
5000年間。
もしも本当に彼が勝ち続けていたのなら、5000年分の魔力は、どれほど膨張しているのか?
それが、グリムロックに向けられた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
その日、7人の魔導書使いから『嫉妬』の名前が消滅した。
「歯ごたえもない。 残りは6人であったかな?」
「はい、父上。 次は誰を討ちましょうか」
「最強を自称する『憤怒』 跳ねっ返りの『強欲』 順調に戦力を増やしてる『怠惰』……選り取り見取りではないか」
モンド王は、ご満悦と言った感じで、ニンマリとした笑みを見せる。
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