107 / 118
第2章
第107話 決着 堕天使の戦い
しおりを挟む
堕天使の口が動くのがわかった。 声にならない声……しかし、詠唱は成立した。
『炎剣《イグニスグラディウス》』
その言葉に従って魔剣には炎が灯る。
「こいつ、俺の魔法を学習した!?」
堕天使は魔剣を振る。炎が身に纏った斬撃だ。
初めての攻撃に反応が遅れたユウト。 回避は間に合わない……辛うじて盾で防御する。 しかし、それは無意味だった。
堕天使が繰り出しているのは、間合いを無視する魔剣の技。
盾を通過してユウトの体に2線の太刀筋を刻む。
「ぐっあっ!」と激しい痛みと高熱に襲われ、叫びが漏れる。
(だ、だが、まだ命には届いていない……)
「ならば! —————冬嵐《ヒエムステンペスタス》」
ユウトの狙いは、炎を放った直後の魔剣。 先のゴーレム戦と同様に、高熱からの強制冷却を行い――――
ピキッと金属が異音を鳴らす。
(魔剣だって、元は金属なのに普通の剣と同じはず。なら、これで自壊するはず)
ユウトを前に出る。 この好機を逃せぬと回復すらしていない彼の動きは鈍かったが……
だから、堕天使は剣を振る。 十分にユウトを殺せると判断したのだろう。
だが、そうはならなかった。
向かい来る剣。 むしろ、それを狙って――――
「回避と同時に盾で殴る!」
脆くなった魔剣は、衝撃に耐えきれなかった。 想像よりも簡単に砕け――――
(あっ……こいつ、笑っている。 何か見落としている。罠が仕掛けられているのは)
堕天使は砕けた魔剣を捨てた。
予め、捨てる事を考えていた。そういう動きだ。
一方のユウトは、武器破壊を狙った一撃を放った事で、無防備な姿を見せている。
そのユウトに向かって、堕天使は手刀による刺突を繰り出した。
(――――ッ! コイツ、俺とゴーレムの戦いを見ていたのか? だから、氷結の魔法を使って魔剣を破壊すると分かっていて――――)
接触する直前————ユウトの鎧を貫き、その刺突が肉を斬って内部へ入り込んでいく最中————彼は切り札を切った。
『直線爆破《リーネア・レクタ・イグナイテッド》』
瞬く閃光と衝撃。 硝煙のごとく激しい煙は直撃を受けた堕天使を隠す。
接近戦における爆破魔法。 威力向上に費やした破壊特化の魔法だ。
そして、その魔法は杖による魔法ではない。
手甲に魔石を仕込んでいる事によって、徒手空拳のスピードに対処できる速度で発動できる。
無論、至近距離で爆破魔法を発動したユウトも無事ではないが……
「やったか?」と両手に激しいダメージを負ったユウトは、目前で倒れているはずの堕天使を見えないまま、睨みつけた。
その直後だった。背筋がゾクリと寒気が通り抜けた。
戦いの経験則によるものか? それとも極まった集中力が殺気という存在せぬものまで感じ取ったのか?
(なにかが飛来してくる? 狙いは背後……後頭部か?)
そう考えるよりも早くユウトの体は反応していた。 その場でしゃがみ込むと飛来物————おそらく、堕天使の攻撃を回避。
自分の頭上を高速で通り抜けて行く攻撃。彼はそれを見た。
堕天使が広げた黒い羽。 それを大きく左右に広げる事で、ユウトを迂回するような軌道。 仮に上から見れば、抱きしめるような動きだっただろう。
(なるほど、手で人を貫けるなら、羽でも同じことができてもおかしくないか!)
ユウトは、一気に大きくしゃがみ込んだ。その反動を利用する。
低い体勢で空中で前転。傷ついた両手を使わずに――――既に自分の頭があった場所を通過していった堕天使の羽を加速させるように――――
「行けっ!」と両足で蹴り飛ばした。
その勢いの分だけ、勢いと加速が増した堕天使の羽……その先にいるのは、当然ながら堕天使本人だ。
だから、周囲を覆い隠している煙が霧散していった時————
自ら羽に胸を貫かれている堕天使が立っていた。
「今度こそ……致命傷だな」
およそ助かる傷ではない。 もう堕天使も動きを止めていた。
ユウトは回復薬を取り出し、口に運んだ。
その時だった。
「……だった。 見事だった、人間よ」
誰の声か? わからない。 ただ、堕天使の口が動いている事にユウトは気づく。
「お前、言葉を……まさか、学習したのか? この短時間で?」
「さて、どうだろうな? 今は私を生み出し、育てて、葬った。そんな人間に感謝したい」
「――――」とユウトは言葉がでなかった。 殺してくれたありがとうと言う者に、なんと言葉をかけてやればいいのか? 答えがでてこないからだ。
「私は堕天使。 私は魔導書。 いずれ、新しい私が生まれる事は決まっている。できれば、次の堕天使を生み出すのはあなたの魔導書になる事を――――」
「悪いが、俺は魔導書をそこまで成長させるつもりは――――ない!」
彼は堕天使の声を遮った。 それだけ言うと、まだ喋り足りなそうな堕天使に魔法で――――
とどめを刺した。
『炎剣《イグニスグラディウス》』
その言葉に従って魔剣には炎が灯る。
「こいつ、俺の魔法を学習した!?」
堕天使は魔剣を振る。炎が身に纏った斬撃だ。
初めての攻撃に反応が遅れたユウト。 回避は間に合わない……辛うじて盾で防御する。 しかし、それは無意味だった。
堕天使が繰り出しているのは、間合いを無視する魔剣の技。
盾を通過してユウトの体に2線の太刀筋を刻む。
「ぐっあっ!」と激しい痛みと高熱に襲われ、叫びが漏れる。
(だ、だが、まだ命には届いていない……)
「ならば! —————冬嵐《ヒエムステンペスタス》」
ユウトの狙いは、炎を放った直後の魔剣。 先のゴーレム戦と同様に、高熱からの強制冷却を行い――――
ピキッと金属が異音を鳴らす。
(魔剣だって、元は金属なのに普通の剣と同じはず。なら、これで自壊するはず)
ユウトを前に出る。 この好機を逃せぬと回復すらしていない彼の動きは鈍かったが……
だから、堕天使は剣を振る。 十分にユウトを殺せると判断したのだろう。
だが、そうはならなかった。
向かい来る剣。 むしろ、それを狙って――――
「回避と同時に盾で殴る!」
脆くなった魔剣は、衝撃に耐えきれなかった。 想像よりも簡単に砕け――――
(あっ……こいつ、笑っている。 何か見落としている。罠が仕掛けられているのは)
堕天使は砕けた魔剣を捨てた。
予め、捨てる事を考えていた。そういう動きだ。
一方のユウトは、武器破壊を狙った一撃を放った事で、無防備な姿を見せている。
そのユウトに向かって、堕天使は手刀による刺突を繰り出した。
(――――ッ! コイツ、俺とゴーレムの戦いを見ていたのか? だから、氷結の魔法を使って魔剣を破壊すると分かっていて――――)
接触する直前————ユウトの鎧を貫き、その刺突が肉を斬って内部へ入り込んでいく最中————彼は切り札を切った。
『直線爆破《リーネア・レクタ・イグナイテッド》』
瞬く閃光と衝撃。 硝煙のごとく激しい煙は直撃を受けた堕天使を隠す。
接近戦における爆破魔法。 威力向上に費やした破壊特化の魔法だ。
そして、その魔法は杖による魔法ではない。
手甲に魔石を仕込んでいる事によって、徒手空拳のスピードに対処できる速度で発動できる。
無論、至近距離で爆破魔法を発動したユウトも無事ではないが……
「やったか?」と両手に激しいダメージを負ったユウトは、目前で倒れているはずの堕天使を見えないまま、睨みつけた。
その直後だった。背筋がゾクリと寒気が通り抜けた。
戦いの経験則によるものか? それとも極まった集中力が殺気という存在せぬものまで感じ取ったのか?
(なにかが飛来してくる? 狙いは背後……後頭部か?)
そう考えるよりも早くユウトの体は反応していた。 その場でしゃがみ込むと飛来物————おそらく、堕天使の攻撃を回避。
自分の頭上を高速で通り抜けて行く攻撃。彼はそれを見た。
堕天使が広げた黒い羽。 それを大きく左右に広げる事で、ユウトを迂回するような軌道。 仮に上から見れば、抱きしめるような動きだっただろう。
(なるほど、手で人を貫けるなら、羽でも同じことができてもおかしくないか!)
ユウトは、一気に大きくしゃがみ込んだ。その反動を利用する。
低い体勢で空中で前転。傷ついた両手を使わずに――――既に自分の頭があった場所を通過していった堕天使の羽を加速させるように――――
「行けっ!」と両足で蹴り飛ばした。
その勢いの分だけ、勢いと加速が増した堕天使の羽……その先にいるのは、当然ながら堕天使本人だ。
だから、周囲を覆い隠している煙が霧散していった時————
自ら羽に胸を貫かれている堕天使が立っていた。
「今度こそ……致命傷だな」
およそ助かる傷ではない。 もう堕天使も動きを止めていた。
ユウトは回復薬を取り出し、口に運んだ。
その時だった。
「……だった。 見事だった、人間よ」
誰の声か? わからない。 ただ、堕天使の口が動いている事にユウトは気づく。
「お前、言葉を……まさか、学習したのか? この短時間で?」
「さて、どうだろうな? 今は私を生み出し、育てて、葬った。そんな人間に感謝したい」
「――――」とユウトは言葉がでなかった。 殺してくれたありがとうと言う者に、なんと言葉をかけてやればいいのか? 答えがでてこないからだ。
「私は堕天使。 私は魔導書。 いずれ、新しい私が生まれる事は決まっている。できれば、次の堕天使を生み出すのはあなたの魔導書になる事を――――」
「悪いが、俺は魔導書をそこまで成長させるつもりは――――ない!」
彼は堕天使の声を遮った。 それだけ言うと、まだ喋り足りなそうな堕天使に魔法で――――
とどめを刺した。
0
あなたにおすすめの小説
空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜
くまみ
ファンタジー
前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?
「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。
仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。
病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。
「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!
「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」
魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。
だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。
「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」
これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。
伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる