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第2章
第117話 魔導書大戦の勝者
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「……夢か。懐かしい夢を見た」
モンド王は目を覚ました。それから、異変に気付く。
ここは自身の寝室。
そのはずだった。しかし、今は壁も天井も無くなっている。
破壊の痕跡が荒々しく残っている。 そして、目前には1人の男が立っていた。
「お前は確か……『暴食』のユウト。これはお前の仕業か?」
しかし、問われた本人であるユウトは不思議そうな顔を見せた。それから、
「あぁ、記憶を失っているのか」と1人納得したように頷きながら呟いた。
その様子に、モンド王も記憶が徐々に取り戻してきた。
「そう……であったな。確か、ルオン王子の謀反。それに便乗してお前たちが奇襲を仕掛けてきた」
「随分と思い切った事をするもんだ。国王を狙って城へ奇襲するなんてな」とモンド王は苦笑した。
そう激闘があったのだ。
モンド王の失われた記憶————それは、激戦の連続で、頭部にも大きなダメージを受けていた事が原因だろう。
思い出せば、最初にいたはずのルオン王子や、自身の重臣。それに『憤怒』のインファ……彼等の姿は見えない。
きっと、戦いについていけず、退場していったのだろう。
「ならば……」とモンド王は疑問に思った。
「どうして、お前が最後まで残った? それほどまでの強者だったとは想像もできないのだが?」
「……」とユウトは笑みを浮かべた。
自分の事を『弱いはずなのに、どうやって自分と戦い続ける事ができた?』と聞かれたのだ。返答にも困る。
「これは少し前にあなたに説明した事だが……」とユウトは魔導書を取り出す。
そこから読み取れるのは、膨大な魔力。 明らかに以前の彼の魔力とは違う。
「俺がやって事は単純さ。みんなと話し合って、相談して、説得して、納得してもらった」
「――――ッ 貴様、まさか……成し得たのか?」
「そうです。俺が、魔導書大戦の優勝者だ」
・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・
「君たちは本当に王に、あれになりたいのか?」
決戦の前にユウトは1人1人に訪ねる。
『嫉妬』のグリムロックは知らない間に倒されていた。
『強欲』は名前も知らない。 魔導書の危険性を知らせるために自ら命を絶った。
『怠惰』のルオン王子は、『憤怒』に倒された。
7人の参加者の中、3人は倒された。
残っているのは、4人————
『怠惰』のレイン
『色欲』のメリス
『憤怒』のインファ
そして、最後の1人は――――『暴食』のユウト。
その問いに最初に答えたのメリスだった。
「あらためて聞かれると……私は別に王さまになりたいわけじゃないわね」
メリスは、手にした魔導書を地面に落とした。
「本当に良いのか、メリス?」
「私がエルフの里を飛び出したのも、幼さと世界への興味だったわ。今は、姉さんと一緒に遊んでいるのが楽しいのよね……それに」
「それに?」
「それに、魔導書大戦の勝者が王となって、永遠に近しい時間を生きる……くだらないわ。少なくとも私たちエルフに取ってね」
そう言って彼女は、落とした魔導書に火をつけた。
「魔導書の力、貴方に譲渡します。後は頼んだわよ、ユウト・フィッシャー」
「あぁ、任せられたよ」とユウトは、彼女の魔導書から魔力が移って来る感覚を得た。
次に視線の先に立っていたのは――――
「私は嫌よ」とレインは言った。
「私は人を操る事が好き。お金が好き。権力が好き。美しい私を称えて欲しい」
「――――お前、なんで冒険者をしてたんだ」
「え?」とレインは膠着した。
「私が冒険者になった理由は――――そうね。名誉、富、男……それらを手に入れるのに手っ取り早かったからかな?」
「気づいていないのか? 今、冒険者に戻れば、お前はA級冒険者のまま……普通に、名誉、富、男は手に入る」
「……冒険者に戻って命賭けの生活をしろと?」
「命賭けなのは、今と変わらないだろ? ついでに、今は国を敵に回してる。このまま、俺たちも敵に回すか?」
「ねぇ? 気づいている? それって脅迫よ?」
「――――」とユウトは杖を強く握った。
「貴方の目的は、私の従者であるミカエルを解放することでしょ? なら、良いわよ。対処の意識を支配する……理想の関係とは違った」
彼女は、魔力を発動する。 魔法陣が浮き上がり、そこから出現したのはミカエルだった。
「私は彼を解放する。……これでいいかしら?」
レインは、自身の魔導書に火をつけて捨てた。
支配から解放されたミカエル。 彼は酷く衰弱していた。
「大丈夫か、ミカエル?」
「お前は……ユウト? 俺は一体……」
「しばらく、休めた方がいいわよ。魔力で無理やり強化していた分、魔導書の力がなくなって消耗してるわ」
それだけ言って、彼女————レイン・アーチャーは去って行った。
そして、最後に残った魔導書使いは――――『憤怒』のインファだった。
彼は――――「実を言えば、俺はどうでもいい」
そんな意外な事を言った。
「俺は強さを常に求めている。魔導書を使う————それがこの戦いの規定だった。だから、使ったに過ぎない。
もしも、この戦いが剣の戦いなら? もしも、この戦いが魔法の戦いなら?
俺は違う規定でも、最強になれた」
「だが……」と彼は、こう続けた。
「この戦いが茶番なら、モンド王が勝つように仕組まれていたなら……神を自称する男が遊戯を目的としているのならば、俺はソイツ等を倒す」
モンド王は目を覚ました。それから、異変に気付く。
ここは自身の寝室。
そのはずだった。しかし、今は壁も天井も無くなっている。
破壊の痕跡が荒々しく残っている。 そして、目前には1人の男が立っていた。
「お前は確か……『暴食』のユウト。これはお前の仕業か?」
しかし、問われた本人であるユウトは不思議そうな顔を見せた。それから、
「あぁ、記憶を失っているのか」と1人納得したように頷きながら呟いた。
その様子に、モンド王も記憶が徐々に取り戻してきた。
「そう……であったな。確か、ルオン王子の謀反。それに便乗してお前たちが奇襲を仕掛けてきた」
「随分と思い切った事をするもんだ。国王を狙って城へ奇襲するなんてな」とモンド王は苦笑した。
そう激闘があったのだ。
モンド王の失われた記憶————それは、激戦の連続で、頭部にも大きなダメージを受けていた事が原因だろう。
思い出せば、最初にいたはずのルオン王子や、自身の重臣。それに『憤怒』のインファ……彼等の姿は見えない。
きっと、戦いについていけず、退場していったのだろう。
「ならば……」とモンド王は疑問に思った。
「どうして、お前が最後まで残った? それほどまでの強者だったとは想像もできないのだが?」
「……」とユウトは笑みを浮かべた。
自分の事を『弱いはずなのに、どうやって自分と戦い続ける事ができた?』と聞かれたのだ。返答にも困る。
「これは少し前にあなたに説明した事だが……」とユウトは魔導書を取り出す。
そこから読み取れるのは、膨大な魔力。 明らかに以前の彼の魔力とは違う。
「俺がやって事は単純さ。みんなと話し合って、相談して、説得して、納得してもらった」
「――――ッ 貴様、まさか……成し得たのか?」
「そうです。俺が、魔導書大戦の優勝者だ」
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「君たちは本当に王に、あれになりたいのか?」
決戦の前にユウトは1人1人に訪ねる。
『嫉妬』のグリムロックは知らない間に倒されていた。
『強欲』は名前も知らない。 魔導書の危険性を知らせるために自ら命を絶った。
『怠惰』のルオン王子は、『憤怒』に倒された。
7人の参加者の中、3人は倒された。
残っているのは、4人————
『怠惰』のレイン
『色欲』のメリス
『憤怒』のインファ
そして、最後の1人は――――『暴食』のユウト。
その問いに最初に答えたのメリスだった。
「あらためて聞かれると……私は別に王さまになりたいわけじゃないわね」
メリスは、手にした魔導書を地面に落とした。
「本当に良いのか、メリス?」
「私がエルフの里を飛び出したのも、幼さと世界への興味だったわ。今は、姉さんと一緒に遊んでいるのが楽しいのよね……それに」
「それに?」
「それに、魔導書大戦の勝者が王となって、永遠に近しい時間を生きる……くだらないわ。少なくとも私たちエルフに取ってね」
そう言って彼女は、落とした魔導書に火をつけた。
「魔導書の力、貴方に譲渡します。後は頼んだわよ、ユウト・フィッシャー」
「あぁ、任せられたよ」とユウトは、彼女の魔導書から魔力が移って来る感覚を得た。
次に視線の先に立っていたのは――――
「私は嫌よ」とレインは言った。
「私は人を操る事が好き。お金が好き。権力が好き。美しい私を称えて欲しい」
「――――お前、なんで冒険者をしてたんだ」
「え?」とレインは膠着した。
「私が冒険者になった理由は――――そうね。名誉、富、男……それらを手に入れるのに手っ取り早かったからかな?」
「気づいていないのか? 今、冒険者に戻れば、お前はA級冒険者のまま……普通に、名誉、富、男は手に入る」
「……冒険者に戻って命賭けの生活をしろと?」
「命賭けなのは、今と変わらないだろ? ついでに、今は国を敵に回してる。このまま、俺たちも敵に回すか?」
「ねぇ? 気づいている? それって脅迫よ?」
「――――」とユウトは杖を強く握った。
「貴方の目的は、私の従者であるミカエルを解放することでしょ? なら、良いわよ。対処の意識を支配する……理想の関係とは違った」
彼女は、魔力を発動する。 魔法陣が浮き上がり、そこから出現したのはミカエルだった。
「私は彼を解放する。……これでいいかしら?」
レインは、自身の魔導書に火をつけて捨てた。
支配から解放されたミカエル。 彼は酷く衰弱していた。
「大丈夫か、ミカエル?」
「お前は……ユウト? 俺は一体……」
「しばらく、休めた方がいいわよ。魔力で無理やり強化していた分、魔導書の力がなくなって消耗してるわ」
それだけ言って、彼女————レイン・アーチャーは去って行った。
そして、最後に残った魔導書使いは――――『憤怒』のインファだった。
彼は――――「実を言えば、俺はどうでもいい」
そんな意外な事を言った。
「俺は強さを常に求めている。魔導書を使う————それがこの戦いの規定だった。だから、使ったに過ぎない。
もしも、この戦いが剣の戦いなら? もしも、この戦いが魔法の戦いなら?
俺は違う規定でも、最強になれた」
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