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第9話 ミゲール・コット
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「あっ! 飛び降りました」とアリス。
しかし、彼女は驚かなかった。 アリス自身も風の紋章を持つ魔法使い。
幼いなりに飛行魔法を身に付け、高所から飛び降りても無事に着地できる。
「ミゲールさんも風の紋章を持っているのですね」
「いえ、彼女の魔法属性は地。地の紋章の持ち主です」
「え? でも……」と、落下してくるミゲールを見た。
彼女は、自由落下では時間が惜しいと言わんばかりに、落下しながらも城の壁を蹴り――――落下速度を加速させていた。
まるで垂直な壁を全力疾走で駆け抜けているように見えた。
「大丈夫なのですか、あれ? 地の魔法で地面を柔らかくクッションにしても無事とは思えないのですが……」
「あ、大丈夫。大丈夫……彼女、体が丈夫だから」
「?」とアリスは意味がわからなかった。 それでは、まるで――――
(それって、まるで魔法なんて使わず着地をするみたいな言い方じゃないの?)
「アリス、もう少し下がった方がいいわよ。少し、強めの衝撃が来るわ」
「え?」と益々困惑する彼女だったが、素直にモズリー先生が手招きする場所まで移動した。
――――その直後である。
爆発と勘違いするような衝撃。 それにより地震が、大地が揺れた。
ミゲールが生身のまま、地面と衝突したのだ。
土煙が立ち昇り、ミゲールがどうなったのか? 無事であるはずが――――
「よう! モズリー! ようやく来たな。早速、戦おうぜ!」
「私は戦うために来たのではありません」とモズリー先生はため息交じりに答えた。
その様子に混乱するアリスだったが、
「アリス、彼女には常識が通用しません。いいですか? 何が起きても冷静さを失わないように」
教師らしい言葉に「はい!」と答える彼女だったが、冷静でいられる自信はすでになくなっていた。
「あんだよ? 戦いに来たわけじゃないって何のために来たんだ?」
「あなたがアリスを指導するのに、面談をしたいから来たって連絡を入れたじゃないですか。あなた、どれだけ戦闘狂なのですか?」
「あん? そう言えば、そんな話もあったよね。なんだよ、勝ち逃げならぬ負け逃げかよ。もう私と対等に戦える魔法使いの心当たりはお前しかいないんだ。戦うぜ!
いや――――戦え!」
「よく言いますね『世界最強の魔法使い』なんて言われているアナタが、私なんかと戦って楽しめることなんて――――」
「自分を偽るなよ」
ミゲールが放つのは純度の高い殺気。 それだけで人を殺せるほどに――――強い。
「攻撃魔法なら、模擬戦なら、実戦なら、これが戦争なら……何度、私がお前と比較されてきたと思う? 何が『世界最強の魔法使い』だ……そんな称号が誇れる日が来るとしたら――――お前を倒した日だ」
「いや、どんだけ私を持ち上げているのですか? 私の評価高すぎません?」
「そうやって誤魔化すのも相変わらずうまいな」
「――――」とモズリーは言葉を止めた。 もう戦いを止められない。
覚悟を決めた瞬間だったが――――
「それで、この子は何やってるんだ?」とミゲール。
見ると、アリスは風魔法を使って透明な椅子を作り、腰をかけている。
彼女の表情から、「ワクワク」と擬音が聞こえてきそうな期待感が伝わってくる。
その様子にミゲールは――――
「チッ」と舌打ち。それから「毒気が抜かれちまうぜ」とモズリーへの敵意を止めた。
「それで、コイツか? 私の弟子にしたいって子供は?」
「はい、アリス・マクレイガーです。よろしくお願いしますミゲール先生!」
「うん、悪くねぇぞ。先生扱いされるのも……いいぞ。テストしてやるからついて来い!」
しかし、彼女は驚かなかった。 アリス自身も風の紋章を持つ魔法使い。
幼いなりに飛行魔法を身に付け、高所から飛び降りても無事に着地できる。
「ミゲールさんも風の紋章を持っているのですね」
「いえ、彼女の魔法属性は地。地の紋章の持ち主です」
「え? でも……」と、落下してくるミゲールを見た。
彼女は、自由落下では時間が惜しいと言わんばかりに、落下しながらも城の壁を蹴り――――落下速度を加速させていた。
まるで垂直な壁を全力疾走で駆け抜けているように見えた。
「大丈夫なのですか、あれ? 地の魔法で地面を柔らかくクッションにしても無事とは思えないのですが……」
「あ、大丈夫。大丈夫……彼女、体が丈夫だから」
「?」とアリスは意味がわからなかった。 それでは、まるで――――
(それって、まるで魔法なんて使わず着地をするみたいな言い方じゃないの?)
「アリス、もう少し下がった方がいいわよ。少し、強めの衝撃が来るわ」
「え?」と益々困惑する彼女だったが、素直にモズリー先生が手招きする場所まで移動した。
――――その直後である。
爆発と勘違いするような衝撃。 それにより地震が、大地が揺れた。
ミゲールが生身のまま、地面と衝突したのだ。
土煙が立ち昇り、ミゲールがどうなったのか? 無事であるはずが――――
「よう! モズリー! ようやく来たな。早速、戦おうぜ!」
「私は戦うために来たのではありません」とモズリー先生はため息交じりに答えた。
その様子に混乱するアリスだったが、
「アリス、彼女には常識が通用しません。いいですか? 何が起きても冷静さを失わないように」
教師らしい言葉に「はい!」と答える彼女だったが、冷静でいられる自信はすでになくなっていた。
「あんだよ? 戦いに来たわけじゃないって何のために来たんだ?」
「あなたがアリスを指導するのに、面談をしたいから来たって連絡を入れたじゃないですか。あなた、どれだけ戦闘狂なのですか?」
「あん? そう言えば、そんな話もあったよね。なんだよ、勝ち逃げならぬ負け逃げかよ。もう私と対等に戦える魔法使いの心当たりはお前しかいないんだ。戦うぜ!
いや――――戦え!」
「よく言いますね『世界最強の魔法使い』なんて言われているアナタが、私なんかと戦って楽しめることなんて――――」
「自分を偽るなよ」
ミゲールが放つのは純度の高い殺気。 それだけで人を殺せるほどに――――強い。
「攻撃魔法なら、模擬戦なら、実戦なら、これが戦争なら……何度、私がお前と比較されてきたと思う? 何が『世界最強の魔法使い』だ……そんな称号が誇れる日が来るとしたら――――お前を倒した日だ」
「いや、どんだけ私を持ち上げているのですか? 私の評価高すぎません?」
「そうやって誤魔化すのも相変わらずうまいな」
「――――」とモズリーは言葉を止めた。 もう戦いを止められない。
覚悟を決めた瞬間だったが――――
「それで、この子は何やってるんだ?」とミゲール。
見ると、アリスは風魔法を使って透明な椅子を作り、腰をかけている。
彼女の表情から、「ワクワク」と擬音が聞こえてきそうな期待感が伝わってくる。
その様子にミゲールは――――
「チッ」と舌打ち。それから「毒気が抜かれちまうぜ」とモズリーへの敵意を止めた。
「それで、コイツか? 私の弟子にしたいって子供は?」
「はい、アリス・マクレイガーです。よろしくお願いしますミゲール先生!」
「うん、悪くねぇぞ。先生扱いされるのも……いいぞ。テストしてやるからついて来い!」
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