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ミゲール先生の魔法を見ました

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そんなやりとりもありながら――――

「さて、話を戻すぜ、アリス。いや――――何の話だったかな?」

「攻撃魔法は取得していない……そういう話でした」

「おぉ、記憶力が良いな。弟子にするなら、そういうところポイント高い」

(この人、そうやって話を脱線させるから、会話が続かず本題にたどり着かないのでは?)

「おっ! 私に低評価を下したって顔してるぜ。これはマイナスポイント……いや、お前の言うことも正しいな。確かに私は話を脱線しがちだ」

「私は何も言ってませんよ!?」

「そんなに驚くなよ、心を読んだだけだ。魔法を使わなくても、なんとなくわかる。こいつはただの特技だ」

「……」

「いいね。心を読まれないように、まずは無言を貫くのは基本だぜ」

 こんな話を脱線するような会話を何度も繰り返して――――

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

「おしっ! そんじゃルールを教えるぞ」

 ようやく、試験のルールが決まった……らしい。

「私の弟子になるってことは一緒に世界を回るってことだ。私は、国が定めた立ち入り禁止の危険地域でも散歩したりするから――――要するに試験は自分の身を自分で守られるかってやつだ」

「防御魔法の試験ってことですか?」

「それだ、それ! 今から少しばかり私が攻撃を仕掛ける。どんな方法を使っても良いから全力で防御してみろ」

「わかりました」とアリスは、魔力を練る。 手に刻まれた風の紋章に光が灯る。

 彼女の魔力は風に変換されていく。身を守る防御壁として、彼女の全身を覆い隠した。

「へぇ、結界魔法か。発動まで短時間で詠唱もなし――――いい練度じゃねぇか」

「ありがとうございます」

「だが、それじゃダメだ。全然、ダメダメだぜ?」

「え?」

「そんじゃ私も少しだけ本気を見せちゃうぜ!」

 ミゲールは地の紋章を光らせる。 しかし、彼女は地属性の魔法を使用しなかった。それどころか――――

「魔法の属性紋章が変化していく」

「素直に驚いてくれて嬉しいぜ。紋章は、火、水、地、風が有名だが、それで終わりじゃねぇ。こいつを極めると本人の特性に応じて、もう一段変化する!」

 ミゲールの紋章。 それは変化を終え、見たこともない形状のもの――――見たこともない属性へ変化と遂げていた。

「変化させた私の属性は――――獣。獣の紋章だ!」

 ――――いや、変化は紋章だけでは終わっていなかった。 彼女の体にも変化が始まった。

「私の本業、宮廷魔法使いとしての仕事は、魔物の研究だ。 戦士の名言にもあるだろ? 

『人間は強靭な魔物に素手じゃ勝てない。じゃどうする? なってしまえばいい。魔物に』

 私はそれを叶えたわけだ!」

 ミゲールの体は変化を終えた。 変身した姿、それは――――

「どうだい? 可愛くてエロいだろう? 子猫ちゃんだぞ」
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