12 / 42
第12話 ミゲール先生の変身魔法
しおりを挟む
「どうだい? 可愛くてエロいだろう? 子猫ちゃんだぞ」
獣人化――――それも獰猛な猫科を連想させる。無防備に近づく者を無慈悲に噛み殺す。そんな危険なイメージを……
「最初から種明かしをすると獣人化以外にも、いろいろと変身できるわけなんだけど、こいつに変身すると精神が高ぶって、少しだけ攻撃的になるんだぜ?」
その圧力。 これが『世界最強の魔法使い』と言われる人物の変身魔法。
アリスは思わず、後ろに下がりそうになるが、踏みとどまった。
(この魔法は、私の全力。他ならないモズリー先生が教えてくれたもの。先生が止めないってことは、私の防御がミゲール先生に通用するってこと!)
それは奇跡のような光景だ。 まだ10歳にも満たない少女が、世界最強を前に一歩も引かない。
魔導を研究する者が、この光景を見れば、どれほど驚愕するだろうか?
しかし――――
「……」とミゲールは動かない。
様子見をしてるわけでもないようだが、不気味なほどに微動だにしない。
あまりにも動かないのでアリスの方が痺れを切らす。
「あの……攻撃するのでは?」
「いや、私がお前の防御壁を見た時、『ダメだ』って言った意味がわかるか?」
「えっと……いえ、すいません。わかりません」
「お前の防御魔法は出力が多き過ぎる。それを長時間維持できるわけがない」
「――――ッ!(まさか、そんな考えがあるなんて!)」とアリスは驚いた。
「わかったみたいだな。実戦の防御魔法の使いどころってのは常時使用するわけにはいかない。攻撃魔法みたいに一瞬で魔力を込めた1撃を放つのとは、魔力消費がわけが違う」
「……」
「わかったみたいだな。私はお前に攻撃しない。する必要がないからな……待ってれば、数分で全部の魔力が消費されて――――あれ? 待てよお前……全然、魔力が消費されてなくないか?」
「申し訳ないのですが……このくらいの結界魔法なら3日は維持できるので」
「……はぁ?」と今度はミゲールが驚く順番だった。
「3日! 3日も結界魔法を使用したまま、生活できるってか? それって、もう家じゃねぇか! おい、モズリー! お前、弟子にどういう教育してるんだ?」
「どう……と言われましてもね」とモズリーは答える。
「マクレイガー公爵の頼みは、攻撃魔法を教えない代わりに身を守る魔法を徹底的に教えて欲しいという話でしたので……自然と防御魔法の練習が長時間になってしまったのです」
「長い時間練習したからって、スタミナの怪物に育ってしまってるじゃねぇか!」
「……と言う事は、合格でいいですか? ミゲール先生!」とアリスは喜んだ。
「仕方がねぇ。魔法使いに二言はない。ちょうど荷物運びや移動手段に便利な風属性の弟子が欲しかったってのもあるからな」
そう言いながら、ミゲールは変身魔法を解除した。
獣人に変身したことで元の服装は破れて、あられもない姿になったが本人は気にしていない……それどころか自慢するように体を見せつけている節すらあった。
「けど、こっちは曲りなりに『世界最強の魔法使い』って看板を背負っている身だ。もう少しだけ、ミゲール・コットの強い部分を新弟子に見せつけとかないといけないだろ?」
そう言うと、まだ防御魔法を展開し続けているアリスの前に立った。
「まだ、その魔法を解除するなよ。こういう相手に私がどうするのか、見せつけてやるよ!」
そう言うと彼女は身を低くして、握った拳を構えた。
獣人化――――それも獰猛な猫科を連想させる。無防備に近づく者を無慈悲に噛み殺す。そんな危険なイメージを……
「最初から種明かしをすると獣人化以外にも、いろいろと変身できるわけなんだけど、こいつに変身すると精神が高ぶって、少しだけ攻撃的になるんだぜ?」
その圧力。 これが『世界最強の魔法使い』と言われる人物の変身魔法。
アリスは思わず、後ろに下がりそうになるが、踏みとどまった。
(この魔法は、私の全力。他ならないモズリー先生が教えてくれたもの。先生が止めないってことは、私の防御がミゲール先生に通用するってこと!)
それは奇跡のような光景だ。 まだ10歳にも満たない少女が、世界最強を前に一歩も引かない。
魔導を研究する者が、この光景を見れば、どれほど驚愕するだろうか?
しかし――――
「……」とミゲールは動かない。
様子見をしてるわけでもないようだが、不気味なほどに微動だにしない。
あまりにも動かないのでアリスの方が痺れを切らす。
「あの……攻撃するのでは?」
「いや、私がお前の防御壁を見た時、『ダメだ』って言った意味がわかるか?」
「えっと……いえ、すいません。わかりません」
「お前の防御魔法は出力が多き過ぎる。それを長時間維持できるわけがない」
「――――ッ!(まさか、そんな考えがあるなんて!)」とアリスは驚いた。
「わかったみたいだな。実戦の防御魔法の使いどころってのは常時使用するわけにはいかない。攻撃魔法みたいに一瞬で魔力を込めた1撃を放つのとは、魔力消費がわけが違う」
「……」
「わかったみたいだな。私はお前に攻撃しない。する必要がないからな……待ってれば、数分で全部の魔力が消費されて――――あれ? 待てよお前……全然、魔力が消費されてなくないか?」
「申し訳ないのですが……このくらいの結界魔法なら3日は維持できるので」
「……はぁ?」と今度はミゲールが驚く順番だった。
「3日! 3日も結界魔法を使用したまま、生活できるってか? それって、もう家じゃねぇか! おい、モズリー! お前、弟子にどういう教育してるんだ?」
「どう……と言われましてもね」とモズリーは答える。
「マクレイガー公爵の頼みは、攻撃魔法を教えない代わりに身を守る魔法を徹底的に教えて欲しいという話でしたので……自然と防御魔法の練習が長時間になってしまったのです」
「長い時間練習したからって、スタミナの怪物に育ってしまってるじゃねぇか!」
「……と言う事は、合格でいいですか? ミゲール先生!」とアリスは喜んだ。
「仕方がねぇ。魔法使いに二言はない。ちょうど荷物運びや移動手段に便利な風属性の弟子が欲しかったってのもあるからな」
そう言いながら、ミゲールは変身魔法を解除した。
獣人に変身したことで元の服装は破れて、あられもない姿になったが本人は気にしていない……それどころか自慢するように体を見せつけている節すらあった。
「けど、こっちは曲りなりに『世界最強の魔法使い』って看板を背負っている身だ。もう少しだけ、ミゲール・コットの強い部分を新弟子に見せつけとかないといけないだろ?」
そう言うと、まだ防御魔法を展開し続けているアリスの前に立った。
「まだ、その魔法を解除するなよ。こういう相手に私がどうするのか、見せつけてやるよ!」
そう言うと彼女は身を低くして、握った拳を構えた。
0
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる