魔法令嬢アリスは星空に舞いたい

チョーカ-

文字の大きさ
13 / 42

第13話 入門テスト合格したようです

しおりを挟む
 ミゲールはゆっくりと動く。素手でアリスの結界に――――

「あっ、危ないですよ!」

 思わず彼女は声に出した。

 彼女の魔法は防御専門。攻撃魔法はない。

 ……とは言え、彼女の結界は魔力を流した風によって攻撃を弾く物。

 それは高速で動き回る風。

 不用心に素手で触れれば、傷を負うのは当然と言える。

 しかし――――

「大丈夫だ。私を誰だと思ってやがる?」とミゲールはアリスの結界に手を触れた。

 彼女の言葉とは裏腹に皮膚があっさりと切れる。

 流血。

 触れた指先から流れた血液が、アリスの結界に――――魔法の風に混ざって行く。

「こ、これは!」と彼女は自分の結界が赤く染まって行くのに驚いた。

(これは魔法媒体ですね。日常的に身に付けて物に魔力を流し続けることで、大規模な魔法が使用可能になる……ミゲール先生の血液そのものなら、その魔力はどれほどのものになるのかしら?)

 アリスは確信していた。相手は『地上最強の魔法使い』と呼ばれる存在。

 自分の結界魔法が必ず破壊されるほどの凄い魔法が執行される……と。 

 しかし――――

「悪いが、期待してる事は起きねぇよ。このくらいの結界魔法――――素手で殴り壊す!」

 ミゲールが行った事は単純だった。結界魔法を――――ぶん殴った!

 ただのパンチ。それだけ、それだけで――――

「わ、私の結界魔法が崩壊していきます」

 アリスの周囲を守っていた風の魔法に大穴が開く。 そこを中心に魔力の流れが乱れると、結界は消滅していった。

「どうでぇ? 魔法使いに大切なのは魔力とか魔法じゃない! それを使うために鍛えられた肉体だ!」

 それは、病弱な幼少期を過ごし、大人になるまで生きれないと言われたアリスにとって致命的とも思える言葉なのだが……

「す、すごい! 私もそれできるようになります?」

「あぁ、もちろんだぜ。私の弟子になったからには、教えれることは教えるつもりだぜ」

 ミゲールとアリス。 

 意外と脳筋タイプの両者のやり取り。 離れて見ていたモズリーは「やれやれ」と言葉と共に、ため息をついた。

 こうして、アリスはミゲール・コットの弟子となった。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

 ミゲール門徒への入門試験。

 無事、合格!

 合格となったアリスは王城で予想外の人物とである。

「あれ? アリス! アリスじゃないか!」

 そう言って駆け寄って来るのはクロだった。 

「あれ? クロ! どうしてここにいるの?」

「どうして……ここは俺の家だぞ?」

 彼は冗談交じりのように答えた。その言葉に――――

 「あっ! そうか!」とアリスは思い出した。

 ここは王城。ならば、王位継承権のあるクロ――――エドワード・オブ・ブラックの家である。

「そうか、クロって王子様だもんね!」

「王子様……そういうガラでもないと思うけど」

 そんな2人のやり取り。 興味深そうにニヤニヤと見ていたミゲール。

「こいつは面白そうだぜ」と割り込んできた。

「なんだい、アリス。魔法剣士の王子とは知り合いだったのか?」

 宮廷魔法使いであるはずのミゲールの印象は、クロにとっても良くないものらしく、

「ゲッ! ミゲール・コット」

 そう言いながら、一歩下がっていた。 しかし、ミゲール本人は気にしていない様子――――と言うよりも慣れているのかもしれない。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』

しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。 どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。 しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、 「女は馬鹿なくらいがいい」 という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。 出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない―― そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、 さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。 王太子は無能さを露呈し、 第二王子は野心のために手段を選ばない。 そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。 ならば―― 関わらないために、関わるしかない。 アヴェンタドールは王国を救うため、 政治の最前線に立つことを選ぶ。 だがそれは、権力を欲したからではない。 国を“賢く”して、 自分がいなくても回るようにするため。 有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、 ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、 静かな勝利だった。 ---

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

処理中です...