VTuberでもできるダンジョン配信!

チョーカ-

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第2話 黒瀬大河 ≠ 獅堂ライガ

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 俺、黒瀬大河はVTuberである。  

 VTuberとして活動する名前は獅堂ライガ。『たけプロ』という事務所に所属している企業VTuberである。

 さて……今の時代、VTuberの説明は必要だろうか? 

 何かと形式美を重んじる業界だ。事細かに説明するとルール違反やマナー違反に触れてしまうが、どうか許して欲しい。

 簡単に言ってしまうと、バーチャルなユーチューバーを組み合わせてVTuber。

 アニメや漫画のような姿───キャラクターで配信をする者だ。  

 口の動きや表情、画面上の分身が再現する。 要するに理想の自分が再現されるシステムなわけだ。

 俺も様々な事務所のオーディションを受けて、どうにか『たけプロ』に合格。

 憧れのVTuberデビューを華々しく飾った……わけだが……

「やっぱり、まずいよなぁ。 チャンネル登録者数3000人って」

 個人勢───企業に属せず、個人で配信をする者───3000人なら、成功と言えるだろう。

 しかし、俺は企業のバックアップを受けているVTuberだ。 大手の事務所所属だと、初配信から1万人以上の登録者数になってたりする。

 中にはデビュー半月で100万人登録者数を突破した伝説の人物もいる。 

「最近だと、デビュー前からショート動画を投稿し続けて、初配信には9万人なんて新人も出てきたらしいからなぁ……」

 ちなみには俺は、デビューして1年が経過している。 

 もう新人とは言えない活動歴(VTuberいつまで新人なのか問題なんてものがあるが……)だ。

 そんな事を考えていると、通話アプリに連絡があった。

 名前を見ると岡京さん───俺の担当マネージャーであり、たけプロの技術開発の仕事をしている人だ。

「もしも、岡京さん? 例の件ですか?」

「はい、ライガさん。お待ちかねのシステムが完成しました」

「おぉ!」とガッツポーズを取る。 

 俺と岡京さんで考えた起死回生の一手。 それが完成したのだ。

「でも、本当に良いのですか?」と岡京さんは続ける。

「これって、社長にも秘密なんですよね? 怒られませんか?」

「ん~ そりゃ怒られますね」

 俺は断言した。 

 社長は所属タレントを大切にしている人だ。 

 売れるため、話題づくりのため、そのために俺が危険な事をしようとしているなら、必死に止めるだろう。 泣きながら、足に縋り付いてくる光景が目に浮かぶ。

「でも、岡京さん。矛盾してかもしれないけど───社長を怒らせてでも喜ばせたいと思わないかい?」

「~~~っ! わかりました。この岡京は、社長とライガさんのためならば、やってやりますぞ!」

「そうこないと!」

 俺と岡京さんは、盛り上がった。

 そして、日時が経過。 俺の企画した配信が始まる。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・ 

 サムネ、配信前の画面には俺の黒い影。それに「新企画を始めます!」と大きく書かれている。

『新企画と聞いて!』

『わくわく!』

『もしかして、新衣装ですか?』 

 配信を見ている人のコメントが画面の端に流れて俺にも見えるようになったいる。

 コメントは凄い盛り上がっている。

 同時接続者数。つまりリアルタイムで視聴してくれている人は100人近く……チャンネル登録者数3000人では決して少なくない数だ。 

 俺、黒瀬大河の分身───獅堂ライガの配信が始まった。

「よぉ! たけプロ所属1年、獅堂ライガが配信を始めるぜ!」

 実物の俺とは似ても似つかぬ、派手なイケメンだ。

 イメージカラーは赤と黄色。 衣装もそうだが、赤髪に金眼が特徴的。 

 そして、八重歯……ケモノ耳こそないが、獣人のよう姿。

 これがもう1人の俺である獅堂ライガだ。
 
 普段はダウナーでやる気がないと言われている俺だが、獅堂ライガとして配信する時は、荒々しく粗暴な感じになっている。

『きちゃ!』

『きちゃ!』

『おはこんばんわ!!!』

「それじゃ、サムネでわかるように新企画を行います!」 
 
 そう宣言すると、俺の姿に変化が起きる。

『え? ライガくん!?』

『嘘やろ! お前、いきなり3Dお披露目する奴がいるかよ!』

『告知なし!? まじ!?』

『ちょっと! もう無理なんですけどおぉ! スパチャを送らせてよおぉぉ!』   

 いつもの俺の姿は変化した。 

 普段の俺は2Dのキャラ。 イラストが動いているような感じだ。

 しかし、今の俺は3D。 立体的になり、顔だけではなく体の動きまで再現できるようになったのだ。

 ちなみにVTuberの3D化に必要な額は数百万円。 

 会社には秘密。岡京さんにお金を払って作って貰った。

「みんな、ここからが新企画の本番だぞ!」

 さらに背景が変わった。 

『はぁ? ダンジョン?』

『何でダンジョン? 撮影してるの?』

 みんなの反応が良い。 同時接続者数も大幅に増えてる。

 『これどうやってるの? ダンジョンに機材やスタッフを連れて配信してるの???』      

「良い質問だねぜ。今、ダンジョンに俺は1人でいる」

『???』

 コメント欄は疑問符に溢れている。これは想定通り、説明を続けた。

「AR技術ってわかるかい? 日本語では現実拡張で、正式にはオーグメンテッド・リアリティ……だったはず」

 必死になって暗記したけど、間違ってないよな。

 するとコメントでARについて補強してくれる人が出てきた。

『位置情報ゲームで使われるやつだ!』

『スマホのカメラを使って現実世界にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術のこと……だったはず』

 ん~ これは俺の方で台本を用意しておくべきだったかな?

 まぁ、いいや。続けてしまえ!

「これの技術によって、俺はVTuberの体で現実のダンジョンに来ることができた」

「さらに!」と俺は指を鳴らす。

 すると、撮影されているダンジョンに変化が起きた。

 本物のダンジョンだったはずの場所に映像加工が入り、アニメやゲームの舞台のように変わっていく。

『何これ!すげぇ!』

『いや、ARの説明を詳しく!』
 
『たけプロ名物の謎技術だ』

『おいおい! 岡おじが、過労死しちまうぞ』

「こうやって、俺みたいなVTuberがいても違和感がないように、ダンジョンの情報を書き換えました!」

 コメントでは賛辞の声が上がる。でも、俺にとっては賭けだった。

 ダンジョンで怪物と戦って、怪物を殺す。この行為に抵抗を感じる視聴者もいるだろう。

 その忌諱感を和らげるクッションとして、リアルタイムでの映像加工を行ってたのだ。

 ちなみに、映像は俺が少し離れた場所に飛んでいるドローンくんによって撮影されている。

 それをスタッフ───岡京さんが、事前に準備しているダンジョンやモンスターを元に半自動で映像加工が施されていくのだ。
 
「さて、それじゃ早速、ダンジョンを探索していくぞ!」

 ダンジョン探索。 簡単に言ってみたが、そんなに簡単にモンスターは……いや、いる。

「みんな、わかるか? あの曲がり角の先……いるぜ?」

『え? なになに?』

『いや、何もわからんが?』

『お前には、何が見えてるんだよwwww』

 俺は地面を指した。 そこには薄っすらと足跡が残っている。

「これはゴブリンの足跡だ。それが3つ……この先に足音が聞こえている」

『うっそだぁ!』

『絶対、適当だろw』

『これはゴブリンの足跡(キリっ!』

 う~ん、冗談のように思われたか。 本当なのにな……

 それじゃ、いきますか! 俺は駆け出す。

 その勢いでジャンプ。 足から壁に貼り付く。

 ゴブリンたちは、やはり3匹。 俺を待ち伏せしていたのだろうが、残念ながら奇襲は失敗。

 俺が想定外の挙動を見せたために、ゴブリンたちは驚き、動きが膠着している。

「よし、まずは準備運動をさせてもらう!」

 手刀。 高速で叩き込み、最初の1匹を処理した。

 続けて2匹目を蹴り飛ばし、3匹目を地面に叩きつけた。

「まぁ、こんな感じかな?」

『はぁ!? 何したの今の!?』

『さ、三角跳び!? 大山倍達かよ!?』

『古いわ! 今は若島津だぜ』

『両方古いわ! ってか、速すぎねぇ? 普通のダンジョン配信者の動きじゃなかったぞ』

 おっと、これはマズい。 変に隠して、知られたくない部分(VTuberなら知られたくない事はたくさんあるわけで)まで探られる事になるかもしれない。

 俺は、説明する事にした。

「今まで隠してたけど、俺の前職で本業《プロ》の探索者をしていたんだ」

『そうだったんだ……ん? ダンジョン配信者じゃなくて探索者?』

『ダンジョンで配信が許可されるようになる前からの最古参ってこと?』

『もしかして、ライガってセンバツ隊の生き残り???』

 コメントにあったセンバツ隊。

 ダンジョン探索を行い、資源採取する事に各国が力を入れていた時代。  

 日本でダンジョン探索に適正がある若者が強制的に……いや、止めとこうか? この話? 嫌な思い出だからね。

 
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