VTuberでもできるダンジョン配信!

チョーカ-

文字の大きさ
37 / 121

第37話 解決(?)

しおりを挟む
 2メートルの球体が浮かんでいる。 白い半透明の球体だ。

 その中心に人の顔。 かつて、物申す系VTuberを名乗っていた男─── 炎斉士だ。

 なぜ、彼が? そんな理由が頭に思い浮かぶだろう。

「驚いているな、ライガ! その顔を見たかったぞ」

 彼は高笑いと共に語り始める。

「貴様によって、破滅した俺はダンジョンで隠れるように過ごした。数か月の期間─── それによって、特殊なスキルを手に入れたのだ!」

「あぁ、なるほど。そういうパターンのやつか。気づいてないのか……」

 ついため息交じりに、呟いた。だが、その言葉が気に入らなかったようだ。 

「なんだ、その反応は!」と炎斉士は激高して、怒鳴りだした。

「俺は、俺様は、人を操る強力なスキルを手に入れた。いくら貴様が強くても、俺のスキルの前では無力だ。 怖いか? なら土下座しろ! 俺様にした行為を謝罪しろよおおおおお! ボケが!」 

 正直に言うと、めちゃくちゃ怒ってて……ドン引きする。

「う~ん、どうしよっかな? ちょっと伝えずらいからなぁ……」

「何をブツブツと1人で! もう良い、俺のスキルでお前も操ってやる!」

「────いや、それはスキルじゃなくて、お前はもう死んでいるだぜ?」

「……はぁ?」と炎斉士の動きが止まる。

 その隙に「ほら、証拠」と俺は彼の体に触れようとする。 しかし、何の抵抗もなくすり抜けていく。 だって、幽霊には触れないのだから……

「なっ! 俺様に何をした! 獅堂ライガあぁぁぁ!」

「いや、だから……もう死んでるだって。それにダンジョンで数か月くらい過ごしたから、人を操るみたいな特殊スキルは手に入らないぜ」

 おそらく、ダンジョンにモンスターに襲われて、殺されたのだろう。

 しかし、邪《よこしま》な心を持った人間をダンジョンは歓迎する。

 人間がダンジョンの力によってモンスター化する。これを俺たちは『魔に飲まる』って表現していたが───

 炎斉士にも、それが起きたのだろう。 彼は、自分も気づかないまま死んで、モンスターになった。

「……人に憑りついて悪さをするタイプのモンスター。死霊系《ゴースト》ってところかな?」

「嘘だ、嘘だ、嘘だ……俺様が死んでる? 嫌だ、嫌だ、嫌……」

 炎斉士は必死に否定しているが、心のどこかでわかっているはずだ。だからこそ、否定し続けなければ、自分が保てなくなっている。

「なぁ、助けてくれよ、ライガ。今までの事は謝る。土下座だってなんだってする。だから、俺を人間に戻してくれよ!」

 人間がモンスターになる。 それは公然の秘密であり、情報で商売をしていた彼だって知っているだろう。

 完全にモンスターになった人間は、元に戻れない。

 だから俺は告げる。

「もう無理だ。そうなったら……と言いたいが、方法はないわけじゃない」

 俺の言葉が予想外だったのだろう。「え?」と彼は呆然としていた。

「お前は運が良かった。死霊タイプのモンスターだったからな……」

 まず俺は、浮遊している炎斉士の体を。 

 ダンジョンで身に付けた『聖なる力』ってやつだ。 それを使って───

「お前の体から、モンスターになった原因、邪な心を引き剥がす。に引き剥がすから───相当、痛いぞ」

「な、何を、物理的に引き剥がすって……痛っ! 痛い、痛い、痛い! 止めろ、俺の体を引き千切るな!」

「我慢しろ。人間に戻りたいのだろ?」

 俺は、暴れ狂う彼の体を押さえつけて、続ける。

「痛い、痛い……ふざけるな! いや、ダメだ。お、怒れない。これは、心が、感情が……取られているのか!」

「その通り、この邪心は消滅させて……ほいっと!」

 邪な心。 その全てを失った炎斉士は、人間の顔をしていなかった。

 どちらかと言えば、仏像のような顔になっている。

「よし! これで今日からお前は善霊だ!」

「あぁ、ありがとうございます。ライガさま……全て執着が失われました。このまま成仏しても良いほどに」

 うん、口調まで変わってる。

 本人の希望とは言え、もう完全に別人だ。良かったのかな? まぁ良いかッ!

「俺はお前を生き返らせると約束した。それを反故にさせてくれるな」

「なるほど、それでも私、この炎斉士はどうしたら?」

「うん、そこにいる無駄無駄さんの守護霊になってあげろ」

 急に名前を呼ばれた彼。 いつの間にか、配信中なのを忘れて、部屋の隅でガタガタと震えている。

「えっえっ! 僕に何を……?」と今も怯えている。

 ちょっと、可哀想になってきた。 炎斉士に憑りつかれた事で、俺を貶めるように動かされていただけの人なのに……

まぁ、憑りつかれた時点で炎斉士と相性が良いタイプの人間。何か粗があるから……いや、憶測で人間性を語るのは良くないな。

 とにかく、似たジャンルの配信者で相性が合ったのだろう。

 そんな無駄無駄に俺は───

「今のコイツは最上級の守護霊だ。アンタに預ける。あらゆる幸福が訪れる事になるぜ。その代わり───」

 ――――と俺は金額を示した。

「10っ! 10億!!!」

「あぁ、炎斉士を人間に戻してやる約束だ。 調べてみたらクローン人間を作るのに、そのくらいかかるらしい」

 炎斉士は死霊だ。 

 だったら、クローンでも何でも肉体を作って憑りつかせてやれば解決だ!

 クローンにも心とか自己ってのがあるのだろうが、同じ人間なら統一化されて1つの人間になるってのはダメかな?
   
 クローン技術に関しての倫理観は……まぁ、何とかなるかな?

「ちなみに、最上級の守護霊の対価なら10億は安いほうだ。10倍でも欲しがる人間はたくさんいるぜ」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

 さて、これで解決かな? 

 配信画面を見たら、凄い事になっていた。

『何これ? マジで何!』

『俺の穢れた心までなくなったような』

『凄い物を見たな』

『うん、もう二度と見えない凄いもんだ』

 どうやら、無駄無駄の配信でも映像が見えないので、俺の配信の方に多くの人が移動したようだ。

 同時接続者数も見た事ないような数字になってる。

 ちなみに、画面の向こう側にいる連中の『邪な心』にまで何か反応があったみたいだ。
 
 なにそれ? 知らん……まぁ、それは、流石に思い込みだと思うけど。

 そんな時にマネージャーの岡京さんから連絡が来た。「もしもし!」と通話を繋げると───

「岡京です。大変お疲れの所、申し訳ありませんが、これを聞いてください」

 深刻そうな口調。 俺は事件が終わってない事を予感した。

 スマホから、岡京さんが流した音声を聞いて、それを確信する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

処理中です...