VTuberでもできるダンジョン配信!

チョーカ-

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第52話 ドッキリ!『13日の金曜日』 後半!

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「さて、続いてのターゲットは!」

「───いや、まだ続けるのですか、モモカ先輩?」

 ちなみにオルネは部屋の隅に座って震えている。 大丈夫か、再起不能じゃないよな?

「もちろん、配信のためだけに倉庫の鍵を取って来たのよ。せめて、配信で流せる分を撮らなきゃ!」

 モモカ先輩はウキウキでスマホを弄ってる。 次のターゲットを呼び寄せているみたいだ。

「あらためて───次のターゲットは、赤崎フユカちゃん!」

 赤崎フユカ─── たけプロ3期生。俺の先輩で、モモカさんの後輩となる。

 清楚系のフユカ先輩は、たけプロの良心とも言われてユニコーン……つまり、ガチ恋勢も多い。 だから、今まで男性の俺とは接点がなかったのだが……

(もしかして、モモカ先輩……炎上騒動の件で、俺に気を使って? たけプロ同士の交流をさせようとしているのか?)

……そんな事を考えていたが、

「よしゃあ! フユカちゃんは怯える姿にファン需要があるからね! フユ虐のプロとしては腕の見せ所だね!」

 全然違った。 この人、フユカ先輩で遊びたいだけだった。

「さぁ、ライガくん! 早く変装をして、オバケ役を───」

「ねぇライガ、トイレどこ?」とオルネがモモカ先輩を遮った。

 ん? 何か口調が変だぞ? こいつ、ショックで幼児退行してないか?

「えっと、トイレは部屋を出て右に進むと───」

「連れて行って! こんな暗い場所、1人じゃ歩けない! じゃないと!」

「待て、待て! 何をしようとしてる、お前!」

「はいはい、オルネちゃんを案内してあげて。まだフユカが来るまで時間があると思うから」

「はい、オルネ! こっちだ!」と俺は部屋を飛び出した。

 その時、少し嫌な予感がした。

「ん? どうした? 早く連れて行ってあげなよ」

「いや、なんとなく騒がしい感じがしたので……」

「騒がしい?」と耳を澄ますモモカ先輩だったが「何も聞こえないじゃないか?」と疑問符を浮かべていた。

「ここら辺に飛び回っている死霊たちが、変な噂話をしているみたいな」

「……なにそれ? 私を怖がらそうとしてる割には、クオリティが低いわよ」

「いや、実際に───」

「ライガ! 早く!」とオルネの声。

 あぁ、トイレはそっちじゃない。逆方向だ! 

 彼女の道案内を優先しなければならない。

(まぁ、何も起こらないだろ。ここはダンジョンと違うからな)

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

「ライガくんも、ここで怖い話を持ってくるとは配信者だね。まぁ、このモモカ先輩には敵わないけどさ!」

 1人になった彼女は、スマホとカメラの映像を見ていた。すると――――

「あれ? 今、何か通った? 犬や猫が入り込んでいるのかな?」

 何か黒い影が見えた。 さっきのライガの言葉を思い出して、

「……まさかね」と呟き、怖さを誤魔化す。 すると、スマホが鳴った。

「なになに……はぁ! フユカちゃん、もう来るって! まだ、ライガが帰ってない! ゲゲゲッ! もう中に入った!」

 カメラを確認すると、確かに赤崎フユカが入り口から入ってきていた。

「おぉ! ライガくんに早く戻るようにメッセージを! 緊急事態、オルネは置いて来い!」

 慌てながら、スマホとカメラを交互に見る。すると異変が起きていた。

「あれ? なんだ、ライガくん。 もうフユカちゃんの方に向かっていたのか、流石! 仕事ができる!」

 だが、すぐに奇妙な事に彼女は気づいた。 

 黒づくめの男。 さっきまでライガが持っていなかった大きな斧を持っている事に……

「え? 何あれ? 何でカメラの方を見て───きゃぁ!」

 悲鳴を上げる。なぜなら、男は斧を振り上げて設置してるカメラを破壊したからだ。

「ラ、ライガくんじゃない。 彼なら隠しカメラが高額な事くらい知っている!」

 どうする? どうする? 乱入してきたのは、明らかに不審者だ。 

 警察? ……いや、間に合わない。 だったら!

 彼女は扉を開ける。 トイレにいるライガとオルネに向かった方が早い。

 しかし、現実は無常だった。

「え? きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と彼女は悲鳴を上げる。

 部屋の外には男が立っていたからだ。

 その手には、暗闇の中でも不気味に輝く刃物を持っている。

「いや……やだ。来ないで。誰か! 誰か助け!」

 だが、彼女の悲鳴は誰にも届かない。 非情にも、大振りな斧が振り上げられ、彼女の頭にめがけて────

「はい、それまで!」

 背後から男の肩を掴む者がいた。 獅堂ライガだった。

 それで猿渡モモカは理解した。 これはドッキリ……しかも、逆ドッキリだという事を。

「なんだ……驚かせるんじゃないわよ! こっちはチビッたかと思ったじゃない」

「あははは、ごめんよ、モモカ先輩。 すぐ、コイツを処理するから許してくれよ」

「え? 処理って?」と彼女はライガの言葉が理解できなかった。

 だがライガは、男を後ろに倒す。 投げ技などではなく、純粋な腕力だけで……だ。

 引きずり倒した男に向かってライガは───  

「───それじゃ、まずは一撃を叩き込む!」

 不審者の仮面。 それに彼は拳を叩き落した。

 マスクからは皿が割れるような音。そこに隠されていたのは……

「モモカ先輩、見てみな。これが、コイツの正体だ」

「正体! 正体って何! 逆ドッキリじゃないの! ……え? 何もない?」

 何もなかった。 そこには、そのあるはずの顔がなかった。

 ただ空間があり、虚無が存在しているだけだ。

「ど、どういうトリック? それとも、本物のオバケ!」

「本物のオバケと言うか……ダンジョン事故だな。聞いた事は?」

「ない!」

「普通、モンスターはダンジョンの外に出てこない。 コイツ等は魔素を栄養素にしているからな」

 魔素……空気中に広がった魔力のような物だ。 モンスターは基本的に、魔素を食事の代わりにしている。

「……ところが、死霊系はフラフラとダンジョンの外に出てしまう事があるわけよ。独自の進化をする個体が低確率で現れるわけだぜ。要するに、モンスターがダンジョンの外に出てしまう。それが、ダンジョン事故だぜ」

 ライガは、スマホを取り出す。 こう言う場合は、ダンジョン管理局に連絡をする決まりなのだ。 

 だが、できなかった。彼を邪魔するように異音が響いたからだ。 

 その音の出所はどこか? 原因はライガによって押さえつけられている男……いや、不審者の姿をしたモンスターからだ。

「何の音? これってもしかして……!?!?」

「あぁ、本物《ジェイソン》はチェンソーを使わないって豆知識があるが……コイツは現世のイメージと結びついたモンスター……何でもありだぜ」

 ライガは男から――――殺人鬼から離れた。 

 殺人鬼は、虚無が広がる顔に手を突っ込み、音の素───チェンソーを取り出して構える。

 対する獅堂ライガは───

「───来いよ。成仏させてやるぜ」

 挑発。 それに反応して殺人鬼が動く。 

 離れた間合い。それを飛ぶように詰めてくる。

 そして、上段に構えたチェンソー。それを勢いよく振り落とす。

 だが───

「はい、真剣白刃取り」

 ───と信じられない事に彼はチェンソーを素手で止めた。

 高速で回転する刃の集合体。それがチェンソーであり、人間の力で止めるはずもないのだが─── 

 そのまま、チェンソーを叩き割る。 そのまま殺人鬼を蹴り倒した。

「ふぅ……まぁ、こんなもんかな?」

 ダンジョンのモンスターと同じで、殺人鬼も消滅していく。

 そのタイミングだった……

「あ、あれ? みんな、何をしてるの?」

 遅れてやってきた赤崎フユカ先輩が呆然と立っていた。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

───と言うわけで13日の金曜日。 以上が、モモカ先輩の枠で同時視聴として流れた内容である。

 コメント欄は大荒れである。

『はぁ? ダンジョン事故? 初めて聞いた!?』

『あんな殺人鬼はリアルで歩き回ってる可能性があるって事???』

『いや、ヤバいじゃん!』

 俺は「ダンジョン事故への啓蒙活動となったらいいなぁ」と軽い感覚だったので、少し慌てた。

 しかし、当のチャンネル主は、と言うと───

「いやぁ、大盛り上がりだよ! 本物のオバケを撮影できたドッキリって初めてじゃない!」

 ───と猿渡モモカ先輩はご満悦だった。 

 さすが、ベテラン配信者だ。自分の命の危機ですら、ネタにする姿勢は見習いたい。

「まぁ確かに、滅多にあることじゃないぜ……今回は特別な日だったからな」

「特別? 13日の金曜日ってこと?」

「いいや、正確には13日の金曜日と───仏滅が重なった日って事だ」

「はぁ!?!?」

 要するに────

『仏様でも死ぬことのある不吉な日』

『キリストさまでも死ぬことがある不吉な日』

 この2つが重なった不吉な日だったわけだ。

 余談だが、これは100年で25回しかない───文字通り、特別な日だったわけよ。
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