VTuberでもできるダンジョン配信!

チョーカ-

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第54話切り抜き鑑賞 『大ケンタウロスの騎士戦線』

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「それじゃ、最初に見る切り抜きは……黒オーク3匹との戦いだな」

 視聴者アンケートの結果、1位は『黒オーク×3』になった。

 けれども、俺は解せない気持ちがあった。 ここで急にアンケートで見る順番を決めたのは、運営からのメッセージが届いたからだ。

『ここは、アンケート機能で視聴者に決めてもらいましょう』

 運営……つまり、マネージャーの岡京さんの事であるが、彼が配信中に連絡を送ってくるのは、緊急事態が起きた時だけ……

(もしかして、切り抜きに権利的な問題でもあったのか?)

 そんな小さなトラブル、視聴者に気づかれないように進行に戻る。

「これは、俺が初めてダンジョン配信をした時に戦ったボスモンスターだな。 強化されたボスが3匹同時出現したのは……ここだけの話、流石に焦ったぜ」 

「え?」とココロが、なぜか驚いた。

「ライガさんでも焦る事があるんですか!」

「俺だって想定外の事は驚くぞ! コラっ! コメント欄も乗っかるな!」

『ライガさんが……焦る!?!?』

『もしかして、苦戦とかする事ってあるんですか???』

『いや、実際に処理するような勝ち方だったろw』

 おいおい、俺は超人じゃないんだぞ。 

 モンスターと戦う時は、いつだって焦りと緊張……そう見えないのは、あくまで配信スタイルの問題だぜ。

そう説明しても信じられないのはわかってるけど……

「はいはい、それじゃ早速、動画を……」

「待ってください、ライガさん。実は運営さんと相談して、サプライズの動画を用意しました! こちらを見てください」

「こちらを見てって言われても……おぉ、本当だ。運営から動画が届いている」

 んん? なんだ、サプライズって? この動画を配信画面でも見えるようにして───

「よ、よし……それじゃ再生するぞ」

 映像の再生が始まる。 最初に表示されたのは、大きな文字で───

『祝 獅堂ライガ 公式切り抜きチャンネル設立!』

───と、次の瞬間は俺が戦ってきたボスモンスターたちが流れて行った。

 まだダンジョン配信を初めて、数か月程度だが、不思議と懐かしさがこみ上げて来る。

 それから新しく表示された文字には───

『我々、たけプロは次の1歩に!』

 その文字が消えると、新しく再生された動画は───

「俺と黒オークたちの戦いの切り抜き……え? どうなっているんだ、これ!」

 画面は3つに分割された。 1つは、俺が戦っている部分の切り抜き動画。 

 残りの2つは別アングルからの映像……しかし、それは存在しないはずの映像だった。

 なんせ、俺のはダンジョン配信は背後からドローンが撮影している。 横や正面からの映像なんて存在しているはずがないのだが……

 その疑問にココロが答えてくれた。

「えっとですね。ライガさんの配信は、Vtuberとして映像加工されているので3Dデータを解析する事で別角度の映像を再現する事が可能なんですよ」

「えっ……あぁ、なるほど?」

 3Dだから、後ろからの映像でも別角度からでも……いや、良くわからない。

 ま、まぁ、そういう事が可能なのだろう……?

「ここからは企業秘密なのですが、配信で登場するモンスターも事前にベースとなる3Dが複数用意されていて、それがAIによって形が自動的に修正されて……」

「いや、待て! 企業機密を言って良いのか!」

「はい、大丈夫です。近日、開始予定である『V祭り』に多くのVtuberさん参加できるように、たけプロとオレンジナイトは有している独自技術を公開する事になりました」

「……え? もしかして、この配信って『V祭り』の宣伝案件だったのを、俺へのサプライズとして……あっ! いつの間に『この配信はプロモーションを含みます』って注意書きが増えてる。いつの間に!」

「あははは……ライガさんへのサプライズ成功ですね。 それじゃ、どのような事が可能になったのか、視聴者の皆さんとライガさんに見ていただきましょう!」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

『大ケンタウロスの騎士戦線』

 俺───獅堂ライガは隠れていた。

 今は配信中であり、場所はダンジョンの中である。

 ダンジョンの中であるはずが、風景は古いヨーロッパの街並みに見える。

 ただし、人はなし。 道路の左右にはレンガが積み重なっている。

「───つまり、迷路のなっているわけだな。ん? 来るぞ!」

 接近を知らせて来るのは、馬の蹄《ひずめ》───

 パッカ、パッカ、と音を表現するには荒々しく、時折は馬の嘶《いなな》くが聞こえて来る。

 俺は上を見上げた。  レンガの迷路を飛び越えて、出現したモンスターは───上半身は人間、下半身は馬。つまり───

「敵は、ケンタウロスか!」

 甲冑の防具に、腕にはランス。 俺の頭上から刺突を狙っている。

 「相手が飛んだら、自分も飛べ!」

 戦いのノウハウに従い、俺も飛び上がる。

 空中戦───ケンタウロスは、俺の胴体に向かってランスを突き出してくる。

 回避。 体を捻る。 俺のワキ下をランスが通過していく。

 その腕を掴む。それと同時にケンタウロスの顔面に膝《ヒザ》を叩き込んだ。

 グシャ! ───と異音が鳴り響いた。 兜が変形する音。

 そのまま、掴んだ腕を捻り上げて関節技を極める。 複雑に体が絡み合ったまま地面に落下した。

「うん、ここは虎王完了───って言うべきかな?」

 決着。 そう思ったのも束の間だ。

 続けて、新しい蹄の音が接近してくる。 それも複数。

「おいおい、これは───ケンタウロスの騎馬隊かよ!」
 
 俺は駆け出した。 馬は速い……全力疾走なら時速70キロ近くまで迫る。

 とは言えば、それは速く走るように品種改良され、トレーニングが日常の競走馬の話。

「人間の短距離走。メダリストのトップスピードが45キロ……普通の馬だったら、人間の方が速く走れて当然だな」

 俺は全速力でケンタウロスの集団を引き離していくが……コメント欄ではツッコミの嵐だった。

『そうはならんやろ!』

『その理屈はおかしい!』

『人類最高速度を維持する前提やめろ!』    
 
 そうは言われても、実際にケンタウロスは俺に追い付けず、距離が離れてる。

 まぁ、重い防具や武器で本来の速度を出せないってものあるのだろう。

 「……新手のケンタウロスか? デカいな」

 何か高速で接近してくる気配を感知した。 俺の正面から……だけど1匹のみ。

「どうやらボスモンスターが出て来るみたいだ」

 それは赤いケンタウロスだった。 何よりサイズが規格外のケンタウロス。

 赤い甲冑に、巨大な盾。 そして、腕には大きな戦斧が握られている。

 威圧するかのように戦斧を振り回し、そして───

 「――ォォオオオォオオオオオオオオッ!!!」と咆哮を放つ。

 まるで骨の芯まで震えるような戦慄の嘶《いなな》き。

 だが───

「───先手必勝ってね!」と俺は、飛び蹴りで奇襲。

 しかし、盾で弾かれる。 この瞬間、大ケンタウロスが装備している盾が普通ではないと伝わる。

「……魔法を弾く盾か。魔法使いタイプの俺では相性が悪いな」

『魔法使いタイプ?』

『そう言えば魔法使いだった気がする』

『まだ、ギリギリ魔法使い』

「……いや、ここ一番で使ってるだろ! 魔法も!」

 なんだろ? 見えないはずの視聴者たちが、ジト目で俺を見ている気がしてくるのは?

「まぁ、良いや。魔法が弾かれるなら───」

 大ケンタウロスが接近してくる。 戦斧が振り上げられる。

 思わず、逃げ出したくなるほどの迫力だ。 だが、その恐怖心を無視して、俺は大きく踏み込む。

「魔法が弾かれるなら、その盾を叩き壊せばいい!」

 大ケンタウロスの懐《ふところ》まで潜り込むと同時に飛び上がる。

 そして、正拳突きを盾に打ち込む。 大きな金属音。

「へっ! 流石はボス用の盾だ。一撃だけなら俺の攻撃すら耐えきるか! だったら!」

 追撃。 1撃では終わらせない。

 乱撃を放ち続ける。 大ケンタウロスは盾で身を守るだけしかできないのだろう。

 反撃はなし。

「良いのか? 守ってるだけで? 俺の攻撃は止まらないぞ!!」

 盾に亀裂が走っていく。 だが、文字通りに俺は手を休めない。

 むしろ、逆……拳を加速させていく。

「───これで、終わりだ!」

 盾は砕け散る。 これで終わり……今、そう言ったばかりだが、あれはウソだ。

「このまま、大ケンタウロスの本体に叩き込む!」

 盾だけではなく、全身を守るための甲冑が砕けていく。 いつの間にか、戦斧は手放されている。 

 武器を失ってた腕は俺を掴んで、攻撃を止めようとするが───

 「───無駄だ。俺は止まらない」

  大ケンタウロスの断末魔と共に瘴気に包まれていく。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

「───はい、獅童ライガさんの『大ケンタウロスの騎士戦線』の切り抜きを見ていただきました」

「いや、こわっ! 俺って、いつもあんな感じなの?」

「え? 自覚がなかったのですか? 今後も視聴者さまに切り抜き動画を楽しんでいただけるように、クオリティを維持してまいりますので、よろしくお願いします」

「あっ、はい。公式切り抜き動画のチャンネル登録、高評価の方、よろしくお願いします!」

 こうして、公式切り抜き動画の告知配信は終わった。

「ふぁ、緊張した! どうでしたか、ライガさん!」

「よかったよ。視聴者からも評価が高いみたいだ」

 俺はSNSでの感想を彼女に送った。

「うわぁ、すごいですね。普通、切り抜き師が表に出て、自我を見せるのって嫌われるらしいのですが……」

 あー それを気にしていたのか。ちょっと、俺も配慮に欠けてたかな?

「せっかく、るなお母様から、イラストを送って貰ったんだ。これからもよろしく頼むよ」

「は、はい! がんばります!」

  

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