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第7話『うな重』とセリカの覚悟
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幸いにも、村は宴────と言うよりも、祭り状態。 普段は静かな村であっても、商人と契約していて物流を請け負っている魔法使いも2人、3人はいるらしい。
彼らは、離れた町々から転送してきた食料を受けとるのに大忙し。
「うなぎを数匹追加で」と村長が頼む。
彼らは嫌そうな顔をしながら、
「「「はい、喜んで!」」」
と完璧に声を揃えて、受注した。
きっと、魔法使いになってまで肉体労働的な仕事をしているのに、思うところがあるのだろう。
そんな、こんなで、うなぎが手に入った。
宴の開始に向けて、広場で準備が行われている。 大量の食事を用意するため、屋外で使える調理器具も多く並べられている。
「調理場所を借りれて良かった」とシロウ。 まな板の上にうなぎを置いた。
指先に魔力が集中していく。
うなぎはヌルヌルと滑る。 それは調理する時でも同じだ。
普通、うなぎを捌く時は千枚通しを刺し、固定して行う。 シロウは氷魔法により、氷柱を作って固定するようだ。
するする・・・・・・と馴れた手付きで、うなぎから中骨と肝を取り出す。
身を開いて、水で洗って血を取り除く。 ここまできたら、後は焼いて、タレをつけるだけだ。
「うなぎは、煙が大量発生するからな。屋外でよかったかもしれない」
うなぎの身を焼き始めるとモクモクとした煙が立ち上がっていく。
ゆっくり、時間をかけて焼きながら、シロウはタレが入った壺を取り出した。
「待ってください、シロウ!」
「ん? なんだ、調理中なんだが?」
「今の壺は、どこから取り出したのですか? 何もない空間から────収納空間《アイテムボックス》ですか?」
「ん? あぁ、これか? 便利だからな、ずっと重宝している」
セリカは驚いた。
『収納空間《アイテムボックス》』は特殊なアイテムやスキルの総称だ。
その名前の通り、武器や道具を収納できる空間。
(確かに、あの斧槍《ハルバード》をどこからか取り出しているのか、気にはなっていましたが・・・・・・ 重要なのは、どれほどの性能なのかですね)
その効果は様々である。
無制限に荷物を入れておける物もあれば、入れた物の時間を停止させてしまう物もある。
ショボい性能ならば、見えないカバン程度の物もあるが・・・・・・それでも、決して紛失せず、奪われる事のないカバンと考えれば、利便性を語るまでもない。
「ん? 性能か? 食料を保存できるように常温、冷蔵、冷凍と温度が3段階に別れている」
「なんですか、それ? そんな食材保存に特化した収納空間なんて初めて聞きました」
「あぁ、元々は別の効果だったが、こういう特殊なアイテムを改造するのが趣味な奴がいてな。 『頼む! 貸してくれ!』って、言うから1日だけ預けたら・・・・・・」
「預けたら、バラバラにされた」
「それは・・・・・・」とセリカは絶句した。 収納空間は、貴重で高額だ。
どれだけ大金を積んでも欲しがる商人はたくさんいる。
それ以上に欲しているのは貴族たちか? 戦争の兵站に使えば、その効果は・・・・・・
「その代わりに、1週間で別の収納空間を手に入れてきて、『食料保存に特化したやつを探してきたよ!』って渡された」
「何者ですか! その人!?」
そんな会話を楽しんでいると────セリカの思考は停止した。
煙に混じって、周囲にうなぎの香ばしい香りが広がってきたからだ。
「なんだ、なんだ」と村人たちも興味深そうだ。
「まだ宴には早いようだが・・・・・・フッ、仕方がないな。ドンドン焼いていくから、列を作ってくれ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「凄い賑わいでしたね・・・・・・宴」
「あぁ」とシロウは頷き、
「まさか、ここまでうなぎが評判になるとはな」
「それはシロウの腕前が良いからですよ」
「そりゃ、こう見えて料理人だからな・・・・・・そうだ、忘れる所だった」
彼は収納空間《アイテムボックス》を開いて、料理を取り出した。
「まだ、腹に入るなら食べてみろ」とセリカに渡したのは、うなぎの蒲焼き。
いや、下にご飯は敷き詰められているので、鰻重と言うべきだろう。
「あれ? これ、まだ温かいですね」
「あぁ、保存以外に作った料理を温め直す機能もあるんだ、俺の収納空間」
(食材を保存するだけではなく、料理を温め直す機能・・・・・・なんですか、それ?)
セリカは疑問に思ったが、もはや説明を求めるのもバカらしくなっていた。
何より、食への欲求が抑えられなくなっている。
「それでは、いただき────」
「いや、待て。 その料理を作ったのは、お前に聞きたい事があったからだ」
「はい、何でしょうか? 私に答えられる事なら、なんでも答えましょう(え? 聞きたい事があるから、わざわざ料理を作ったのですか!?)」
「その鰻重の食材・・・・・・仮にあのリヴァイアサンだったとしても、お前は食べる事ができるか?」
「────ッ!」とセリカは、心臓を突かれたような思いをした。
「初めて会った時、お前はスライムを食する事を拒んでいた。だから、少し聞いてみたい」
「聞く・・・・・・何をですか?」
「会話が成立するモンスター。相互理解《コミュニケーション》が可能な相手でも、お前は食べる事ができるか?」
モンスターとは、人を襲うもの。人類の敵でしかない。
しかし、会話が通じる。わかり合えてしまう事で、敵意以外の感情を持ってしまう事は有り得る。 だから、時としてモンスターを人と同様に錯覚する者もいる。
シロウは訪ねているのだ。
『お前には、そういう気質があるのではないか?』
「────」と無言を貫いていたセリカ。その手が動く。
箸がうなぎを掴み、その身を分ける。 それを彼女は大きな口を開いて向かい入れた。
しかし、その目には答えを得た者が宿す覚悟というものが浮かんでいた。
「────そうか。答えが出たか」
「はい! 私は冒険者として汚い仕事もしてきました。時には、モンスターだけではなく・・・・・・だから! 殺せると言うことは食べれるということです!」
それは決意である。
自分の手は汚れている。それでも、こうして冒険者を続けて、シロウ・ムラサメに師事を頼んだ理由────それは強くなるためである。
今まで受けた理不尽。それを跳ね返すほどの力が欲しい。
そのためならば────
「私は食べます!」と彼女は改めて宣言をした。
それから───
「くっ~! うなぎがふっくらいて、柔らかい! それに甘いタレがしっかりと主張しきますね!」
───と、うな重に集中を始めた。
ホカホカのうな重からは、白い蒸気が浮かんでいる。 蒸気と共に周囲に甘じょっぱい香りが広がる。 鼻を刺激するような香りが食欲を増加させている。
さらに、肉厚な鰻が目を楽しませてくれる。
タレを絡ませたうなぎは、艶めかしく輝いている。 皮の部分には、程よい焦げ目が入り、香ばしさを約束してくれる。
セリカは箸でそっとつまむ。 すると、ふっくらとしたうなぎの身が簡単にほぐれるのがわかった。それを口に運ぶと
「───っ、っ、っ! うわぁ! さいっ~高です!」
うなぎの脂はしつこさがなく、とろけるような食感。それでいて、しっかりとした旨味が引き出されている。
「今度はうなぎだけではなく、タレが染み込んだご飯と一緒に・・・・・・ゴクっ!」
まさに絶妙なハーモニー。
濃厚とも言えるうなぎの旨味。それがタレによって甘味の増したご飯と合わさって、食欲増進を訴えてくる。
「ご飯を送る・・・・・・次にうなぎを・・・・・・またご飯を・・・・・・」
「お、おい、大丈夫か? 何か独り言を、ぶつぶつ呟き始めたが・・・・・・?」
「はっ! ここは! あまりの美味に意識の手綱を離していました」
「さすがに、それは大袈裟・・・・・・だよな?」
コイツ、正気か? そんなニュアンスでの疑問符だった。
「いえいえ、それほどまでシロウの料理が美味しかったと言うことですよ」
「────」とシロウは、一瞬呼吸を止めたように呆けた表情になった。
それは、どういう表情なのか? セリカが問うよりも早く、
「そうか。それは料理人冥利に尽きるぜ」と笑みを浮かべた。
───翌日───
「それでは100年後に、次の次の村長に伝えておきます。世界最強の料理人、シロウ・ムラサメの名と栄光を」
「いや、大袈裟なんだよ。別に俺は、世界最強なんて名乗った事はないぜ」
「ほっほっほ、ご謙遜を」
「それに、今回の龍神退治は俺じゃなくて、コイツが────セリカ・イノリの手柄だぜ」
「ほう・・・・・・」と村長は、セリカに顔を近づけた。
「なるほど、それでは────シロウ・ムラサメとセリカ・イノリの名前を伝え続けるとしましょう」
「ほっほっほ」と高笑いする村長に対して、少しだけ嫌そうな顔を見せたシロウであったが、その理由までセリカはわからなかった。
2人は馬車に乗り、次の目的地に向かった。
「次の目的地はどこですか?」
「そうだな。もう少しすれば季節も変わり暖かくなる。そうなれば冬眠から覚める連中もでてくるから────」
「お客さんたち、狩猟ですか? いやぁ猟師には見えないなぁ」と馬車を操る御者が話しかけてきた。
「いや、俺は猟師ではなく料理人だ。珍しい食材を求めて旅をしてる。死者も驚いて生き返るほどの食材を・・・・・・な」
「はっはっは! そりゃいい。そんな料理があったら食べてみたいですね。でも、山の食材を探してるなら難しいですなぁ」
「難しい? どうしてだ?」
「なんでも、この先の町で長い間、物流が止まって、人の出入りまで制限されているようです」
「自然災害、あるいはドラゴンレベルのモンスターが出たか?」
「そんな大袈裟なもんじゃありませんよ。なんでも山賊が出ているらしいですなぁ」
「山賊? ただの山賊の出現で交通規制どころか、物流まで規制されているのか?」
「そう言われると・・・・・・ちょっと妙ですな」
「そうか」とシロウは話を切り上げた。 御者から得られる情報は、これ以上ないと判断したのかもしれない。それから彼は────
「少し、厄介な事になるかもしれない」と小さく呟いた。
彼らは、離れた町々から転送してきた食料を受けとるのに大忙し。
「うなぎを数匹追加で」と村長が頼む。
彼らは嫌そうな顔をしながら、
「「「はい、喜んで!」」」
と完璧に声を揃えて、受注した。
きっと、魔法使いになってまで肉体労働的な仕事をしているのに、思うところがあるのだろう。
そんな、こんなで、うなぎが手に入った。
宴の開始に向けて、広場で準備が行われている。 大量の食事を用意するため、屋外で使える調理器具も多く並べられている。
「調理場所を借りれて良かった」とシロウ。 まな板の上にうなぎを置いた。
指先に魔力が集中していく。
うなぎはヌルヌルと滑る。 それは調理する時でも同じだ。
普通、うなぎを捌く時は千枚通しを刺し、固定して行う。 シロウは氷魔法により、氷柱を作って固定するようだ。
するする・・・・・・と馴れた手付きで、うなぎから中骨と肝を取り出す。
身を開いて、水で洗って血を取り除く。 ここまできたら、後は焼いて、タレをつけるだけだ。
「うなぎは、煙が大量発生するからな。屋外でよかったかもしれない」
うなぎの身を焼き始めるとモクモクとした煙が立ち上がっていく。
ゆっくり、時間をかけて焼きながら、シロウはタレが入った壺を取り出した。
「待ってください、シロウ!」
「ん? なんだ、調理中なんだが?」
「今の壺は、どこから取り出したのですか? 何もない空間から────収納空間《アイテムボックス》ですか?」
「ん? あぁ、これか? 便利だからな、ずっと重宝している」
セリカは驚いた。
『収納空間《アイテムボックス》』は特殊なアイテムやスキルの総称だ。
その名前の通り、武器や道具を収納できる空間。
(確かに、あの斧槍《ハルバード》をどこからか取り出しているのか、気にはなっていましたが・・・・・・ 重要なのは、どれほどの性能なのかですね)
その効果は様々である。
無制限に荷物を入れておける物もあれば、入れた物の時間を停止させてしまう物もある。
ショボい性能ならば、見えないカバン程度の物もあるが・・・・・・それでも、決して紛失せず、奪われる事のないカバンと考えれば、利便性を語るまでもない。
「ん? 性能か? 食料を保存できるように常温、冷蔵、冷凍と温度が3段階に別れている」
「なんですか、それ? そんな食材保存に特化した収納空間なんて初めて聞きました」
「あぁ、元々は別の効果だったが、こういう特殊なアイテムを改造するのが趣味な奴がいてな。 『頼む! 貸してくれ!』って、言うから1日だけ預けたら・・・・・・」
「預けたら、バラバラにされた」
「それは・・・・・・」とセリカは絶句した。 収納空間は、貴重で高額だ。
どれだけ大金を積んでも欲しがる商人はたくさんいる。
それ以上に欲しているのは貴族たちか? 戦争の兵站に使えば、その効果は・・・・・・
「その代わりに、1週間で別の収納空間を手に入れてきて、『食料保存に特化したやつを探してきたよ!』って渡された」
「何者ですか! その人!?」
そんな会話を楽しんでいると────セリカの思考は停止した。
煙に混じって、周囲にうなぎの香ばしい香りが広がってきたからだ。
「なんだ、なんだ」と村人たちも興味深そうだ。
「まだ宴には早いようだが・・・・・・フッ、仕方がないな。ドンドン焼いていくから、列を作ってくれ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「凄い賑わいでしたね・・・・・・宴」
「あぁ」とシロウは頷き、
「まさか、ここまでうなぎが評判になるとはな」
「それはシロウの腕前が良いからですよ」
「そりゃ、こう見えて料理人だからな・・・・・・そうだ、忘れる所だった」
彼は収納空間《アイテムボックス》を開いて、料理を取り出した。
「まだ、腹に入るなら食べてみろ」とセリカに渡したのは、うなぎの蒲焼き。
いや、下にご飯は敷き詰められているので、鰻重と言うべきだろう。
「あれ? これ、まだ温かいですね」
「あぁ、保存以外に作った料理を温め直す機能もあるんだ、俺の収納空間」
(食材を保存するだけではなく、料理を温め直す機能・・・・・・なんですか、それ?)
セリカは疑問に思ったが、もはや説明を求めるのもバカらしくなっていた。
何より、食への欲求が抑えられなくなっている。
「それでは、いただき────」
「いや、待て。 その料理を作ったのは、お前に聞きたい事があったからだ」
「はい、何でしょうか? 私に答えられる事なら、なんでも答えましょう(え? 聞きたい事があるから、わざわざ料理を作ったのですか!?)」
「その鰻重の食材・・・・・・仮にあのリヴァイアサンだったとしても、お前は食べる事ができるか?」
「────ッ!」とセリカは、心臓を突かれたような思いをした。
「初めて会った時、お前はスライムを食する事を拒んでいた。だから、少し聞いてみたい」
「聞く・・・・・・何をですか?」
「会話が成立するモンスター。相互理解《コミュニケーション》が可能な相手でも、お前は食べる事ができるか?」
モンスターとは、人を襲うもの。人類の敵でしかない。
しかし、会話が通じる。わかり合えてしまう事で、敵意以外の感情を持ってしまう事は有り得る。 だから、時としてモンスターを人と同様に錯覚する者もいる。
シロウは訪ねているのだ。
『お前には、そういう気質があるのではないか?』
「────」と無言を貫いていたセリカ。その手が動く。
箸がうなぎを掴み、その身を分ける。 それを彼女は大きな口を開いて向かい入れた。
しかし、その目には答えを得た者が宿す覚悟というものが浮かんでいた。
「────そうか。答えが出たか」
「はい! 私は冒険者として汚い仕事もしてきました。時には、モンスターだけではなく・・・・・・だから! 殺せると言うことは食べれるということです!」
それは決意である。
自分の手は汚れている。それでも、こうして冒険者を続けて、シロウ・ムラサメに師事を頼んだ理由────それは強くなるためである。
今まで受けた理不尽。それを跳ね返すほどの力が欲しい。
そのためならば────
「私は食べます!」と彼女は改めて宣言をした。
それから───
「くっ~! うなぎがふっくらいて、柔らかい! それに甘いタレがしっかりと主張しきますね!」
───と、うな重に集中を始めた。
ホカホカのうな重からは、白い蒸気が浮かんでいる。 蒸気と共に周囲に甘じょっぱい香りが広がる。 鼻を刺激するような香りが食欲を増加させている。
さらに、肉厚な鰻が目を楽しませてくれる。
タレを絡ませたうなぎは、艶めかしく輝いている。 皮の部分には、程よい焦げ目が入り、香ばしさを約束してくれる。
セリカは箸でそっとつまむ。 すると、ふっくらとしたうなぎの身が簡単にほぐれるのがわかった。それを口に運ぶと
「───っ、っ、っ! うわぁ! さいっ~高です!」
うなぎの脂はしつこさがなく、とろけるような食感。それでいて、しっかりとした旨味が引き出されている。
「今度はうなぎだけではなく、タレが染み込んだご飯と一緒に・・・・・・ゴクっ!」
まさに絶妙なハーモニー。
濃厚とも言えるうなぎの旨味。それがタレによって甘味の増したご飯と合わさって、食欲増進を訴えてくる。
「ご飯を送る・・・・・・次にうなぎを・・・・・・またご飯を・・・・・・」
「お、おい、大丈夫か? 何か独り言を、ぶつぶつ呟き始めたが・・・・・・?」
「はっ! ここは! あまりの美味に意識の手綱を離していました」
「さすがに、それは大袈裟・・・・・・だよな?」
コイツ、正気か? そんなニュアンスでの疑問符だった。
「いえいえ、それほどまでシロウの料理が美味しかったと言うことですよ」
「────」とシロウは、一瞬呼吸を止めたように呆けた表情になった。
それは、どういう表情なのか? セリカが問うよりも早く、
「そうか。それは料理人冥利に尽きるぜ」と笑みを浮かべた。
───翌日───
「それでは100年後に、次の次の村長に伝えておきます。世界最強の料理人、シロウ・ムラサメの名と栄光を」
「いや、大袈裟なんだよ。別に俺は、世界最強なんて名乗った事はないぜ」
「ほっほっほ、ご謙遜を」
「それに、今回の龍神退治は俺じゃなくて、コイツが────セリカ・イノリの手柄だぜ」
「ほう・・・・・・」と村長は、セリカに顔を近づけた。
「なるほど、それでは────シロウ・ムラサメとセリカ・イノリの名前を伝え続けるとしましょう」
「ほっほっほ」と高笑いする村長に対して、少しだけ嫌そうな顔を見せたシロウであったが、その理由までセリカはわからなかった。
2人は馬車に乗り、次の目的地に向かった。
「次の目的地はどこですか?」
「そうだな。もう少しすれば季節も変わり暖かくなる。そうなれば冬眠から覚める連中もでてくるから────」
「お客さんたち、狩猟ですか? いやぁ猟師には見えないなぁ」と馬車を操る御者が話しかけてきた。
「いや、俺は猟師ではなく料理人だ。珍しい食材を求めて旅をしてる。死者も驚いて生き返るほどの食材を・・・・・・な」
「はっはっは! そりゃいい。そんな料理があったら食べてみたいですね。でも、山の食材を探してるなら難しいですなぁ」
「難しい? どうしてだ?」
「なんでも、この先の町で長い間、物流が止まって、人の出入りまで制限されているようです」
「自然災害、あるいはドラゴンレベルのモンスターが出たか?」
「そんな大袈裟なもんじゃありませんよ。なんでも山賊が出ているらしいですなぁ」
「山賊? ただの山賊の出現で交通規制どころか、物流まで規制されているのか?」
「そう言われると・・・・・・ちょっと妙ですな」
「そうか」とシロウは話を切り上げた。 御者から得られる情報は、これ以上ないと判断したのかもしれない。それから彼は────
「少し、厄介な事になるかもしれない」と小さく呟いた。
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