ただし、セーブポイントはない。

ねこめいし

文字の大きさ
12 / 28

Entry

しおりを挟む
「ダンジョンに入る冒険者はここの名簿に登録する必要がある。ついでだから今済ませるぞ」

 ウィリウスに手を引かれて歩きながら、次の用事を説明される。登録と言っても名前と所属を提出して認識証を貰うだけの簡単な物らしい。

魔法で登録とか、ステータスが出るとか期待してたんだけどそんなこともなく。手動で書類に記入して、その場で金属製のプレートに刻印して、2つあるうち1つを手渡されて終わり。もう1つは組合側の控えになるらしい。会員証というよりドッグタグみたいだな。死体の身元確認するやつ。冒険者はかなり死傷率の高い職業なので、さもありなんという印象だ。

「はい、こちらをダンジョン入口で提示していただければ、入場が可能になります。紛失した場合再発行ではなく新規登録となり、都度料金がかかります。身につけていないと組合員として認められないので気を付けてくださいね。その他にも組合の売店や依頼代行なんかも利用できますので……詳しくはお連れ様にお聞きください」

「ありがとうございます」

 受付のおじさんからタグを受け取る。予想したよりも軽くて、首にかけるための麻紐も相まってちょっとちゃっちいかもと思ってしまった。ウィリウスが銅貨をいくらか支払って、それで手続きは終わりだ。あっさりしたものである。

「買い物もするだろ? 掛けとけよ」

「ん」

 しゃらりと軽く揺れるタグ。紐が痒いので服の襟に引っ掛けて下げることにした。これで冒険者として活動できるらしい。あんまり実感は湧かないけれど、またウィリウスに手を引かれたのでおじさんにお礼を言って受付を離れる。次は建物の中に備えられた売店に向かった。

 ゲーム内では回復アイテムや装備、地図を売る場所だった組合の売店。現実でも似たような物が売られているようだ。大きな羊皮紙の束が壺に刺さっていたり、小さな瓶にカラフルな薬液が詰められていたりする。わくわくする感じの『ファンタジーな売店』だ。

「なんか欲しいのあるか? 予算以内なら好きに見繕って良いぞ」

「まじ? わぁい」

「ダンジョン潜る時のアイテムは俺が買うから他のやつな」

「あー、シンの気になる物があったらってことね」

 お小遣いでおやつを買って良いよではなく、攻略知識的に必要なものがあったら言えということらしい。そりゃあそうか。でも、ここの売店は特に秘密アイテムとか裏メニューがあった覚えないな。普通の、攻略度に応じて品揃えが増えていく店舗だ。現実的なとこだとあれかな、活動歴とか功績とかで売って貰える物が変わるんだろう。

 ウィリウスは買う物が決まっているので、迷いなく商品を籠に入れている。いくらゲームをやり込んだとはいえ現実となれば勝手が違うので、ダンジョン関連の買い出しは全部先輩冒険者ウィリウスに任せることにした。それを横目に見ながら、適当に商品棚を物色する。ダンジョン攻略に必要なアイテムや装備の他、『調整部屋』で使うえっちなアイテムも一緒に並べられているのが少し異質だった。液晶の向こうにしかなかったアイテムたちが目の前に並んでいて、手に取って見分できる。不思議な気分になるな。

「なーウィリウス、これほしい」

「んー? ……おい、必要な物って言ったろ」

 ちょうど目に付いた物があったので、一式ウィリウスの持つ籠に投入。柔らかい素材で作られた、特徴的な形の玩具。ここに売っているのだから当然大人の玩具だ。正式には医療器具なんだったか? 元々奴隷のシシ―は後ろの開発がとっくに済んでいて、ウィリウスは最初その気も無かったから拡張用の道具なんて屋敷に無い。あんまり痛い思いさせたくないんだよな、ウィリウスも……まぁ言わないけど、後から迎えたいキャラたちも。

「必要はないけどさ、これ気持ち良いらしいよ? ほら、前は結構時間かけて慣らしたから。いつでもそうってわけにいかないだろ」

「お前使い方分かるんだろうな?」

「分かるよぉ」

「ほんとかぁ?」

 言いつつ入れたソレを取り出すことはしない……というか触るのも嫌そうな顔をするウィリウス。主人の決めたことに逆らえないだけなんだろうけど、じろりとこちらを睨みながら大人しくしているのがちょっと面白い。どっちだろうな、ほんとは期待してるのか、それとも本当に嫌がっているのか。魔法を使ったせいで想像するしかないのが悲しいな、真面目に魔法のこと勉強しようかな。

「ま、いいや。これだけか?」

「うん」

 アイテムを入れた籠を会計に持っていく。我々の財布はウィリウスが握っていて、今回はそれの半分くらいが代金として差し出されていた。手に入れたアイテムたちはマジックバッグに収納され、冒険者組合での用事はこれでおしまい。何を買ったかの内訳は屋敷に帰ってから詳しく聞こうと思う。

「よし、あとは適当に市場見て帰ろう」

「わーい。俺買い食いしたい」

「ほどほどにしろよ」

 促され、手を取って組合の建物を後にした。世界に慣れるため、と称してウィリウスに付いて回っているけれど、今のところは普通に楽しめている。ちょっとしたデートみたいな気分だった。はぐれないようにとえらく心配した彼が、しっかり手を握っていてくれるからなおさら。

 太陽は頭上にあり、帰宅までまだ時間はある。せっかく液晶を越えてやって来た世界だ、たくさん楽しもうじゃないか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい
BL
 若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。  昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。  年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。  リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。  

処理中です...