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Hotpot
具材を洗って検証がてら解体ナイフでぶっ刺し、貴重な知見を得たところで鍋へ投入し調味料と一緒に煮込む。蓋してゆっくりコトコトしている間、引っ張って来た椅子に座って買ってきた本を開いた。名称を口に出せば魔法が発動するのは確認してあるが、まだまだ知らない仕様があるかもしれない。古めかしい本にかっちりした活字調で日本語が書いてあるのはちょっと違和感を覚えるが、読みやすいので気にしないでおこう。
ゲームの選択肢だった時は考えもしなかったけれど、この世界の魔法にだってきちんと原理はあるようだ。年少向けかつ初級の物なので分かりやすく説明してくれている。魔力がどうの気の巡りがどうのと小難しい話をずらっと並べられて少々閉口しつつ、ゆっくり読み進めた。ウィリウスが帰ってくるまでには半分ほど読み進められそうである。
「解析の魔法陣がこうだから……アナライズ」
本を読みながら、慎重に魔法を発動してみた。適当に口にしていた時は分からなかったけれど、たしかに解析対象へ向けた指から何かが抜けていく心地がする。これが魔力というものなのだろう。解説によれば、この感覚を制御することが魔術の上達においては肝要だとのこと。繰り返して慣れろと書かれているから、暇と体力が余ったらいろんなものに試していきたい。今は物品の名前と材質が分かるくらいだけれど、極めれば生産者とか産地とか、詳しい説明とか付くようになるらしい。それはそれで凄く強い魔法だな。
「料理の状態とか出れば美味いもん作れるのかな」
もしかしたらシシ―の料理上手は魔法のせいだったかもしれない。思い付いて鍋に向けて解析をしてみた。……特に変わった情報が表示されることはなく、これはまごうことなき海鮮鍋である事実が判明したくらい。経験値がリセットされているのか、そもそも料理上手に魔法は関係なかったかのどちらかのようだ。
「ミニゲーム感覚で作れればいいのに……」
焦げ付かないよう鍋の様子を見ながら、簡単に料理が生産出来た電子空間のことを思い出す。以前に料理をしていた記憶がほぼ無いので、ゲーム内に入る前でもそこまで料理は得意でなかったのだと思う。
「ただいまー」
「お。おかえりぃ」
「おう。帰ってたか。無事か? 怪我とかしてないか」
がちゃりと玄関の開く音がして、疲れた声が聞こえた。一旦火を止めて出迎えに行く。前回と同じように疲れて汚れたウィリウスは、だけども怪我はないようだ。少しほっとした。
「こっちの台詞だよそれは。どうだった? 荷物持ってくから風呂入って来いよ」
「助かる。まあ、そこそこってとこかな。宝箱は出なかったし」
マジックバッグを受け取り、防具を外すウィリウスを横目に倉庫へ。仕分けは翌日で良いらしいので、そのまま入り口横に置いて戻る。奴が風呂から戻る前に、夕食の準備を終わらせてしまおう。
本を片付けてテーブルを綺麗にし、布巾を引いてその上にあっためた鍋を置く。食器を用意して味変用の調味料を添えたら完成だ。日本産のゲームだからか普通に醤油やお出汁等々の概念があるので、和食でもばっちりそれっぽい。……はず。
「今日の飯何?」
「海鮮鍋。お前髪びっしょびしょじゃん、拭けよ」
「あ? あー……そうか、そうだな」
「……いや拭けってば」
よほど腹が減っていたのか、肩にタオルをかけた状態でやって来たウィリウスは、鍋の蓋を開けてニンジンを摘まんでいた。どうしてだか数秒不思議そうな顔で首を傾げて、そのまま席に着く。俺ほどでなくとも襟足がそこそこ長いから、バスローブが濡れてしまいそうだ。……部屋着でなくバスローブってとこが坊ちゃんを感じさせるな。お貴族様なら摘まみ食いはやめて欲しいものだが。
「これは……なべ、ええと……?」
「好きなモンよそって食べてくれ。調味料はそこな」
「お、おお……なるほどそういう料理か」
単に普段洋食が基本だからか、庶民的な料理に馴染みがないのか。料理の得意な奴隷がいたのを見るに後者な気がする。別に和食のないゲーム世界でもなかったのに食卓を眺めて戸惑うウィリウス。後ろに回って、肩のタオルで髪を拭いてやる。せっかく綺麗な赤毛なんだ、痛んだりしたらもったいないからなぁ。
「いただきます」
「はいおあがりー」
「なんか……なんだ、斬新だな」
「うるせー、楽で良いだろうが」
少なくともシェフが来るまでは俺の料理がデフォルトだ。早く慣れて欲しい。
「そうだ、あの解体ナイフの実験結果なんだけどな」
「んー」
初めての鍋料理をパクつくウィリウスの髪を拭きながら、実験結果を報告する。
色々と試してみたところ、魚は肉と同じく鱗や骨と切り身に分けられ、古着は大きな一枚布に分解された。そして革靴は革1枚と僅かの金属になった。明らかにボタンや紐なんかも使われているはずだが、食材でなく加工品の場合、細かな材料はカウントされないらしい。他に細々した小物で試してみたけれど、単に分解されるのではなく原材料になって出現した。内容物的には目減りしていることになるので、これを使って量産チートとかは無理そうだということも分かっている。
「俺の成果はこんな感じ」
「なるほどな。……どっちにしろやべぇ代物には違いねぇや」
「それはそう」
「明日はまた休む予定だし、金庫選びに行こう」
「いいね」
あらかた赤毛の水気が取れたところで、彼の対面に座り直す。いただきますと手を合わせて自分で鍋をよそった。……自分ではそこそこ良い出来だと思うんだけどなぁ。
「今日の料理どう?」
「……不味くはないな」
お貴族様の舌は肥えている。もう少し精進が必要そうだ。
ゲームの選択肢だった時は考えもしなかったけれど、この世界の魔法にだってきちんと原理はあるようだ。年少向けかつ初級の物なので分かりやすく説明してくれている。魔力がどうの気の巡りがどうのと小難しい話をずらっと並べられて少々閉口しつつ、ゆっくり読み進めた。ウィリウスが帰ってくるまでには半分ほど読み進められそうである。
「解析の魔法陣がこうだから……アナライズ」
本を読みながら、慎重に魔法を発動してみた。適当に口にしていた時は分からなかったけれど、たしかに解析対象へ向けた指から何かが抜けていく心地がする。これが魔力というものなのだろう。解説によれば、この感覚を制御することが魔術の上達においては肝要だとのこと。繰り返して慣れろと書かれているから、暇と体力が余ったらいろんなものに試していきたい。今は物品の名前と材質が分かるくらいだけれど、極めれば生産者とか産地とか、詳しい説明とか付くようになるらしい。それはそれで凄く強い魔法だな。
「料理の状態とか出れば美味いもん作れるのかな」
もしかしたらシシ―の料理上手は魔法のせいだったかもしれない。思い付いて鍋に向けて解析をしてみた。……特に変わった情報が表示されることはなく、これはまごうことなき海鮮鍋である事実が判明したくらい。経験値がリセットされているのか、そもそも料理上手に魔法は関係なかったかのどちらかのようだ。
「ミニゲーム感覚で作れればいいのに……」
焦げ付かないよう鍋の様子を見ながら、簡単に料理が生産出来た電子空間のことを思い出す。以前に料理をしていた記憶がほぼ無いので、ゲーム内に入る前でもそこまで料理は得意でなかったのだと思う。
「ただいまー」
「お。おかえりぃ」
「おう。帰ってたか。無事か? 怪我とかしてないか」
がちゃりと玄関の開く音がして、疲れた声が聞こえた。一旦火を止めて出迎えに行く。前回と同じように疲れて汚れたウィリウスは、だけども怪我はないようだ。少しほっとした。
「こっちの台詞だよそれは。どうだった? 荷物持ってくから風呂入って来いよ」
「助かる。まあ、そこそこってとこかな。宝箱は出なかったし」
マジックバッグを受け取り、防具を外すウィリウスを横目に倉庫へ。仕分けは翌日で良いらしいので、そのまま入り口横に置いて戻る。奴が風呂から戻る前に、夕食の準備を終わらせてしまおう。
本を片付けてテーブルを綺麗にし、布巾を引いてその上にあっためた鍋を置く。食器を用意して味変用の調味料を添えたら完成だ。日本産のゲームだからか普通に醤油やお出汁等々の概念があるので、和食でもばっちりそれっぽい。……はず。
「今日の飯何?」
「海鮮鍋。お前髪びっしょびしょじゃん、拭けよ」
「あ? あー……そうか、そうだな」
「……いや拭けってば」
よほど腹が減っていたのか、肩にタオルをかけた状態でやって来たウィリウスは、鍋の蓋を開けてニンジンを摘まんでいた。どうしてだか数秒不思議そうな顔で首を傾げて、そのまま席に着く。俺ほどでなくとも襟足がそこそこ長いから、バスローブが濡れてしまいそうだ。……部屋着でなくバスローブってとこが坊ちゃんを感じさせるな。お貴族様なら摘まみ食いはやめて欲しいものだが。
「これは……なべ、ええと……?」
「好きなモンよそって食べてくれ。調味料はそこな」
「お、おお……なるほどそういう料理か」
単に普段洋食が基本だからか、庶民的な料理に馴染みがないのか。料理の得意な奴隷がいたのを見るに後者な気がする。別に和食のないゲーム世界でもなかったのに食卓を眺めて戸惑うウィリウス。後ろに回って、肩のタオルで髪を拭いてやる。せっかく綺麗な赤毛なんだ、痛んだりしたらもったいないからなぁ。
「いただきます」
「はいおあがりー」
「なんか……なんだ、斬新だな」
「うるせー、楽で良いだろうが」
少なくともシェフが来るまでは俺の料理がデフォルトだ。早く慣れて欲しい。
「そうだ、あの解体ナイフの実験結果なんだけどな」
「んー」
初めての鍋料理をパクつくウィリウスの髪を拭きながら、実験結果を報告する。
色々と試してみたところ、魚は肉と同じく鱗や骨と切り身に分けられ、古着は大きな一枚布に分解された。そして革靴は革1枚と僅かの金属になった。明らかにボタンや紐なんかも使われているはずだが、食材でなく加工品の場合、細かな材料はカウントされないらしい。他に細々した小物で試してみたけれど、単に分解されるのではなく原材料になって出現した。内容物的には目減りしていることになるので、これを使って量産チートとかは無理そうだということも分かっている。
「俺の成果はこんな感じ」
「なるほどな。……どっちにしろやべぇ代物には違いねぇや」
「それはそう」
「明日はまた休む予定だし、金庫選びに行こう」
「いいね」
あらかた赤毛の水気が取れたところで、彼の対面に座り直す。いただきますと手を合わせて自分で鍋をよそった。……自分ではそこそこ良い出来だと思うんだけどなぁ。
「今日の料理どう?」
「……不味くはないな」
お貴族様の舌は肥えている。もう少し精進が必要そうだ。
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