ただし、セーブポイントはない。

ねこめいし

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Alone

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 さて、ひとまずナイフとエリクサーは倉庫の隅に分けて袋に入れておくことにして、なんだか問題を先送りにしてしまったような気もする翌日。ウィリウスがまたダンジョンへ行くというので、仕度をして出掛けることに。今日は彼1人でダンジョンへ行き、こちらは街で物資の調達や散策をする予定だ。1人で行くと言ったらウィリウスにだいぶ渋られたけれど。別に子供でもないし、知識がないわけでもないからそんなに過保護にならなくても良いのに。

「じゃあ……、俺ダンジョン潜ってくるけど、街回るなら気を付けるんだぞ。あんまり裏路地とかはいかないようにな? 夜までには帰ってくるから」

「心配し過ぎだって……俺も暗くなる前には屋敷に帰るよ。小遣いで買えない物は帰ってお前に相談するから、ウィリウスこそ怪我しないように。気を付けてね」

 お互いにお互いの身を案じつつ、冒険者組合の前で分かれる。ウィリウスは昨日仕分けた収穫物を売却し、ダンジョンへ潜るそうだ。お荷物がいない分楽だろうが、怪我をしないで帰ってきて欲しい。

「行ってらっしゃい」

「おう。お前も気を付けるんだぞ」

「分かってるよ」

 最後まで心配そうだったウィリウスは、ちらちら振り返りつつ去って行った。それを見送り、まずは奴隷市場を覗いてみる。勝手に人を増やす予定はないけれど、来店回数で起こるイベントがこの世界でどう起こるのか分からなかったから、やるだけやってみようの試みだ。この間2人で来た時と同じく賑わう通りは、特に変わった様子もなく平和そうだ。呼び込みと嬌声、僅かに甘い匂いの香る通りは今日も盛況である。呼び込みに掴まっても面倒なので、入口で引き返して退散する。

「さて……まずは買い出しかな。生ものは午後にするとして……」

 今日はお小遣いとして幾らか自由に出来るお金を貰ったので、それを使って気になる物を購入する予定だ。主にナイフで分解してみたいものとか、ゲーム知識でのお役立ち品とか、その他個人的な嗜好品とか。無駄遣い出来る余裕は我がパーティーにはないので、慎重に吟味しながら買い物を楽しもうと思う。

 賑わう市場は騒がしいくらいで、1人歩き回るだけでも楽しかった。店頭に出ている品を眺めて冷やかす。古着屋があったので、安価な服と革靴を購入した。分解仕様の実験台だ。

「こんにちはー。鳥串ください」

「お! こないだの兄さんだね、いらっしゃい。今日相方は?」

「別行動なの。これ3本くーださい」

「まいどー」

 こないだの焼き鳥が美味しかったので、お昼はそれを食べることに。似たような美形顔の多いゲームの仕様の中で、ちゃんと顔を覚えているのはさすがの商売人である。短い世間話ののち、昼ご飯を手に入れた。少々行儀悪く食べ歩きしながら、あとは何を買うべきか考える。このへんの市場には隠し要素もないはずだ。自分自身でいかなければいけない場所も思いつかない。アーティファクトナイフの実験台には1つあれば十分だ。収入源を基本ウィリウスに頼っている身で無駄遣いをするのも申し訳ない。一通り見て回ったら屋敷に戻るべきだろうか。

「……お」

 ついでに購入したリンゴのジュースを飲みつつ歩いていたら、こじんまりとした本屋を見つけた。ゲーム内言語は全て日本語で読めているので、読書をするのに不自由はない。

 そういえば、魔法の訓練しないとと思っていたところだ。初級くらいの本があったら参考にしたいと思い、ジュースを飲み干して店へ入る。埃と古い紙の匂いがした。店内には所狭しと棚が並べられ、どの棚にもぎっしりと本が詰められている。特にあてがあるわけではないので、のんびり隅から歩いて面白そうな本を探す。ゲームではスキルを強化したり技を覚えたりできる察しが売られていた記憶があった。棚にはもちろん小説なんかも並んでいて、必要な物だけ一覧になっていたゲームメニューとも勝手が違うようだ。

 しばらく棚を物色し、いくつか魔法に関する本を見繕って購入する。帰ってゆっくり読もうと思う。

「んー……そろそろ帰るか」

 めぼしい品を手に入れて、自分用の本も購入した。市場の店もおおかた見てしまったので、食料品を調達して戻っても良いだろう。日もだいぶん傾いてきたし、ウィリウスが帰ってくる前に夕食くらい作っておいてやろう。

 魚や野菜、あとは果物なんかの屋敷に少ない食料を丸ママ購入し、屋敷に戻る。先日は肉しか解体ナイフを試さなかったので、他の食料でも同じように部位で解体されるのか試したいところだ。魚の骨まで除去されるなら、こんなにありがたいことはない。

「魚……野菜……鍋とかで良いかな」

 料理スキルはそう高くない。ウィリウスがコックを雇いたいと言うほどではないと思うのだが……まあ、貴族に雇われていた元の体シシ―の調理スキルが高かったのだろう。せっかく綺麗に解体が出来るようになって、ダンジョンの食料も美味しく頂けそうなのだ。該当するキャラは数名思い付くから、次のメンバーは料理の出来る子が良いな。

 門から玄関への長い道のりを歩きながら、ぼんやりと考えた。
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