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「ウィリウス!?」
悲鳴じみた声が聞こえ、慌てて倉庫の扉を開ける。倉庫の空きスペースに荷物を広げたウィリウスは、まさしくあの、宝箱から出たナイフを握っていた。武骨な解体用ナイフらしいそれを持ったまま、解体した蝙蝠の前で腰を下ろしている。
「何かあった? ウィリウス」
「あ……、その」
まんまるに開かれた目がこっちを見た。わけが分からないと言いたげな顔でこちらを見上げる彼は、ただ素材を解体していただけのように思える。ともかく怪我をしたとか、危険があったわけではないらしいので良かった。
「大丈夫?」
「あ、あぁ……。その、昨日の蝙蝠を、解体しようと思って。せっかくだからほら、お前の当てたナイフを使ってみようとして……ちょっと、腹に刃を入れた、だけのはずなんだ」
そろりとナイフを床に置き、軽く身振りを交えて説明してくれる。ただ、腹に刃を入れただけ、と言うには、彼の前に並んだ物は、かっちりと解体され仕分けられたアイテムたちだった。ウィリウスの顔とそれらを何度か見比べて、だけれどどうにも、彼は嘘を吐いているわけではないらしい。からかって楽しんでいる顔でないのは分かる。
「これ、全部解体されてるように見えるけど……」
「いや、そう……なんだけど、ほんとにちょっと刃を立てただけで」
2人して解体済みの蝙蝠の前へ座り込み、しげしげと眺めた。綺麗に毛皮と肉、骨に内臓が仕分けられていて、きっちりと並べられている。
「え……もう1回やってみる?」
「おう……」
戸惑いながら別の蝙蝠を用意し、ウィリウスがそっと刃を入れる。一瞬、蝙蝠の死体が白く光り……次に見えた時には、先程と同じくパーツに分けられて並べられていた。顔を見合わせ、現状が勘違いなどではないと確認する。
「……やっぱ金庫買おう。いいやつ」
「うん。なにこれチートアイテムじゃん……」
切れ味が良いとかの次元ではなく、解体が完了するマジックアイテムらしい。ゲーム知識にそんなものがあった覚えはない。そもそもゲームでは最初からアイテムでドロップしていた。解体の手順が必要なかったから……いや、むしろゲーム的な処理が出来るアイテムなのか? セーブポイントの代わりに置いてあったようなものだしな。
「俺が解体するよりよっぽど綺麗だ。この素材高く売れるぞ……」
「マジ?」
資金はあって困るものではない。単価が上がるなら使うべきだ。それに、もし誰でも同じことができるのなら、グロ耐性がなくても役に立てる。人数が足りないうちはなんでもできる仕事はやるべきだろう。問題は、そのクオリティの物をどうやって誤魔化して売却するかの方な気がする。
「俺もやってみて良い?」
「気を付けろよ」
「ん」
ウィリウスからナイフを受け取り、もう1匹蝙蝠を用意し同じ手順で刃を立てる。結果は同じだった。目の前には、まさしく『アイテム』のように綺麗に仕分けられた、蝙蝠だった物が3匹分。もう一度顔を見合わせてしまった。見なかったことにしたい気分もあったけれど、せっかく手に入れたからには使いたい。
……と、いうか、自分役がここに来たことで現れたセーブ代わりのチートアイテムなら、他の人に渡すと確実に色々問題が起きる。有難く着服して秘密にしておくのが正しいんじゃないだろうか。
「お前、これ何か知ってる?」
「ごめん、分かんない。けど絶対市場に出しちゃいけない気がしてる」
「それは俺も思ってる。アホみたいな値段付きそう」
「うちでこっそり使おう」
「そうするか……」
ウィリウスに従って、一旦アイテムたちの仕分けを手伝う。ナイフは脇に置いておくことにした。
ゲームでは手に入れれば売れる状態だったけど、現実だとそうはいかない。汚れた物は洗浄して、破損したものは破棄して、そしてナマモノはきちんと解体し素材にしてから売る。売買価格もアイテムの状態によって変化し、ウィリウスが狩ったこれらの蝙蝠は、毛皮に切り傷があるのでそれ以外の部位が主な収入になるそうだ。
「あー……解体上手い人探して、早めにもう1人雇う?」
「それが一番丸いかな……親父に頭下げて遠方から読んでもらうか……?」
前回は隠し通路の探索が主な目的だったから、アイテム整理はそこまで時間をかけずに終わらせることができた。こないだ売った成果物よりは少ないが、食事1回分くらいにはなりそうだ。
そうして、しっかり解体された蝙蝠やトカゲと武骨なナイフを前に、2人でまた難しい顔をする。
「俺の知ってる形に解体されてるから、俺関連の何かだと思うんだよな」
「めんどくせぇなお前の周り」
「ごめんて。……ところでさ、このナイフ、この肉に使ったらなんになるんだろ?」
ふと思いつき、ナイフを取って手近な肉を切り分けてみる。再び肉が光に包まれ……、そして、できたのは一口サイズの薄切り肉だった。串焼きで売ってそうなサイズだ。好奇心のまま、もう一度使ってみる。死骸が肉塊に、肉塊が切り落としに、切り落としは粗挽きくらいのミンチになった。これに使ったらどうなるんだろう、とウィリウスと2人でちょっとわくわくしつつ、少量のミンチをさらに細かくするべく刃を落とす。
かつん、と刃は床を打ち、ミンチ肉はどこにもなくなってしまった。本当に、細かくなったとかではなく、跡形もなく。このナイフはただ、アイテムを分解してアイテムにするものだと思っていたのだけど……どうも、そう簡単ではないらしい。
「…………誰にも言わないでおこう」
2人で青い顔を見合わせ、硬く心に誓った。
悲鳴じみた声が聞こえ、慌てて倉庫の扉を開ける。倉庫の空きスペースに荷物を広げたウィリウスは、まさしくあの、宝箱から出たナイフを握っていた。武骨な解体用ナイフらしいそれを持ったまま、解体した蝙蝠の前で腰を下ろしている。
「何かあった? ウィリウス」
「あ……、その」
まんまるに開かれた目がこっちを見た。わけが分からないと言いたげな顔でこちらを見上げる彼は、ただ素材を解体していただけのように思える。ともかく怪我をしたとか、危険があったわけではないらしいので良かった。
「大丈夫?」
「あ、あぁ……。その、昨日の蝙蝠を、解体しようと思って。せっかくだからほら、お前の当てたナイフを使ってみようとして……ちょっと、腹に刃を入れた、だけのはずなんだ」
そろりとナイフを床に置き、軽く身振りを交えて説明してくれる。ただ、腹に刃を入れただけ、と言うには、彼の前に並んだ物は、かっちりと解体され仕分けられたアイテムたちだった。ウィリウスの顔とそれらを何度か見比べて、だけれどどうにも、彼は嘘を吐いているわけではないらしい。からかって楽しんでいる顔でないのは分かる。
「これ、全部解体されてるように見えるけど……」
「いや、そう……なんだけど、ほんとにちょっと刃を立てただけで」
2人して解体済みの蝙蝠の前へ座り込み、しげしげと眺めた。綺麗に毛皮と肉、骨に内臓が仕分けられていて、きっちりと並べられている。
「え……もう1回やってみる?」
「おう……」
戸惑いながら別の蝙蝠を用意し、ウィリウスがそっと刃を入れる。一瞬、蝙蝠の死体が白く光り……次に見えた時には、先程と同じくパーツに分けられて並べられていた。顔を見合わせ、現状が勘違いなどではないと確認する。
「……やっぱ金庫買おう。いいやつ」
「うん。なにこれチートアイテムじゃん……」
切れ味が良いとかの次元ではなく、解体が完了するマジックアイテムらしい。ゲーム知識にそんなものがあった覚えはない。そもそもゲームでは最初からアイテムでドロップしていた。解体の手順が必要なかったから……いや、むしろゲーム的な処理が出来るアイテムなのか? セーブポイントの代わりに置いてあったようなものだしな。
「俺が解体するよりよっぽど綺麗だ。この素材高く売れるぞ……」
「マジ?」
資金はあって困るものではない。単価が上がるなら使うべきだ。それに、もし誰でも同じことができるのなら、グロ耐性がなくても役に立てる。人数が足りないうちはなんでもできる仕事はやるべきだろう。問題は、そのクオリティの物をどうやって誤魔化して売却するかの方な気がする。
「俺もやってみて良い?」
「気を付けろよ」
「ん」
ウィリウスからナイフを受け取り、もう1匹蝙蝠を用意し同じ手順で刃を立てる。結果は同じだった。目の前には、まさしく『アイテム』のように綺麗に仕分けられた、蝙蝠だった物が3匹分。もう一度顔を見合わせてしまった。見なかったことにしたい気分もあったけれど、せっかく手に入れたからには使いたい。
……と、いうか、自分役がここに来たことで現れたセーブ代わりのチートアイテムなら、他の人に渡すと確実に色々問題が起きる。有難く着服して秘密にしておくのが正しいんじゃないだろうか。
「お前、これ何か知ってる?」
「ごめん、分かんない。けど絶対市場に出しちゃいけない気がしてる」
「それは俺も思ってる。アホみたいな値段付きそう」
「うちでこっそり使おう」
「そうするか……」
ウィリウスに従って、一旦アイテムたちの仕分けを手伝う。ナイフは脇に置いておくことにした。
ゲームでは手に入れれば売れる状態だったけど、現実だとそうはいかない。汚れた物は洗浄して、破損したものは破棄して、そしてナマモノはきちんと解体し素材にしてから売る。売買価格もアイテムの状態によって変化し、ウィリウスが狩ったこれらの蝙蝠は、毛皮に切り傷があるのでそれ以外の部位が主な収入になるそうだ。
「あー……解体上手い人探して、早めにもう1人雇う?」
「それが一番丸いかな……親父に頭下げて遠方から読んでもらうか……?」
前回は隠し通路の探索が主な目的だったから、アイテム整理はそこまで時間をかけずに終わらせることができた。こないだ売った成果物よりは少ないが、食事1回分くらいにはなりそうだ。
そうして、しっかり解体された蝙蝠やトカゲと武骨なナイフを前に、2人でまた難しい顔をする。
「俺の知ってる形に解体されてるから、俺関連の何かだと思うんだよな」
「めんどくせぇなお前の周り」
「ごめんて。……ところでさ、このナイフ、この肉に使ったらなんになるんだろ?」
ふと思いつき、ナイフを取って手近な肉を切り分けてみる。再び肉が光に包まれ……、そして、できたのは一口サイズの薄切り肉だった。串焼きで売ってそうなサイズだ。好奇心のまま、もう一度使ってみる。死骸が肉塊に、肉塊が切り落としに、切り落としは粗挽きくらいのミンチになった。これに使ったらどうなるんだろう、とウィリウスと2人でちょっとわくわくしつつ、少量のミンチをさらに細かくするべく刃を落とす。
かつん、と刃は床を打ち、ミンチ肉はどこにもなくなってしまった。本当に、細かくなったとかではなく、跡形もなく。このナイフはただ、アイテムを分解してアイテムにするものだと思っていたのだけど……どうも、そう簡単ではないらしい。
「…………誰にも言わないでおこう」
2人で青い顔を見合わせ、硬く心に誓った。
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