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Sisi
あんまりえっちではないですがちゅーはしてます。
――――――――――――――――――――
「なぁシン、髪やって」
「ん? おう」
夕食を食べ終わり、食器を皿洗い担当使い魔に任せたのち、ウィリウスに呼ばれてそばへ向かう。手に櫛と香油らしきものを持っているから、髪の手入れをして欲しいのだろう。背後に立って櫛と香油を受け取り、とりあえず髪を梳かしてみた。さっき軽く拭いただけなのに、軋んだりせずすっと櫛の歯が通る。つやつや真っ赤な御髪で羨ましいことだ。
「えーと……手で髪に馴染ませて梳かして……」
なんとなくで思い出した手順を口に出しつつ、ちょっと怖いので香油は少しだけにする。硬めで跳ね気味の、襟足と前髪の伸びた、燃えるような美しい赤。頼まれたのを良いことに、好きなだけ触って愛でる。櫛でゆっくり梳かして香油を毛先に染み込ませた。よく手入れされているんだろうな、と毛先を揉みながら思う。
ウィリウスは、大人しくうなじを晒して椅子に座っている。出会って数日と言って良い親密度の輩にここまで急所を見せるのは正直どうかと思うのだけれど、まあ信用してくれているので嬉しいことだ。ついでに軽く頭皮マッサージの真似ごとなんかもして、はいおしまい、と肩を叩く。
「ありがと」
「どーも。適当にやったけどこんなんでよかったか?」
「十分だよ」
彼は満足げに髪を触っていた。以前も使用人にやって貰っていたのだろうか、彼は世話を焼かれるのに慣れている節がある。やりたいからやっているので別に構わないけど。いくらアイテムで実質奴隷化したといっても、こういうところの性質は変わらないらしい。主人がこの振る舞いを許している、というのも一因だろう。
「キレーな髪してるよな、ウィリウス」
「そうか? シシ―は髪と料理が売りだったぞ、お前の方が髪質は良いんじゃないか。細くてまっすぐで……綺麗な蜂蜜色の金髪だ」
「え、なに。急に褒めるじゃん」
大きな手がするりと首元を伝って髪を触る。たしかにつやつやで綺麗な長髪だとは思っていたけれど、そんなに上等な商品価値だったのか。くいくい、と軽く髪を引かれ、されるがまま顔を近づける。猫がするみたいに擦り寄られた。
「いいにおい?」
「んあ? え、うん」
シトラス系の爽やかな甘さが、顔を近づけるとほのかに香ってくる。ふ、と目を細めて色っぽく微笑むイケメンと相まってなかなかの破壊力だ。そっともう片方の手で頬を固定されるのも、萌葱色の瞳に見つめられるのも、悪くない。真意の分からないまま、『隷属の鎖』の効果を信じてされるがままに任せる。
「この香油な、体の持ち主が選んで買ってきたやつなんだ。良い匂いだって。アイツも風呂の後には髪の手入れしてマッサージしてくれて、自分の髪にも使って良いって言ったら喜んでた。お前と違って無口だし大人しいし全然主張しねぇ奴だったけど、アイツも鳥の串焼きは好きだった」
懐かしむような、俺を通して遠くを見るような視線は思いの外優しい。さらさらと指先で金の毛先を遊ぶ彼は、柔く口角を上げてこちらを見上げている。俺ではない誰かのことを語るウィリウスは、ゆったりと静かに、俺の思い出せないことを話す。おぼろげに体が記憶しているような気もしたし、全く知らない誰かのことを聞いている気もした。頬を撫でる骨張った指は、身体をいたわるように柔らかくて優しい。
「……俺、謝った方が良い?」
ああ、と得心がいったけれど、思っていたより恐怖は無かった。アイテム効果かそれとも、別の何かが働いているのかは分からない。ただ、先日ダンジョンで遭った蝙蝠なんかよりよっぽど強いはずのウィリウスが、俺にはちっとも怖くなかった。
「いいや、俺もどういう顔して良いのかまだ分からん。お前も分かってないんだろ」
「うん。……正直都合の良い夢かなとは」
ちらっと読んだだけの魔法はまだちんぷんかんぷんだし、プログラムが得意なわけでも、神やらなんやらの類にあったわけでもない。調整部屋で寝て、目が覚めたら別の日常が待っていると言われた方がまだ納得できるくらいだ。ウィリウスでお手上げなら、実際にこっちの世界を知らない俺が何か分かるわけもない。
「そうか。……でも、ああ、そうだな。モンスターに怯える顔はそっくりだ」
「そりゃまあ……造形は一緒だからな」
「いや、笑った顔とか全然違うぞ。アイツはもっと奥ゆかしい」
「なにおう」
頬を撫でていた手が後頭部に回る。そっと請われるまま腰をかがめて、顔を近づけた。やわい唇が触れる。僅かに離れたあと、今度は舌が。ぬるりと粘膜が。ちゅる、と微かな音をたててすぐに開放されたけれど、指に絡められた髪と後頭部はまだ引き寄せられたままだ。
どこかうっとり優しげに笑うウィリウスは、なんとも艶っぽく微笑んで唇を舐める。離される気配のない両手をちらと見て、ほんとにこいつキス好きだなぁ、と思った。それから、どうやら俺の髪を弄るのがお気に召したらしいというのも。……正直長くて邪魔だからそのうち切ろうと思っていたんだけど、短髪にしたら怒るかなぁ?
「ごめんね、ウィリウス」
「良いよ。次なんとかなる時は相談してくれ」
「相談できたらそうするよ……」
しばらく中腰の体勢でウィリウスに愛でられ、それから面倒になったのかまたひょいと膝に抱えられた。体格的にしかたがないとはいえ……ダンジョン探索の件もあるし、やっぱり頑張って鍛えよう。ウィリウスを姫抱き出来るくらいになりたい。
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「なぁシン、髪やって」
「ん? おう」
夕食を食べ終わり、食器を皿洗い担当使い魔に任せたのち、ウィリウスに呼ばれてそばへ向かう。手に櫛と香油らしきものを持っているから、髪の手入れをして欲しいのだろう。背後に立って櫛と香油を受け取り、とりあえず髪を梳かしてみた。さっき軽く拭いただけなのに、軋んだりせずすっと櫛の歯が通る。つやつや真っ赤な御髪で羨ましいことだ。
「えーと……手で髪に馴染ませて梳かして……」
なんとなくで思い出した手順を口に出しつつ、ちょっと怖いので香油は少しだけにする。硬めで跳ね気味の、襟足と前髪の伸びた、燃えるような美しい赤。頼まれたのを良いことに、好きなだけ触って愛でる。櫛でゆっくり梳かして香油を毛先に染み込ませた。よく手入れされているんだろうな、と毛先を揉みながら思う。
ウィリウスは、大人しくうなじを晒して椅子に座っている。出会って数日と言って良い親密度の輩にここまで急所を見せるのは正直どうかと思うのだけれど、まあ信用してくれているので嬉しいことだ。ついでに軽く頭皮マッサージの真似ごとなんかもして、はいおしまい、と肩を叩く。
「ありがと」
「どーも。適当にやったけどこんなんでよかったか?」
「十分だよ」
彼は満足げに髪を触っていた。以前も使用人にやって貰っていたのだろうか、彼は世話を焼かれるのに慣れている節がある。やりたいからやっているので別に構わないけど。いくらアイテムで実質奴隷化したといっても、こういうところの性質は変わらないらしい。主人がこの振る舞いを許している、というのも一因だろう。
「キレーな髪してるよな、ウィリウス」
「そうか? シシ―は髪と料理が売りだったぞ、お前の方が髪質は良いんじゃないか。細くてまっすぐで……綺麗な蜂蜜色の金髪だ」
「え、なに。急に褒めるじゃん」
大きな手がするりと首元を伝って髪を触る。たしかにつやつやで綺麗な長髪だとは思っていたけれど、そんなに上等な商品価値だったのか。くいくい、と軽く髪を引かれ、されるがまま顔を近づける。猫がするみたいに擦り寄られた。
「いいにおい?」
「んあ? え、うん」
シトラス系の爽やかな甘さが、顔を近づけるとほのかに香ってくる。ふ、と目を細めて色っぽく微笑むイケメンと相まってなかなかの破壊力だ。そっともう片方の手で頬を固定されるのも、萌葱色の瞳に見つめられるのも、悪くない。真意の分からないまま、『隷属の鎖』の効果を信じてされるがままに任せる。
「この香油な、体の持ち主が選んで買ってきたやつなんだ。良い匂いだって。アイツも風呂の後には髪の手入れしてマッサージしてくれて、自分の髪にも使って良いって言ったら喜んでた。お前と違って無口だし大人しいし全然主張しねぇ奴だったけど、アイツも鳥の串焼きは好きだった」
懐かしむような、俺を通して遠くを見るような視線は思いの外優しい。さらさらと指先で金の毛先を遊ぶ彼は、柔く口角を上げてこちらを見上げている。俺ではない誰かのことを語るウィリウスは、ゆったりと静かに、俺の思い出せないことを話す。おぼろげに体が記憶しているような気もしたし、全く知らない誰かのことを聞いている気もした。頬を撫でる骨張った指は、身体をいたわるように柔らかくて優しい。
「……俺、謝った方が良い?」
ああ、と得心がいったけれど、思っていたより恐怖は無かった。アイテム効果かそれとも、別の何かが働いているのかは分からない。ただ、先日ダンジョンで遭った蝙蝠なんかよりよっぽど強いはずのウィリウスが、俺にはちっとも怖くなかった。
「いいや、俺もどういう顔して良いのかまだ分からん。お前も分かってないんだろ」
「うん。……正直都合の良い夢かなとは」
ちらっと読んだだけの魔法はまだちんぷんかんぷんだし、プログラムが得意なわけでも、神やらなんやらの類にあったわけでもない。調整部屋で寝て、目が覚めたら別の日常が待っていると言われた方がまだ納得できるくらいだ。ウィリウスでお手上げなら、実際にこっちの世界を知らない俺が何か分かるわけもない。
「そうか。……でも、ああ、そうだな。モンスターに怯える顔はそっくりだ」
「そりゃまあ……造形は一緒だからな」
「いや、笑った顔とか全然違うぞ。アイツはもっと奥ゆかしい」
「なにおう」
頬を撫でていた手が後頭部に回る。そっと請われるまま腰をかがめて、顔を近づけた。やわい唇が触れる。僅かに離れたあと、今度は舌が。ぬるりと粘膜が。ちゅる、と微かな音をたててすぐに開放されたけれど、指に絡められた髪と後頭部はまだ引き寄せられたままだ。
どこかうっとり優しげに笑うウィリウスは、なんとも艶っぽく微笑んで唇を舐める。離される気配のない両手をちらと見て、ほんとにこいつキス好きだなぁ、と思った。それから、どうやら俺の髪を弄るのがお気に召したらしいというのも。……正直長くて邪魔だからそのうち切ろうと思っていたんだけど、短髪にしたら怒るかなぁ?
「ごめんね、ウィリウス」
「良いよ。次なんとかなる時は相談してくれ」
「相談できたらそうするよ……」
しばらく中腰の体勢でウィリウスに愛でられ、それから面倒になったのかまたひょいと膝に抱えられた。体格的にしかたがないとはいえ……ダンジョン探索の件もあるし、やっぱり頑張って鍛えよう。ウィリウスを姫抱き出来るくらいになりたい。
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