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Clothes
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「それじゃ、よろしくお願いします」
「はいよ。出来上がったら組合に連絡するから、受け取り来てくださいな」
ウィリウスに全部任せていた金庫の注文は、30分ほどで無事に済んだようだ。俺には半分ほど意味の分からない専門用語だったが、2人の表情を見るに良い取引ができたらしい。良かったよかった。
「この後もどこか寄るのか?」
「ん。お前の服買おうと思って。いるだろ?」
「あー……思いっきり着られてるもんな」
ウィリウスの身内ということにしている以上、それなりの恰好をしないといけないので俺の外出着は全てウィリウスと共有だ。彼の方が二回りほど体格が良いので、つまり奴の服は全部俺のオーバーサイズなのである。今は裾を折り込んでなんとか不格好でないように整えているだけだ。ウィリウスが。
「シシーのはいくらかあるけど、あれは奴隷用だから」
「大変だな貴族って」
分からないから全部任せるよ、と言ってついて行く。あいかわらず店の前で手を差し出され、ぎゅっと繋がれて先導された。もう慣れたので恥ずかしさはない。そのまましばらく歩いて、大きなショーウィンドウのある呉服屋までやって来た。冒険者専用の、というわけではなく、普通のお店らしい。古着屋よりは高価そうな印象だ。
「ここ?」
「ん。とりあえず一揃い5着ずつくらいありゃいいだろ」
慣れた様子で扉を開けたウィリウスは、そのまま迷いなく商品の列へ向かって行く。ぎっしりと衣服の詰められた棚がいくつも並ぶ店内は、少し埃っぽいにおいがした。まともな服を選ぶのはウィリウスに任せ、俺は適当に店内を見て回る。ここも古着が多いのか……とか、新しそうなのは高いな……とか、そんなことを考えながら棚の間を歩く。ゲームの中では価格が若干上下するくらいで古着も何もなかった服たちだけれど、こうして見てみると色や形、それから使い込みによるほつれや汚れなんかが1つひとつ違う。ゲームでは再現出来ていない部分で、ああこういうことだったのかなと考察がつながるのは面白かった。
「おい、シン。こっち来て試着してくれ」
「ん。はーい」
店員と一緒に真剣な顔で服を選んでいたウィリウスからお呼びがかかる。その手にはどう見ても5着以上の商品がこんもり盛られていた。……今日は長くなりそうだ。
「俺別に……着られれば良いんだけど」
「だめ。俺の親族って言って通すんだから、それなりの格好してもらわねぇと」
「……へーい」
お洒落や作法にはあまり詳しくない。オーバーサイズでなければ良いと難色を示してみたのだけれど、ウィリウス的には許容出来ないらしい。最初はこれ、と服を一式押し付けられ、あれよという間に試着室へ押し込まれた。俺にはウィリウスが手に持っていた服たちと渡された服の違いすらよく分からない。が、ここは生粋貴族のウィリウスへ任せておくのが吉だろう。ゲームの中でも身分ある人との取引や交渉事はウィリ兄さんの役割だったし。
そう思って大人しく、渡されるまま服を着たり脱いだり組み合わせを変えたりと試着を繰り返した結果、ウィリウスの満足いく5着セットを選び終えた頃には、外はすでに暗くなり始めていた。着せ替え人形にされた俺はぐったりしていたが、ウィリウスは良い買い物をしたとほくほくの顔。包んでもらった服を両手に提げ、ついでとばかりに俺の手も握って屋敷へ戻る。途中買い食いする元気もなく、今日は家でなにか作ろう、と話しながら帰宅。
「……疲れた」
「お疲れさん。シシーの物入れじゃシワになるから、しばらくは俺の服と一緒に管理するぞ」
「頼む……俺はもうだめだ……」
「おーい、ベッド行くなら着替えろよ。着て帰ったそれ外出用のなんだから」
あれだけ店員と一緒になって俺を着せ替え人形にしていたウィリウスはけろっとした顔で買ってきた服を揃え、自分の服がしまってあるクローゼットへ収納していた。その体力分けて欲しい。慣れている、というのもあるのだろうが、この間のダンジョンとはまた別の体力を使った気がする。もう当分買い物は良いかなあ……。
もそもそと服を脱ぎ、ウィリウスへ投げ渡す。下着姿でベッドに寝転ぶ俺へ、彼は呆れたような目を向けたが、咎めることはしなかった。俺の……というか、俺の身体の体力の無さは俺以上に知っているからだろう。あるいは隷属の鎖の効果なのかもしれないが。
「ウィリ兄さーん、俺の部屋着取ってー」
「そのくらい自分で取りに来い」
ベッドにごろんと仰向けになったまま怠惰に手を伸ばすと、せっせと洋服をしまい込んでいたウィリウスがため息を付いた。顔をしかめつつ、それでも脇にあるシシーの物入れへ手を伸ばす。ぽい、と服が投げ渡され、俺はそのままベッドに転がりながら楽な服装へ着替えた。
これでウィリウスと対等に話してても安心、というわけでは無かろうが、見た目の体裁は整った。あとはなんとかかんとかゲーム知識を駆使しながら、ストーリー進行で詰まないようにするだけだ。……それが1番難しいような気がしなくもないけれど。
今はとりあえず、自分も楽な部屋着に着替えてベッドへ腰を下ろしたウィリ兄さんに、膝枕をねだることから始めようと思う。
「はいよ。出来上がったら組合に連絡するから、受け取り来てくださいな」
ウィリウスに全部任せていた金庫の注文は、30分ほどで無事に済んだようだ。俺には半分ほど意味の分からない専門用語だったが、2人の表情を見るに良い取引ができたらしい。良かったよかった。
「この後もどこか寄るのか?」
「ん。お前の服買おうと思って。いるだろ?」
「あー……思いっきり着られてるもんな」
ウィリウスの身内ということにしている以上、それなりの恰好をしないといけないので俺の外出着は全てウィリウスと共有だ。彼の方が二回りほど体格が良いので、つまり奴の服は全部俺のオーバーサイズなのである。今は裾を折り込んでなんとか不格好でないように整えているだけだ。ウィリウスが。
「シシーのはいくらかあるけど、あれは奴隷用だから」
「大変だな貴族って」
分からないから全部任せるよ、と言ってついて行く。あいかわらず店の前で手を差し出され、ぎゅっと繋がれて先導された。もう慣れたので恥ずかしさはない。そのまましばらく歩いて、大きなショーウィンドウのある呉服屋までやって来た。冒険者専用の、というわけではなく、普通のお店らしい。古着屋よりは高価そうな印象だ。
「ここ?」
「ん。とりあえず一揃い5着ずつくらいありゃいいだろ」
慣れた様子で扉を開けたウィリウスは、そのまま迷いなく商品の列へ向かって行く。ぎっしりと衣服の詰められた棚がいくつも並ぶ店内は、少し埃っぽいにおいがした。まともな服を選ぶのはウィリウスに任せ、俺は適当に店内を見て回る。ここも古着が多いのか……とか、新しそうなのは高いな……とか、そんなことを考えながら棚の間を歩く。ゲームの中では価格が若干上下するくらいで古着も何もなかった服たちだけれど、こうして見てみると色や形、それから使い込みによるほつれや汚れなんかが1つひとつ違う。ゲームでは再現出来ていない部分で、ああこういうことだったのかなと考察がつながるのは面白かった。
「おい、シン。こっち来て試着してくれ」
「ん。はーい」
店員と一緒に真剣な顔で服を選んでいたウィリウスからお呼びがかかる。その手にはどう見ても5着以上の商品がこんもり盛られていた。……今日は長くなりそうだ。
「俺別に……着られれば良いんだけど」
「だめ。俺の親族って言って通すんだから、それなりの格好してもらわねぇと」
「……へーい」
お洒落や作法にはあまり詳しくない。オーバーサイズでなければ良いと難色を示してみたのだけれど、ウィリウス的には許容出来ないらしい。最初はこれ、と服を一式押し付けられ、あれよという間に試着室へ押し込まれた。俺にはウィリウスが手に持っていた服たちと渡された服の違いすらよく分からない。が、ここは生粋貴族のウィリウスへ任せておくのが吉だろう。ゲームの中でも身分ある人との取引や交渉事はウィリ兄さんの役割だったし。
そう思って大人しく、渡されるまま服を着たり脱いだり組み合わせを変えたりと試着を繰り返した結果、ウィリウスの満足いく5着セットを選び終えた頃には、外はすでに暗くなり始めていた。着せ替え人形にされた俺はぐったりしていたが、ウィリウスは良い買い物をしたとほくほくの顔。包んでもらった服を両手に提げ、ついでとばかりに俺の手も握って屋敷へ戻る。途中買い食いする元気もなく、今日は家でなにか作ろう、と話しながら帰宅。
「……疲れた」
「お疲れさん。シシーの物入れじゃシワになるから、しばらくは俺の服と一緒に管理するぞ」
「頼む……俺はもうだめだ……」
「おーい、ベッド行くなら着替えろよ。着て帰ったそれ外出用のなんだから」
あれだけ店員と一緒になって俺を着せ替え人形にしていたウィリウスはけろっとした顔で買ってきた服を揃え、自分の服がしまってあるクローゼットへ収納していた。その体力分けて欲しい。慣れている、というのもあるのだろうが、この間のダンジョンとはまた別の体力を使った気がする。もう当分買い物は良いかなあ……。
もそもそと服を脱ぎ、ウィリウスへ投げ渡す。下着姿でベッドに寝転ぶ俺へ、彼は呆れたような目を向けたが、咎めることはしなかった。俺の……というか、俺の身体の体力の無さは俺以上に知っているからだろう。あるいは隷属の鎖の効果なのかもしれないが。
「ウィリ兄さーん、俺の部屋着取ってー」
「そのくらい自分で取りに来い」
ベッドにごろんと仰向けになったまま怠惰に手を伸ばすと、せっせと洋服をしまい込んでいたウィリウスがため息を付いた。顔をしかめつつ、それでも脇にあるシシーの物入れへ手を伸ばす。ぽい、と服が投げ渡され、俺はそのままベッドに転がりながら楽な服装へ着替えた。
これでウィリウスと対等に話してても安心、というわけでは無かろうが、見た目の体裁は整った。あとはなんとかかんとかゲーム知識を駆使しながら、ストーリー進行で詰まないようにするだけだ。……それが1番難しいような気がしなくもないけれど。
今はとりあえず、自分も楽な部屋着に着替えてベッドへ腰を下ろしたウィリ兄さんに、膝枕をねだることから始めようと思う。
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