5 / 64
第1話
1-5+
しおりを挟む
「ゎ、……っわかった。おまえの言うとおりにする。言うとおりに、するから」
このうえ母后まで殺されてしまうわけにはいかず、紗琰は瓊祥にすがりついた。
白膚をほんのりと朱に染めた瓊祥は、必死に頷く紗琰の顎をすくいあげ、くちびるを深く重ねてくる。
「っ、ん……っぅ、あ」
唾液を纏った舌が絡みつき、ねっとりと口腔を愛撫されて背筋が戦慄く。
少しでも機嫌を損ねてしまわぬよう、紗琰はふるえながらも与えられるくちづけに応えた。
気をよくしたらしい瓊祥は、紗琰を抱き寄せて嬉しそうに微笑う。
「かわいいにいさま。安心してください、にいさまのおねだりなら、小瓊はなんでも叶えてさしあげますもの。ねえ、にいさま、小瓊はいいこでしょう? にいさまも褒めてくださいますよね」
「ん、ン……っ」
「小瓊のこと、いっぱいよしよしして」
愛らしい顔で乞われ、紗琰はぎこちない動きで瓊祥の頭を撫でた。
絹糸のようにやわらかな髪を指で梳くたび、瓊祥は甘えた猫のように喉を鳴らす。
「にいさま大好き。これからは俺がにいさまの夫君として、たくさん愛してさしあげますからね。番になれて本当に嬉しい」
「ぁ、っあ、小……っ小、瓊、ひッ、〰〰っ!」
「にいさま、にいさま、俺だけの紗琰……」
抽挿が徐々に激しくなり、奥深くをえぐられる感覚にたまらず嬌声が漏れる。
仰け反って喘いだ紗琰をきつく抱きすくめて、瓊祥は幾度も蜜壺のなかに精をそそぎこんだ。
***
数日後、紗琰は病を理由に瓊祥へ皇位を譲り、自らは太上皇となって白朝へ隠居した。
紗琰の正室であった沈嫣寧は皇太后ではなく右丞相の地位につき、後宮にいた妃嬪たちは、貴太妃となった魏希月以外全員がそのまま瓊祥の側室となった。
践祚は大々的に行われ、瓊祥が沈氏と番い、子を身籠っていることも公表された。
巷間では、傍系である瓊祥の皇位を盤石にするため、紗琰がわざわざ沈氏と番わせたのだという噂がまことしやかに広がっていた。しかれども瓊祥には想い人がおり、沈氏も太上皇への敬慕を失ったわけではないため、皇后には別の者が選ばれ、沈氏は丞相位につくことでまるく収めたのだと。
(……嫣寧ならば、兄上たちや顕官らを説得するのも容易かったろう)
譲位の意を伝えても、大臣たちから反対の声はあがらなかった。
封土を賜っている二人の兄と、母后の弟である大司馬の三人だけはさすがに拝謁を希望してきたけれど、瓊祥が手を廻して断ってしまった。あまりにも病が重いゆえ、太医以外と会うことはできないとでも言ったのだろう。
紗琰は薄絹の単衣を纏い、牀榻に腰かけたままぼんやりと月洞窓の外を眺める。
あわい陽射しが差し込み、入り込んできた花風がやわらかく床帳を揺らした。
ここは後宮の西――白朝と呼ばれる太上皇の居処ではない。瓊祥は、病状の悪化を防ぐためという理由で白朝を封鎖し、何人たりとも太上皇を訪ねられないようにした。一方で、紗琰に芳燕という偽名を与え、皇后の宮たる龍華宮に監禁したのである。
芳姫と紗琰が同一人物であると知られるわけにはいかないため、皇后は病弱ゆえに人前には出られないと説明し、後宮は太皇太后が纏めている。
紗琰が逃げ出さぬよう、殿舎に仕える女官や宦官は瓊祥の息のかかった者へと変えられてしまった。
皇帝時代の側仕えは全員罷免され、幼い頃から仕えてくれていた主席太監は、雨嫻が死んだ日に処刑されたらしい。啼泣して理由を尋ねた紗琰に、瓊祥は「害意を持っていた妃から帝君を守れなかったのですから、当然でしょう」と何事もなかったかのように答えた。そうして、琳氏一族が雨嫻とともに誅九族に処されたことも、ついでのように教えられた。
紗琰が大人しくしていなければ、母后も彼らと同じ末路をたどってしまう。瓊祥は口にこそ出さないものの、暗に示唆しているのは明白だった。
そんなふうに脅されてしまえば、拒むことも逃げ出すこともできない。紗琰は瓊祥の機嫌を損ねてしまわぬよう、求められるまま朝な夕な抱かれるしかなかった。
このうえ母后まで殺されてしまうわけにはいかず、紗琰は瓊祥にすがりついた。
白膚をほんのりと朱に染めた瓊祥は、必死に頷く紗琰の顎をすくいあげ、くちびるを深く重ねてくる。
「っ、ん……っぅ、あ」
唾液を纏った舌が絡みつき、ねっとりと口腔を愛撫されて背筋が戦慄く。
少しでも機嫌を損ねてしまわぬよう、紗琰はふるえながらも与えられるくちづけに応えた。
気をよくしたらしい瓊祥は、紗琰を抱き寄せて嬉しそうに微笑う。
「かわいいにいさま。安心してください、にいさまのおねだりなら、小瓊はなんでも叶えてさしあげますもの。ねえ、にいさま、小瓊はいいこでしょう? にいさまも褒めてくださいますよね」
「ん、ン……っ」
「小瓊のこと、いっぱいよしよしして」
愛らしい顔で乞われ、紗琰はぎこちない動きで瓊祥の頭を撫でた。
絹糸のようにやわらかな髪を指で梳くたび、瓊祥は甘えた猫のように喉を鳴らす。
「にいさま大好き。これからは俺がにいさまの夫君として、たくさん愛してさしあげますからね。番になれて本当に嬉しい」
「ぁ、っあ、小……っ小、瓊、ひッ、〰〰っ!」
「にいさま、にいさま、俺だけの紗琰……」
抽挿が徐々に激しくなり、奥深くをえぐられる感覚にたまらず嬌声が漏れる。
仰け反って喘いだ紗琰をきつく抱きすくめて、瓊祥は幾度も蜜壺のなかに精をそそぎこんだ。
***
数日後、紗琰は病を理由に瓊祥へ皇位を譲り、自らは太上皇となって白朝へ隠居した。
紗琰の正室であった沈嫣寧は皇太后ではなく右丞相の地位につき、後宮にいた妃嬪たちは、貴太妃となった魏希月以外全員がそのまま瓊祥の側室となった。
践祚は大々的に行われ、瓊祥が沈氏と番い、子を身籠っていることも公表された。
巷間では、傍系である瓊祥の皇位を盤石にするため、紗琰がわざわざ沈氏と番わせたのだという噂がまことしやかに広がっていた。しかれども瓊祥には想い人がおり、沈氏も太上皇への敬慕を失ったわけではないため、皇后には別の者が選ばれ、沈氏は丞相位につくことでまるく収めたのだと。
(……嫣寧ならば、兄上たちや顕官らを説得するのも容易かったろう)
譲位の意を伝えても、大臣たちから反対の声はあがらなかった。
封土を賜っている二人の兄と、母后の弟である大司馬の三人だけはさすがに拝謁を希望してきたけれど、瓊祥が手を廻して断ってしまった。あまりにも病が重いゆえ、太医以外と会うことはできないとでも言ったのだろう。
紗琰は薄絹の単衣を纏い、牀榻に腰かけたままぼんやりと月洞窓の外を眺める。
あわい陽射しが差し込み、入り込んできた花風がやわらかく床帳を揺らした。
ここは後宮の西――白朝と呼ばれる太上皇の居処ではない。瓊祥は、病状の悪化を防ぐためという理由で白朝を封鎖し、何人たりとも太上皇を訪ねられないようにした。一方で、紗琰に芳燕という偽名を与え、皇后の宮たる龍華宮に監禁したのである。
芳姫と紗琰が同一人物であると知られるわけにはいかないため、皇后は病弱ゆえに人前には出られないと説明し、後宮は太皇太后が纏めている。
紗琰が逃げ出さぬよう、殿舎に仕える女官や宦官は瓊祥の息のかかった者へと変えられてしまった。
皇帝時代の側仕えは全員罷免され、幼い頃から仕えてくれていた主席太監は、雨嫻が死んだ日に処刑されたらしい。啼泣して理由を尋ねた紗琰に、瓊祥は「害意を持っていた妃から帝君を守れなかったのですから、当然でしょう」と何事もなかったかのように答えた。そうして、琳氏一族が雨嫻とともに誅九族に処されたことも、ついでのように教えられた。
紗琰が大人しくしていなければ、母后も彼らと同じ末路をたどってしまう。瓊祥は口にこそ出さないものの、暗に示唆しているのは明白だった。
そんなふうに脅されてしまえば、拒むことも逃げ出すこともできない。紗琰は瓊祥の機嫌を損ねてしまわぬよう、求められるまま朝な夕な抱かれるしかなかった。
30
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
最愛の番になる話
屑籠
BL
坂牧というアルファの名家に生まれたベータの咲也。
色々あって、坂牧の家から逃げ出そうとしたら、運命の番に捕まった話。
誤字脱字とうとう、あるとは思いますが脳内補完でお願いします。
久しぶりに書いてます。長い。
完結させるぞって意気込んで、書いた所まで。
断罪回避のために親友と仮婚約したはずが、想像以上に執着されていた。
鷲井戸リミカ
BL
ある日アーサーは、自分がネット小説の世界に転生していることに気が付いた。前世の記憶によれば親友のフェルディナンドは、悪役令息という役割らしい。最終的に婚約者から婚約破棄され、断罪後は国外追放されてしまうのだとか。
大事な親友が不幸になるのを見過ごすわけにはいかない。とにかく物語の主人公たちから距離をとらせようと、アーサーはフェルディナンドを自分の婚約者にしてしまった。
とりあえず仮婚約という形にしておいて、学園を卒業したら婚約を解消してしまえばいい。そう考えていたはずがアーサーのとある発言をきっかけに、フェルディナンドの執着が明らかになり……。
ハッピーエンドです。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
薄紅の檻、月下の契り
雪兎
BL
あらすじ
大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。
没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。
しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。
鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。
一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。
冷ややかな契約婚として始まった同居生活。
だが、伊織は次第に知ることになる。
鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。
発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。
伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。
月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。
大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる