鳳花春閨伝―死に戻りの皇帝は四人の妃に愛される―

鮎川アキ

文字の大きさ
6 / 64
第1話

1-6+

しおりを挟む

 殿舎の外の様子は、時折聞こえてくる女官たちのおしゃべりで窺い知る程度だった。
 それによれば、朝廷では宗室の長となった叔父と、左右丞相ら臣下たちとの間で対立が起こっているらしい。政に関心を示さない瓊祥にかわり、叔父が独断で命を下そうとして顕官らの反感を買ったとか。帝君の父親という立場を笠に着て、京師みやこで傍若無人な振る舞いを行っているとか。批判的な言動をした民を牢に入れて拷問したなどという話もあり、紗琰は心ある獄吏が民を逃がしてくれることを願うしかなかった。
「哥哥、また外を見ているの?」
 粒真珠の珠簾しゅれんがしゃらしゃらと音をたて、龍袍りゅうほうを纏った瓊祥が房室へやへ入ってくる。
 紗琰は重たい頭をゆっくりともたげ、艶花あでやかな玉容を見あげた。
「……小瓊」
「今日は風が気持ち良いから、内院なかにわで昼餉にしましょうか。哥哥のお好きな御菜おかずをたくさん用意させましょうね」
 瓊祥は紗琰の躰を抱き寄せ、甘えるように額をこすりつけてくる。
 まだ政務の時間だろうに、とは思っても口には出さなかった。閉じ込められて間もない頃にそれを言って、瓊祥がひどく機嫌を悪くしたからだ。
 紗琰は黙ったまま目の前の躰を抱き返し、薔薇の香りのする胸に身を預ける。こうすると瓊祥が喜ぶのだと知ったのも、ごく最近のことだ。
 案の定、瓊祥は嬉しそうに微笑み、くちづけを降らせてきた。
「哥哥。昼餉の前に、あなたを食べたくなってしまいました。小瓊に花蜜みつをちょうだい」
 やわらかくくちびるを食まれて、返事をする間もなく深く貪られる。
 褥へ押し倒され、簡単に結んだだけだった帯をほどかれれば、愛撫の跡の残る白膚が露わになった。瓊祥の手が腰をなぞり、太腿をたどって両脚の間に差し込まれる。
「ぁ、っ……」
 朝方まで抱かれていたせいか、軽く触れられただけで花襞が指先に吸いつくのを感じた。やわらかくほぐれたままの秘蕾は愛撫を求めてひくつき、瓊祥が花容に喜色をにじませる。
「もしかして、哥哥も待ち遠だったのですか? こんなにとろとろにして、……寂しがらせてごめんなさい。すぐにいっぱい愛してさしあげますからね」
「っ、ッ、小瓊、ン……っ」
 侵入した指が、くちゅりと音をたてて襞をかき廻した。
 少しだけ粘膜をいじって抜けていく感覚に喉を反らせていれば、すぐに熱いものを押しつけられる。花襞は待ち望んでいたかのように従順に亀頭に吸いつき、這入りこんでくる雄蕊を嬉しそうにしゃぶった。
「あぅ……っう、んく……っ」
「かわいいにいさま。大好き」
 囁きとともに薔薇の香りが濃くなる。
 ふと床帳の外を見やれば、瓊祥の太監が香炉を置いて去っていくところだった。香炉の中には媚薬が仕込まれており、少し嗅いだだけでも紗琰の発情を促す。
 一瞥した間にも身の内で慾がふくれあがり、瓊祥を受け入れようとあわいが潤みを増した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。 勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。

遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。

月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」 幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。 「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」 何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。 「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」 そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。 僕、殿下に嫌われちゃったの? 実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

最愛の番になる話

屑籠
BL
 坂牧というアルファの名家に生まれたベータの咲也。  色々あって、坂牧の家から逃げ出そうとしたら、運命の番に捕まった話。 誤字脱字とうとう、あるとは思いますが脳内補完でお願いします。 久しぶりに書いてます。長い。 完結させるぞって意気込んで、書いた所まで。

断罪回避のために親友と仮婚約したはずが、想像以上に執着されていた。

鷲井戸リミカ
BL
ある日アーサーは、自分がネット小説の世界に転生していることに気が付いた。前世の記憶によれば親友のフェルディナンドは、悪役令息という役割らしい。最終的に婚約者から婚約破棄され、断罪後は国外追放されてしまうのだとか。 大事な親友が不幸になるのを見過ごすわけにはいかない。とにかく物語の主人公たちから距離をとらせようと、アーサーはフェルディナンドを自分の婚約者にしてしまった。 とりあえず仮婚約という形にしておいて、学園を卒業したら婚約を解消してしまえばいい。そう考えていたはずがアーサーのとある発言をきっかけに、フェルディナンドの執着が明らかになり……。 ハッピーエンドです。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

薄紅の檻、月下の契り

雪兎
BL
あらすじ 大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。 没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。 しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。 鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。 一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。 冷ややかな契約婚として始まった同居生活。 だが、伊織は次第に知ることになる。 鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。 発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。 伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。 月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。 大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。

処理中です...