鳳花春閨伝―死に戻りの皇帝は四人の妃に愛される―

鮎川アキ

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第1話

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「はぁ、ッ、ぁ、ゃ、小瓊……っ」
 朱に染まった肌を味わうようにくちびるを這わされ、脳髄が痺れた。与えられる官能に呼応した身體は蜜をしとどに漏らし、雄蕊を奥へ奥へと誘う。
 慾に火照った身をさいなむ疼きはどこまでも甘やかなのに、紗琰の胸は冷え切っていた。
(……いっそ、殺されたほうがましだ)
 啼きながら涙がこぼれる。
 だが、紗琰が死ねば母后も殺されてしまうのだと思うと、自棄になるわけにもいかなかった。朝廷の誰かが瓊祥と叔父の企みに気づいてこの状況を打破してくれるまで、ひたすらたえるしかないのだ。
 さりとて、日々休みなく強制的に発情を引き起こされているうちに、紗琰の躰は徐々におかしくなっていった。
 監禁されて二月が経つ頃には、四肢が萎えて牀榻から起きあがることもままならなくなってしまった。微熱は下がらず、常時発情しているような状態が続き、肌香が臥室にあふれるのをとめられない。
 甘い香りに惹かれるのか、瓊祥は朝議にも参加せず、紗琰の傍に入り浸るようになった。
 これでは顕官たちが納得すまいと思っていれば、女官たちのおしゃべりでも、朝堂での喧騒が頻繁に話題となりはじめた。
 朝議に顔を出さない瓊祥にかわり、叔父が政を主導しようとして、左丞相や顕官たちとひどい口論になったらしい。
 京師での叔父の暴挙は、すでに目に余るところまできていた。目についた美女を屋敷へ攫ったうえ暴行を加えて殺したとか、気に入らない態度を取っただけで配下や民を斬りつけたという噂は何度聞いたか知れない。この頃は、飢饉の地域に送るはずの食糧を横領した挙句、他国へ売りさばいて利益を得ていたことが発覚したのだとか。
 民や百官からの批難が甚だしいにも関わらず、叔父が罪に問われないのは、ひとえに瓊祥が帝座についているからだ。
 さりながら、瓊祥が叔父を庇い続ければ、いずれ自身の地位も危うくなる。
 女官たちの話によれば、反発する声はすでに地方であがっているようで、いくつかの地域で蜂起が起きたらしい。情勢が不安定な国にはいられないと、太妃として後宮にとどまっていた隣国の皇弟も母国へ帰っていったとか。
(終わりは近そうだ……)
 肌を貪られながら、紗琰は内心で独りごちる。
 月洞窓の向こうで囀っていた鳥が、羽音をたてて飛んでいった。
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