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第4話
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かといって、瓊祥の躰が害されていくのを傍観するわけにもいかない。
天陽種の成長を阻害する薬とはどのようなものかもわからなかったため、紗琰は陽朔を呼び立てた折に問うていた。陽朔は周太医の所持していた医学書の中に記述があったはずだと言い、数日後、再び東廠の手引きを得、古びた冊子を手に紗琰のもとへ戻ってきた。
数代前の王朝時代に記されたものだというその医学書には、生まれにくい花紗の代替として、天陽種の身を花紗種に近づける――という文字が綴ってあった。
天陽種の女人を孕ませやすくし、最終的には性種そのものを変化させることを目指していたようだと陽朔は言った。しかし、生まれ持った肉体を別のものへ変えられるはずもなく、むしろ孕みにくくなったという。
冊子に記されていた内容では、調合した薬材を服用したのは女人だけのようだった。
瓊祥は天陽種の男だが、女人が口にして孕みにくくなったのならば、同様の副作用が出てもおかしくはない。
眉根を寄せた紗琰に、陽朔は、周太医の持っていた医学書のほとんどはおのれが形見に譲り受けたと述べた。けれど生前の周太医は、弟子であればいつでも目を通したり、書き写して勉強できるよう取り計らっていたらしい。ならば、陽朔の兄弟子である包淵晋が情報を得ていても不思議ではなかった。
包淵晋は孝賢王付きだったゆえ、どこかの折にその薬のことを話したに違いない。
帝位を奪うために副作用のある薬を使い、息子を鳳花と偽る。大それたことをするものだと感心すると同時に、息子の肉体を蔑ろにしてまで帝位に執着する孝賢王の気が知れなかった。
(それに、……)
天陽種にとって禁忌とも言える薬を服用しているのが瓊祥だと教えた紗琰に、陽朔が言った言葉を思い出す。
『帝君、そもそも皇族の性種を確認するのは、皇帝付き太医の仕事のはずです』
言われてはじめて、紗琰は重大な事実を見落としていたことに気づいた。
皇族に子が生まれた場合、皇帝付き太医が直々に性種を判別する。蟠桃水と呼ばれる薬液が用いられ、そこに血液を垂らしてどのような反応が起きるかで第二性を見分けるのだ。沈んだ血が溶けずに固まれば天陽種、溶けまじれば范君種、固まることも溶けることもなければ花紗種となる。
それは古くからの慣習のひとつであり、皇帝からの寿ぎの意が大きい。紗琰が鳳花だと判じたのは、もちろん当時その地位についていた周太医である。
されど、瓊祥は――。
(陽朔から聞いて記録でも確認したが、当時、周太医は不意の病に罹り参内できなかった。かわりを任されたのは当時周太医の次位にあった汪太医令であり、彼が瓊祥の性種が鳳花であると判じたのだ)
判別は皇帝の面前で行われるため、公的な記録では父皇も瓊祥の性種を認められたとある。
陽朔に尋ねると、汪太医令が事前に薬液に細工をしていたのではないかという答えが返ってきた。蟠桃水の調合を変えることで、血液への反応が変化するという。そうしてまた、偶発的に調合を間違えた可能性はないとも陽朔は言った。蟠桃水の調合は医官にとって最も初歩に学ぶものであり、皇宮に勤める者であれば誰でも作ることができるという。間違うことがあるとすれば、意図的に他ならない、と。
だとすれば、紗琰が予想していたよりも遥かに根深く、汪太医令と包淵晋は孝賢王とつながっていることになる。
周太医の次に優れていると評判の汪氏が、性種を取り違えるはずがない。誰もがそう思っていたがゆえに、父皇も含め、まんまと騙されてしまったのだろう。
(今生では、孝賢王に与した者をすべて暴いてやる……)
どのような理由で、なにを見返りに協力しているのか。それらを調べるのは東廠に任せて、紗琰は陽朔に、とにかく早急に瓊祥を治療する方法を求めた。
天陽種の成長を阻害する薬とはどのようなものかもわからなかったため、紗琰は陽朔を呼び立てた折に問うていた。陽朔は周太医の所持していた医学書の中に記述があったはずだと言い、数日後、再び東廠の手引きを得、古びた冊子を手に紗琰のもとへ戻ってきた。
数代前の王朝時代に記されたものだというその医学書には、生まれにくい花紗の代替として、天陽種の身を花紗種に近づける――という文字が綴ってあった。
天陽種の女人を孕ませやすくし、最終的には性種そのものを変化させることを目指していたようだと陽朔は言った。しかし、生まれ持った肉体を別のものへ変えられるはずもなく、むしろ孕みにくくなったという。
冊子に記されていた内容では、調合した薬材を服用したのは女人だけのようだった。
瓊祥は天陽種の男だが、女人が口にして孕みにくくなったのならば、同様の副作用が出てもおかしくはない。
眉根を寄せた紗琰に、陽朔は、周太医の持っていた医学書のほとんどはおのれが形見に譲り受けたと述べた。けれど生前の周太医は、弟子であればいつでも目を通したり、書き写して勉強できるよう取り計らっていたらしい。ならば、陽朔の兄弟子である包淵晋が情報を得ていても不思議ではなかった。
包淵晋は孝賢王付きだったゆえ、どこかの折にその薬のことを話したに違いない。
帝位を奪うために副作用のある薬を使い、息子を鳳花と偽る。大それたことをするものだと感心すると同時に、息子の肉体を蔑ろにしてまで帝位に執着する孝賢王の気が知れなかった。
(それに、……)
天陽種にとって禁忌とも言える薬を服用しているのが瓊祥だと教えた紗琰に、陽朔が言った言葉を思い出す。
『帝君、そもそも皇族の性種を確認するのは、皇帝付き太医の仕事のはずです』
言われてはじめて、紗琰は重大な事実を見落としていたことに気づいた。
皇族に子が生まれた場合、皇帝付き太医が直々に性種を判別する。蟠桃水と呼ばれる薬液が用いられ、そこに血液を垂らしてどのような反応が起きるかで第二性を見分けるのだ。沈んだ血が溶けずに固まれば天陽種、溶けまじれば范君種、固まることも溶けることもなければ花紗種となる。
それは古くからの慣習のひとつであり、皇帝からの寿ぎの意が大きい。紗琰が鳳花だと判じたのは、もちろん当時その地位についていた周太医である。
されど、瓊祥は――。
(陽朔から聞いて記録でも確認したが、当時、周太医は不意の病に罹り参内できなかった。かわりを任されたのは当時周太医の次位にあった汪太医令であり、彼が瓊祥の性種が鳳花であると判じたのだ)
判別は皇帝の面前で行われるため、公的な記録では父皇も瓊祥の性種を認められたとある。
陽朔に尋ねると、汪太医令が事前に薬液に細工をしていたのではないかという答えが返ってきた。蟠桃水の調合を変えることで、血液への反応が変化するという。そうしてまた、偶発的に調合を間違えた可能性はないとも陽朔は言った。蟠桃水の調合は医官にとって最も初歩に学ぶものであり、皇宮に勤める者であれば誰でも作ることができるという。間違うことがあるとすれば、意図的に他ならない、と。
だとすれば、紗琰が予想していたよりも遥かに根深く、汪太医令と包淵晋は孝賢王とつながっていることになる。
周太医の次に優れていると評判の汪氏が、性種を取り違えるはずがない。誰もがそう思っていたがゆえに、父皇も含め、まんまと騙されてしまったのだろう。
(今生では、孝賢王に与した者をすべて暴いてやる……)
どのような理由で、なにを見返りに協力しているのか。それらを調べるのは東廠に任せて、紗琰は陽朔に、とにかく早急に瓊祥を治療する方法を求めた。
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