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第一章
第2話 少年
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翌朝、私は困惑していた。昨日窓辺にあった
はずの短文が消えていたのだ。
(あれ・・?昨日あんなに頑張っても落ちな
かったのに!)
あの後、寮母にバレまいと一生懸命汚れを消そうと努力したが全く落ちず、そのまま放置しておいた・・はずなのだが。
(洗剤使っても落ちなかったのに!・・昨日
の生物とも、何か関係があるのかな?)
私が窓枠と睨めっこしていると、ドアが大きな音を立てて開いた。
「遊藺!まだ寝て・・って、もう起きてたん
だ。何で下に降りて来ないのよ~!てっき
りまだ寝てるのかと・・何やってんの?」
「・・・窓枠に汚れがないかチェックしてる
のよ。」
「そ、そうなの?アンタそんなに掃除熱心だ
ったっけ?まぁいいわ。それより、今日は
デザートが売ってるらしいわ!早く行かな
いと売り切れちゃうわよ!」
「え!?それマジ!?」
「マジマジ!今週はプリンだって!」
「やった!早く行こ!」
ここGOFは、週に一度工場内にある購買にて
デザートが販売される。なぜ週に一度しか販売されないかというと、GOFは外部との接触の機会は週に一度の資源供給の時以外ほとんどないため、普段はこの工場内で作れるようなものしか販売されないのである。幸いある程度のものは作れるようになっているため最低限の娯楽は買うことができるが、砂糖はこの工場内では作れないため貴重なのだ。借金返済のため80%は持っていかれるが、あとの20%は娯楽に使えるというシステムである。デザートの種類はランダムで、お一人様1つ限り。売り切れたら即終了のため、皆んな我先にと並ぶのである。
「プリン残り10個でーす!」
まずい・・!私甘党なのに、一週間も糖分を取らなかったら禁断症状が・・・!!
「杏奈・・!ごめん、私走るね!」
「ええ!?」
杏奈の返事を待たずに駆け出す。自分で言うのもなんだけど、私は足が速い。オリンピック出場の話を出ていたほどだ。私が全速力で走れば、誰も追いつけない・・そう思っていた。先に並んでいた人達が、次々とプリンを買っていく。
「プリン、残りあと1個でーす!」
(よし・・!このペースなら間に合う!足速
くて良かったー!)
私が安堵した直後、後ろから何者かがすごいスピードで私を追い越していった。
「今週のデザートは完売でーす!」
(え!?ええ・・!?)
私が困惑していると、プリンを持った子供が近づいてきた。その子は、ここではかなり垢抜けた見た目をしていた。綺麗な服、可愛いポーチや帽子、そして何より金属のピアスをしていた。ここでは金属は貴重なため、余程の富裕層でなければここではつけられない。
きっと迷い込んでしまったのだろう。
「あれー?お姉ちゃんが梨乃ちゃんが言って
た『闇使い』?」
(闇使い・・?何だそれ。人違いかな?)
「ボク、何でここにいるの?お母さんと逸れ
ちゃった?ここはボクみたいな子がくると
ころじゃ・・・」
言った途端、男の子の雰囲気が変わった。
「ふぅ・・・。13億5千万」
「・・え?」
「それがボクの所持金。お姉ちゃんがいくら
借金したかは知らないけど、流石にこれだ
けあれば返済できるでしょ?」
「な、何言って・・」
「嘘じゃないよ?もしボクらの学校に入って
くれるならね。」
(・・昨日のススのメッセージにもあった。
なぜこの子がそれを知っているの?もしか
して・・メッセージにあった彼って、この
子のことだったりして・・。)
考えていても仕方がない。とりあえず、言われた通りにしてみることにした。
「dark heroの『Reno』に言われてきた。
暗殺部隊について教えてほしい・・です。
・・これであってたっけ?」
そう言った途端、少年の目がキラリと光った
・・ような気がした。
「やっぱり!じゃあ、学校に行くことを決め
たの!?」
「・・うん。どのみち、ここにいたって何に
もならないしね。・・あ!でも杏奈連れて
行ける?」
「・・・誰かにもよるよ。」
「うん。私の後ろにいる子なんだけどね、
私の親友なの。・・どう?」
「・・・」
「・・?ねぇ、どうってば!」
「え?・・うん!いいよ!」
「ホント!?やった!」
「・・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それからはあっという間で、借金の返済の手続きをしてすぐ部屋に戻ると、もう引っ越しの準備が整っていた。最近信じ難いことが続いていたせいか、これはもうこういうことなんだと割り切れるようになった。そうして、ドタドタと慌ただしく1日が過ぎていき、夜になった。疲れた体をベッドに沈める。
(引っ越しの時って物が無くなるから部屋が
広く感じるっていうけど、そうでもなかっ
たな。)
私の場合、こんなに狭い部屋に住んでいたということを、改めて実感させられただけだった。不衛生なキッチン、虫が湧く風呂、ろくに物が入ってない冷蔵庫。3畳もない自室だけが仕切られた空間で、それ以外は全て共用だ。劣悪な環境。
(・・ろくでもないとこだったじゃない。
寂しがる要素なんてどこにあるの・・?)
ここで過ごすのは今日で最後。モヤモヤした気持ちでベランダに出た。夜風が頬を撫でて気持ちいい。しばらくボーッと星を眺めていると、トントンと肩を叩かれた。
「お姉ちゃん、大丈夫?何か悩み事?」
いつのまに背後まできたのだろう。足音が全然聞こえなかった。私は五感がかなりいい方なのだが。・・いや、それよりも。
「・・・なぜそう思うの?」
私は心の声をポロッと言ってしまうような間の抜けたキャラじゃない・・と思っている。
・・・まぁどちらにせよ、考えたって答えなんかわからないだろう。
「お姉ちゃん、星を見るより早く寝たいって
タイプでしょ?話してたらわかるよ。なの
にこんなにずっと星を見るなんて、それ以
外考えられないじゃない。・・・で、どう
したの?」
いやはや感心してしまった。容姿からして、7~8歳そこらの子供に自分の心を読まれてしまった。私って、そんなにわかりやすいのだろうか?
「・・そうだね。よくわかったね。こうなっ
たら教えるまで寝かせてくれなさそうだか
ら、教えるね。」
私は、ゆっくりと話し始めた。
はずの短文が消えていたのだ。
(あれ・・?昨日あんなに頑張っても落ちな
かったのに!)
あの後、寮母にバレまいと一生懸命汚れを消そうと努力したが全く落ちず、そのまま放置しておいた・・はずなのだが。
(洗剤使っても落ちなかったのに!・・昨日
の生物とも、何か関係があるのかな?)
私が窓枠と睨めっこしていると、ドアが大きな音を立てて開いた。
「遊藺!まだ寝て・・って、もう起きてたん
だ。何で下に降りて来ないのよ~!てっき
りまだ寝てるのかと・・何やってんの?」
「・・・窓枠に汚れがないかチェックしてる
のよ。」
「そ、そうなの?アンタそんなに掃除熱心だ
ったっけ?まぁいいわ。それより、今日は
デザートが売ってるらしいわ!早く行かな
いと売り切れちゃうわよ!」
「え!?それマジ!?」
「マジマジ!今週はプリンだって!」
「やった!早く行こ!」
ここGOFは、週に一度工場内にある購買にて
デザートが販売される。なぜ週に一度しか販売されないかというと、GOFは外部との接触の機会は週に一度の資源供給の時以外ほとんどないため、普段はこの工場内で作れるようなものしか販売されないのである。幸いある程度のものは作れるようになっているため最低限の娯楽は買うことができるが、砂糖はこの工場内では作れないため貴重なのだ。借金返済のため80%は持っていかれるが、あとの20%は娯楽に使えるというシステムである。デザートの種類はランダムで、お一人様1つ限り。売り切れたら即終了のため、皆んな我先にと並ぶのである。
「プリン残り10個でーす!」
まずい・・!私甘党なのに、一週間も糖分を取らなかったら禁断症状が・・・!!
「杏奈・・!ごめん、私走るね!」
「ええ!?」
杏奈の返事を待たずに駆け出す。自分で言うのもなんだけど、私は足が速い。オリンピック出場の話を出ていたほどだ。私が全速力で走れば、誰も追いつけない・・そう思っていた。先に並んでいた人達が、次々とプリンを買っていく。
「プリン、残りあと1個でーす!」
(よし・・!このペースなら間に合う!足速
くて良かったー!)
私が安堵した直後、後ろから何者かがすごいスピードで私を追い越していった。
「今週のデザートは完売でーす!」
(え!?ええ・・!?)
私が困惑していると、プリンを持った子供が近づいてきた。その子は、ここではかなり垢抜けた見た目をしていた。綺麗な服、可愛いポーチや帽子、そして何より金属のピアスをしていた。ここでは金属は貴重なため、余程の富裕層でなければここではつけられない。
きっと迷い込んでしまったのだろう。
「あれー?お姉ちゃんが梨乃ちゃんが言って
た『闇使い』?」
(闇使い・・?何だそれ。人違いかな?)
「ボク、何でここにいるの?お母さんと逸れ
ちゃった?ここはボクみたいな子がくると
ころじゃ・・・」
言った途端、男の子の雰囲気が変わった。
「ふぅ・・・。13億5千万」
「・・え?」
「それがボクの所持金。お姉ちゃんがいくら
借金したかは知らないけど、流石にこれだ
けあれば返済できるでしょ?」
「な、何言って・・」
「嘘じゃないよ?もしボクらの学校に入って
くれるならね。」
(・・昨日のススのメッセージにもあった。
なぜこの子がそれを知っているの?もしか
して・・メッセージにあった彼って、この
子のことだったりして・・。)
考えていても仕方がない。とりあえず、言われた通りにしてみることにした。
「dark heroの『Reno』に言われてきた。
暗殺部隊について教えてほしい・・です。
・・これであってたっけ?」
そう言った途端、少年の目がキラリと光った
・・ような気がした。
「やっぱり!じゃあ、学校に行くことを決め
たの!?」
「・・うん。どのみち、ここにいたって何に
もならないしね。・・あ!でも杏奈連れて
行ける?」
「・・・誰かにもよるよ。」
「うん。私の後ろにいる子なんだけどね、
私の親友なの。・・どう?」
「・・・」
「・・?ねぇ、どうってば!」
「え?・・うん!いいよ!」
「ホント!?やった!」
「・・・・」
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それからはあっという間で、借金の返済の手続きをしてすぐ部屋に戻ると、もう引っ越しの準備が整っていた。最近信じ難いことが続いていたせいか、これはもうこういうことなんだと割り切れるようになった。そうして、ドタドタと慌ただしく1日が過ぎていき、夜になった。疲れた体をベッドに沈める。
(引っ越しの時って物が無くなるから部屋が
広く感じるっていうけど、そうでもなかっ
たな。)
私の場合、こんなに狭い部屋に住んでいたということを、改めて実感させられただけだった。不衛生なキッチン、虫が湧く風呂、ろくに物が入ってない冷蔵庫。3畳もない自室だけが仕切られた空間で、それ以外は全て共用だ。劣悪な環境。
(・・ろくでもないとこだったじゃない。
寂しがる要素なんてどこにあるの・・?)
ここで過ごすのは今日で最後。モヤモヤした気持ちでベランダに出た。夜風が頬を撫でて気持ちいい。しばらくボーッと星を眺めていると、トントンと肩を叩かれた。
「お姉ちゃん、大丈夫?何か悩み事?」
いつのまに背後まできたのだろう。足音が全然聞こえなかった。私は五感がかなりいい方なのだが。・・いや、それよりも。
「・・・なぜそう思うの?」
私は心の声をポロッと言ってしまうような間の抜けたキャラじゃない・・と思っている。
・・・まぁどちらにせよ、考えたって答えなんかわからないだろう。
「お姉ちゃん、星を見るより早く寝たいって
タイプでしょ?話してたらわかるよ。なの
にこんなにずっと星を見るなんて、それ以
外考えられないじゃない。・・・で、どう
したの?」
いやはや感心してしまった。容姿からして、7~8歳そこらの子供に自分の心を読まれてしまった。私って、そんなにわかりやすいのだろうか?
「・・そうだね。よくわかったね。こうなっ
たら教えるまで寝かせてくれなさそうだか
ら、教えるね。」
私は、ゆっくりと話し始めた。
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