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44.5-2話 禁忌の王子<side.ランディス>
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44.5-1話からお読み下さい。
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ぐにゃりと揺れるように子供の姿のランディス、アンリエッタ、アランが消え、風景も変わる。
そして現れた場面は、王城の謁見の間だった。
玉座の上から見下ろすように立つランディスは懐かしさに瞳を細めてその場見回した。
「ランディス。お前に話さなくてはいけない事がある。皆も聞いてほしい」
貴族の男児が入る学院の長期休みで全員帰省し、王家の全ての人が揃っていた時だった。
王が謁見の間に伯爵以上の爵位を持つ貴族の家長と、王家一家の全てを集めた。
玉座に王。その両隣を固めるように三人の王妃達が座り、王子達はその隣に並び立つ。
狭くはない謁見の間だが、伯爵以上となると少なくはない人数の為に若干窮屈に感じる。
けれどその場にその状態に文句を言える程の者は居ない。
「まずは、急な収集にもかかわらずこの場に集まった者達に礼を言う。これから皆に伝える事は、第二王妃ミランダと第二王子ランディスに関する事だ。他言無用等ではないが、あまり口外はしないで欲しい」
その場に集まる全員に視線を流し、それが終わるとミランダとランディスに視線を送るグリディスタ王は、笑顔だった。
その笑顔に答えるようにミランダは微笑み、そっと隣にある王の手を握った。
「まず、ミランダやランディスに対して悪意ある噂が蔓延っているのは皆も知っているだろう。『禁忌の子』『禁忌の女』だったか。自らがしてはいなくても、気いた事はあるのではないか?」
ジロリと貴族達を睨みつければ、心疚しい者達は顔を青褪めたり、身体を竦ませたりしている。
「まぁ、これにはその噂を訂正してこなかった我らにも責任はあるとは思う。ミランダ。ランディス。苦しめたな。すまなかった」
「いいえ。陛下が悪い事ではありませんわ」
「ええ。お陰で良い友人にも恵まれましたから」
王の隣で首を横に振るミランダと、この件でアランというかけがえない友と、愛する少女を得たランディスは心から微笑んだ。
「心優しいお前たちに感謝しよう。
でだ。今回集まってもらったのは他でもない。
我が第二王妃ミランダの国が落ち着いたのでな。改めてミランダを紹介しようと思う」
王の言葉に全員が顔を見合わせざわついた。
「ミランダ様の国?」
「紹介?どういう事だ?」
周囲のざわつきは想定内のようで、王は玉座から静かに立ち上がると、握り締めたままのミランダの手を引き、立ち上がらせた。
「ここにいるミランダは伯爵家と養子縁組をしてから、私と成婚しミランダ・エンディライト・ブロムリアとなった。
そしてミランダの伯爵の娘となる前の名前は、ミラルーシア・シルウィンディリア・セイグレス。先日崩御した、セイグレス皇帝の愛娘だ」
「セイグレス帝国の!?」
「そんなまさか!?」
「セイグレス皇帝は子供に恵まれなかったのでは!?」
グリディスタ王の報告に一際ざわつきが大きくなる。
それもそうだ。
セイグレイス皇国は、この世界の中でも一番大きい皇国だ。
そして最近崩御したセイグレス皇帝は一代にして周辺の小国を和睦を結び、それがならない国は武力を持って一つに纏め上げた。
そして自国民になった元敵国の民達にも心を砕き、今まで以上に住みやすい国を作り発展させていった。
民達に愛された皇帝は生涯独身を通し、妃も子供もいないと言われていた。
そんな皇帝の娘だと言われたミランダは周りの驚きと驚愕の視線を受けて、花のように微笑んでみせた。
「記憶にある者もいるだろう。記憶になくても聞いた事くらいはあるはずだと思うが……今から三十五年前にあったセイグレス皇国を中心とした大規模戦争を」
三十五年前。セイグレス皇国の周りの八つの小国が同盟を組んでセイグレス皇国に戦いを挑んだ。
強国であるセイグレス帝国も、この時ばかりは四方八方からの攻撃で危うかったと歴史には記されている。
「その戦の最中、ミランダ…ミラルーシア皇女を身篭った、皇帝の婚約者であった公爵令嬢がこの国に亡命してきた。
暫くして戦は終わったが、まだ暫くキナ臭い皇国にミラルーシアとその母である皇妃は帰る事ができず、そうこうしているうちに皇妃は流行病で亡くなってしまった…そして後は皆も知っての通りだ。
皇女であるミラルーシアをそのままにはしておけない、けれども高位貴族の家に入れてしまうと皇国に戻る際に支障が出る。
その為にセンダン伯爵の元に養女として籍を置いたのだ」
「何故その際に皇国にお戻りにならなかったのですか?」
どこからか問われた声に、ミランダ妃は頬に手を添えて首を傾け、夢見るように、けれどそこにいる全員に聞こえるように答えた。
「グリディスタ王に心を奪われてしまったの」
「では、ミランダお母様は皇国に戻ってしまわれるのですか?」
母の内の一人が居なくなってしまうかもしれないと、まだ幼いムツキ王子が不安そうな瞳でミランダを見上げる。
「それは大丈夫だ。セイグレス皇国は、前皇帝の弟…ミランダの叔父が治める事になっている」
安心させるようにグリディスタ王が言うと、ムツキ王子はホッと安心したように息を吐き出した。
「さて。話を戻そう。
皆も知っている通り、セイグレス皇国の皇族は皆赤い髪に赤い瞳だ。
その為、ミランダも、そしてその子であるランディスもその血を引いている。
さて。それでも『禁忌の子』と言う者はいるのか?」
王のその言葉にその場に集まった全ての貴族。そしてその言葉を裏側で聞いていた王家の召使達は沈黙した。
ゆっくりとその場面が滲んで消えていく。
そして段々と視界は明るく、真っ白な空間になっていった。
そしてその空間に現れたのは、アンリエッタだった。
濃紺のドレスを着て微笑んでいる。
「ランディス様?…」
夢かな…ってか、夢だろうな。
こんな場所に、アンリがいるわけがない。
なら、抱きしめてもいいだろうか?
愛してると伝えてもいいだろうか?
現実は、カイン兄上の物なのだから。
夢の中でくらいは、触れてもいいだろうか。
ランディスは目の前の赤く染まった頬に優しく触れて指先で撫でる。
そしてその手を耳に滑らせて耳付近の髪を撫で、そのままアンリエッタの後頭部へ回すとアンリエッタを引き寄せた。
「ラっ…ランディス様!?」
慌てる姿も可愛いな…
腕の中で軽くもがく少女は、初めて会った頃の彼女のようだった。
あの後に何回も会ったアンリエッタは、どこかが違うと感じたが、最近のアンリエッタはあの時の娘だとはっきりと言い切れる。
疲れたのか、もがく事を諦めたらしいアンリエッタに微笑む。
ほら、やっぱり夢だ。なら、キスくらいは許されるだろうか。
現実ならば、もがく事を諦めるなんてことはしないだろう。
あの純粋な少女は真っ赤になって震えるだろうと、腕の中にいる、頬の赤みが引いたアンリエッタを見て思う。
ランディスは緩慢な動きで草の上にアンリエッタを下ろし、そのまま地面に押し付けるように押し倒すと、自らの唇をアンリエッタのそれに軽く押し当てる。
「なっ!?ちょ!?ランディス様!?」
ジタバタと暴れるけれど、それを逃がさないように両手を自らの両手で押さえつけ、足元はアンリエッタの足の間にランディスの足があるせいでドレスが押さえつけられて動かせずにいた。
「…もう一回…」
懇願するように言うと、「待て待て待て!!」と騒ぎ立てるアンリエッタの唇を塞いだ。
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そして現れた場面は、王城の謁見の間だった。
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「ランディス。お前に話さなくてはいけない事がある。皆も聞いてほしい」
貴族の男児が入る学院の長期休みで全員帰省し、王家の全ての人が揃っていた時だった。
王が謁見の間に伯爵以上の爵位を持つ貴族の家長と、王家一家の全てを集めた。
玉座に王。その両隣を固めるように三人の王妃達が座り、王子達はその隣に並び立つ。
狭くはない謁見の間だが、伯爵以上となると少なくはない人数の為に若干窮屈に感じる。
けれどその場にその状態に文句を言える程の者は居ない。
「まずは、急な収集にもかかわらずこの場に集まった者達に礼を言う。これから皆に伝える事は、第二王妃ミランダと第二王子ランディスに関する事だ。他言無用等ではないが、あまり口外はしないで欲しい」
その場に集まる全員に視線を流し、それが終わるとミランダとランディスに視線を送るグリディスタ王は、笑顔だった。
その笑顔に答えるようにミランダは微笑み、そっと隣にある王の手を握った。
「まず、ミランダやランディスに対して悪意ある噂が蔓延っているのは皆も知っているだろう。『禁忌の子』『禁忌の女』だったか。自らがしてはいなくても、気いた事はあるのではないか?」
ジロリと貴族達を睨みつければ、心疚しい者達は顔を青褪めたり、身体を竦ませたりしている。
「まぁ、これにはその噂を訂正してこなかった我らにも責任はあるとは思う。ミランダ。ランディス。苦しめたな。すまなかった」
「いいえ。陛下が悪い事ではありませんわ」
「ええ。お陰で良い友人にも恵まれましたから」
王の隣で首を横に振るミランダと、この件でアランというかけがえない友と、愛する少女を得たランディスは心から微笑んだ。
「心優しいお前たちに感謝しよう。
でだ。今回集まってもらったのは他でもない。
我が第二王妃ミランダの国が落ち着いたのでな。改めてミランダを紹介しようと思う」
王の言葉に全員が顔を見合わせざわついた。
「ミランダ様の国?」
「紹介?どういう事だ?」
周囲のざわつきは想定内のようで、王は玉座から静かに立ち上がると、握り締めたままのミランダの手を引き、立ち上がらせた。
「ここにいるミランダは伯爵家と養子縁組をしてから、私と成婚しミランダ・エンディライト・ブロムリアとなった。
そしてミランダの伯爵の娘となる前の名前は、ミラルーシア・シルウィンディリア・セイグレス。先日崩御した、セイグレス皇帝の愛娘だ」
「セイグレス帝国の!?」
「そんなまさか!?」
「セイグレス皇帝は子供に恵まれなかったのでは!?」
グリディスタ王の報告に一際ざわつきが大きくなる。
それもそうだ。
セイグレイス皇国は、この世界の中でも一番大きい皇国だ。
そして最近崩御したセイグレス皇帝は一代にして周辺の小国を和睦を結び、それがならない国は武力を持って一つに纏め上げた。
そして自国民になった元敵国の民達にも心を砕き、今まで以上に住みやすい国を作り発展させていった。
民達に愛された皇帝は生涯独身を通し、妃も子供もいないと言われていた。
そんな皇帝の娘だと言われたミランダは周りの驚きと驚愕の視線を受けて、花のように微笑んでみせた。
「記憶にある者もいるだろう。記憶になくても聞いた事くらいはあるはずだと思うが……今から三十五年前にあったセイグレス皇国を中心とした大規模戦争を」
三十五年前。セイグレス皇国の周りの八つの小国が同盟を組んでセイグレス皇国に戦いを挑んだ。
強国であるセイグレス帝国も、この時ばかりは四方八方からの攻撃で危うかったと歴史には記されている。
「その戦の最中、ミランダ…ミラルーシア皇女を身篭った、皇帝の婚約者であった公爵令嬢がこの国に亡命してきた。
暫くして戦は終わったが、まだ暫くキナ臭い皇国にミラルーシアとその母である皇妃は帰る事ができず、そうこうしているうちに皇妃は流行病で亡くなってしまった…そして後は皆も知っての通りだ。
皇女であるミラルーシアをそのままにはしておけない、けれども高位貴族の家に入れてしまうと皇国に戻る際に支障が出る。
その為にセンダン伯爵の元に養女として籍を置いたのだ」
「何故その際に皇国にお戻りにならなかったのですか?」
どこからか問われた声に、ミランダ妃は頬に手を添えて首を傾け、夢見るように、けれどそこにいる全員に聞こえるように答えた。
「グリディスタ王に心を奪われてしまったの」
「では、ミランダお母様は皇国に戻ってしまわれるのですか?」
母の内の一人が居なくなってしまうかもしれないと、まだ幼いムツキ王子が不安そうな瞳でミランダを見上げる。
「それは大丈夫だ。セイグレス皇国は、前皇帝の弟…ミランダの叔父が治める事になっている」
安心させるようにグリディスタ王が言うと、ムツキ王子はホッと安心したように息を吐き出した。
「さて。話を戻そう。
皆も知っている通り、セイグレス皇国の皇族は皆赤い髪に赤い瞳だ。
その為、ミランダも、そしてその子であるランディスもその血を引いている。
さて。それでも『禁忌の子』と言う者はいるのか?」
王のその言葉にその場に集まった全ての貴族。そしてその言葉を裏側で聞いていた王家の召使達は沈黙した。
ゆっくりとその場面が滲んで消えていく。
そして段々と視界は明るく、真っ白な空間になっていった。
そしてその空間に現れたのは、アンリエッタだった。
濃紺のドレスを着て微笑んでいる。
「ランディス様?…」
夢かな…ってか、夢だろうな。
こんな場所に、アンリがいるわけがない。
なら、抱きしめてもいいだろうか?
愛してると伝えてもいいだろうか?
現実は、カイン兄上の物なのだから。
夢の中でくらいは、触れてもいいだろうか。
ランディスは目の前の赤く染まった頬に優しく触れて指先で撫でる。
そしてその手を耳に滑らせて耳付近の髪を撫で、そのままアンリエッタの後頭部へ回すとアンリエッタを引き寄せた。
「ラっ…ランディス様!?」
慌てる姿も可愛いな…
腕の中で軽くもがく少女は、初めて会った頃の彼女のようだった。
あの後に何回も会ったアンリエッタは、どこかが違うと感じたが、最近のアンリエッタはあの時の娘だとはっきりと言い切れる。
疲れたのか、もがく事を諦めたらしいアンリエッタに微笑む。
ほら、やっぱり夢だ。なら、キスくらいは許されるだろうか。
現実ならば、もがく事を諦めるなんてことはしないだろう。
あの純粋な少女は真っ赤になって震えるだろうと、腕の中にいる、頬の赤みが引いたアンリエッタを見て思う。
ランディスは緩慢な動きで草の上にアンリエッタを下ろし、そのまま地面に押し付けるように押し倒すと、自らの唇をアンリエッタのそれに軽く押し当てる。
「なっ!?ちょ!?ランディス様!?」
ジタバタと暴れるけれど、それを逃がさないように両手を自らの両手で押さえつけ、足元はアンリエッタの足の間にランディスの足があるせいでドレスが押さえつけられて動かせずにいた。
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