俺と私の公爵令嬢生活

桜木弥生

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45話 俺と私のライバル宣言①

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「おっつー」

 王妃様方の茶会の帰りの公爵家の馬車の中、何故かいるサラは手をひらひらと振っている。


 あの後、寝惚けたランディス王子にキスされて、それ以上のコトに及びそうになって、でも相手は王子だから手を上げるわけにもいかず、でもそれ以上は嫌だったから逃げようともがいたけど、成人男性の力に敵う訳もなく、もうダメだと思ったときに、ランディス様の後ろに、唇に人差し指を立てて『静かに』と言いたげなサラが立ってた。

 なんでここに!?

 って思った瞬間に、ランディス王子の首筋に手刀を軽く当てた。
 と思ったら、ランディス王子の力が抜けたようで一気に押しつぶされる。
 重い!

「さ。これで逃げれるでしょ」

 小さな声で言うサラ。でも重くて逃げれんのだけども。

「もー。そんくらい自分でやりなさいよ」

 ぶつぶつと文句言いつつもランディス王子を持ち上げ、俺の上から退かしてくれた。

「ってか、いつからいたんだよ。ってか、ここ王宮だぞ…なんでいるんだ…」
「え?初めからだけど?
 ホラ、ゲームで王宮から脱出するシーンあったじゃない?その逆をね」

 そんなシーンあったっけか?
 俺が憶えてないだけか。まぁ、憶えてなくても仕方ないか。
 ストーリーには興味なかったし、あんま詳しく憶えてないしな。姉貴に無理やりやらされてただけだし。
 ってか、見てたんなら助けろよ!

「ほら、さっさと戻らないと心配して探しに来られるわよ」

 無言で睨む俺に、しっしっと手の甲で振り払うように振られた。
 まぁ、確かに…
 そろそろキース王子あたりが逃げ…迎えに来そうだ。
 今日は大人しく戻って、次会った時に文句言ってやる…

 そんな事を考えながらサラに背中を向けて歩き出すと

「あ。帰り、馬車に一緒に乗せてって。馬車の中で待ってるからー」

 そんな声が聞こえた…


◆◆◆◆◆


 で。現在に至るわけで。

「で?何で最初に助けない」

 ガタゴトと揺れる馬車の中でサラを睨みつける。

「えー。だってぇ。生BL見れるのに、ソレを逃すって手、ある?」

 デスヨネー!

「でも!俺は今女だし!BLにならないんじゃないかな!」
「中身が男ならOK。むしろ喜んで!男の娘って設定で補完するから!」

 もうやだ…この姉貴…

「あの…サラ様…わたくし、一応、キース王太子様の婚約者で…」
「そこがいい!!ネトラレ最高!三角関係最高!!!」

 モウヤダ…泣いていいかな…
 馬車のタイヤが石に乗り上げでもしたのか、ガタンと揺れた。その拍子に、隣に置いているクッションにダイブして顔を埋めた。

「まぁ、本気で嫌なら、もっと頑張って鍛えなさいな」

 声からして笑ってるんだろうな。
 楽しさを含んだ声のサラが恨めしい。でも結果的には助けられたから許すべきなんだろうけども…納得いかない。

「そーいえば、来月、大会あるんだって?」

 クッションに顔を埋めたまま頷く。

 そう。来月に大会がある。
 騎士団主催での剣術大会。
 騎士団員の入って一年未満の人達が剣術を競う大会だ。
 そしてそれには、騎士団員だけではなくて、公開訓練に参加している一般市民も出れる。
 その大会で良い成績を残したり、騎士団長や副団長なんかのお偉いさんの目に留まった人間は、平民でも騎士団に入れるようになる。

「で、出るんでしょ?」

 まるで決め付けるような質問にクッションから顔を上げた。

「もちろん。でも今のままじゃ決勝どころか準決勝にすら行けないだろうから、もうちょっと頑張らねぇと…」
「ふぅん。って、優勝するつもり?」
「当たり前だ。出るからには優勝しないと」
「でもあんた…優勝したら、素性、バレるんじゃないの?」

 そう。まだ上手く両親にも兄様にも隠せてるけど、決勝まで行ったら確実にバレる。でも、それが狙いだったりもする。

「優勝すれば、ちゃんと剣術学ばせて貰えるだろ?」
「…まぁ、それは確かに…」

 納得したようにサラは頷くと、「頑張りなさい」と笑った。
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