吾輩はパグである。名前は金時。

ものまねの実

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吾輩はパグである。名前は金時。

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吾輩は犬である。それも両親共にバグの間に生まれた紛うことなきパグだ。
名前は金時。

生まれた時から兄弟たちの中で最も成長が早く、そして賢かった吾輩。
母親の乳首争いで端っこの方になることはまずなかった吾輩は、まさにパグの中のパグ、エリート中のエリートだろう。


※母犬からの母乳は量が多い乳首と少ない乳首があり、生まれたての子犬は母乳を多く得ようと乳首の位置を本能的に争います。


そんな吾輩、ある時親元から今のご主人の元へと迎えられたわけだが、とても可愛がってもらったと思う。
優しい人間の雌にはパグを好む傾向があるらしく、まだヨチヨチ歩きの吾輩をそれはもうかいがいしく世話をしてくれた。

そのおかげで立派に成長し、今ではいい匂いのする…骨?を噛み潰すほどの力を得た。
全く、自分の力が恐ろしい。
今はパグを超越した理性で押さえているが、吾輩の野生が暴走したらこの世界は滅んでしまうかもしれない。

ふっ、ご主人が吾輩を恐れて妙な縞々の向こう側が透けて見える壁を設置したのは賢明な判断だ。
これならいざとなっても野生化した吾輩が外へと飛び出すことはない。

命拾いしたな!人間共!


※室内で小型犬を買う場合、格子状の柵などで入ってほしくない空間を区切るとよいでしょう。柵の向こう側が見えていることで、犬の方も飼い主の姿が見えるので安心します。


さて、ここで吾輩の日常を少しだけ教えよう。
既に我が城と化したこの空間だが、何があるのか分からないので朝目覚めたらまずは見回りをする。
壁に沿って歩き回り、吾輩とご主人以外の生き物の匂いがないことを確認したら、次はご主人が起きてくるのを待つ。

…待つ。



…ただ待つ。


……只管待つ。



全く起きる気配がない。
まぁこれは分かっていたことだ。
普段ご主人は吾輩が起きてから少ししたら寝床から出てくるのだが、たまに日が高くなるまで起きてこない日がある。

なぜわざわざそんな日が出来るのか理解しがたいが、仕方がないので吾輩が直々に起こしてあげている。
全く、ご主人は吾輩がいなければ毎日起きれないとは。

ご主人が眠っている間、体の上に載せている妙にふかふかした布の中に潜り込み、ご主人の体を目指して這っていく。
中は真っ暗なのだが、パグの中のパグである吾輩の鼻にかかれば匂いでご主人の元へとすぐにたどり着ける。

そうして鼻先がご主人の体に当たったところで、今度は頭を目指して体に沿って動く。
おっと、こっちは足か。

ご主人の頭を確認したら、次に顔を探して一気に舐め上げる。

レロレロレロレロレロレロレロレロレロ


※犬が顔をなめてくるのは飼い主への親愛からだと言われています。しかし、犬の口内には様々な菌があり、犬自身には害はなくとも人間に移ると悪さをすることがあります。健康な人間でも免疫力が弱っていたり、老人や子供などは重症化することがあるので気を付けましょう。


「んっんー…やん、ちょっと金時やめて。起きた、起きたってば。ふふふっ」

暫くそうしていると、突然吾輩の体が宙に浮く。
目覚めたご主人によって、顔舐めが中断されて持ち上げられたからだ。

「おはよー、金時ー。んー…今日も顔臭いねー。ご飯食べたら顔を拭こうねー」


※パグは顔の皺が多いため、この皺に汚れが溜まりやすい犬です。顔からの匂いが強くなってきたと思ったら皺を拭いてあげるといいでしょう。鼻と額の間にある深い皺には特に汚れが詰まっていることが多いので、綿棒や濡らした布などでやさしく拭いてあげてください。


鼻と鼻を合わせてくるご主人に、再び顔舐めを行おうとするが、そうするより早く地面に下ろされた。
ふむ、どうやらこれ以上顔舐めをする必要はない程度に目は覚めているようだ。

吾輩を置いてあの縞々の向こう側が透けて見える壁を跨いでどこかへ行くご主人を見送り、しばらく歩き回っていると、匂いが薄くなったご主人が戻ってきた。

人間はどういうわけか、朝になるとわざわざ匂いを洗い流しているようだ。
ご主人の足元へ近づきクンカクンカしてみると、さっき目覚めたときに感じていたご主人の匂いは大分薄れ、その代わり変な匂いでおおわれている。


※多くの犬が飼い主を認識するのに匂いに頼ることが大きく、風呂上がりは石鹸の匂いなどが混ざった飼い主の匂いに少し混乱することがります。そういう時はいつものように声をかけてあげるといいでしょう。


困るなぁー。
こういうことされたら匂いでご主人を追いかけるのが難しくなるから、あんまり元の匂いを変えてほしくないんだが。

仕方ないので、吾輩の匂いを擦りつけておこう。
ご主人の足に抱き着き、ついでに舐めておく。

「ひゃっ、くすぐったぁははははは!……ちょっと金時!あんたはなんでお風呂がら上がるとそういうことをするのよ、もー」

舐めるたびにもぞもぞとするご主人の動きに吾輩の体もグラグラ揺れるが、それに負けないようにしがみつく力を強め、さらに舐めていく。

「やめなさいって。そういう悪戯をする子はぁ…こうだ!」

まだ十分に匂いが着いたとは言えないが、いきなりご主人によって吾輩の体が持ち上げられると、その膝の上に載せられワシャワシャお腹を撫でられる。

や、やめろー!
お腹を撫でると力が、抜け、て……ワフン。






「はい、ご飯だよー」

目の前に置かれた餌に、一気に食らいつく。
カリカリの細かいそれは、口に含むとジュワっとした感触がして好きだ。

食べていると何かが背中に触れたのに気付く。
これはご主人が吾輩の背中を撫でているのだ。
いつも餌を食べているとご主人はそうしてくる。
なぜそうするのかは分からないが、一度だけそうしているご主人の顔を見たら楽しそうな顔をしていたので別にいいかと思っている。

餌を全て食べ終わるといよいよ恐怖の時間がやってきた。
ガシっと体を捕まえられると、ご主人は手にした布で吾輩の顔をぬぐい始めた。

時々訪れるこの時間は、吾輩にとって何とも苦しいものだ。
次々顔へと押し付けられる布に、皺が次々となぞられていく。

下がるわー。
テンション下がるわー。

はっきり言ってこれはあまりありがたいものではない。
特に念入りに鼻の上を拭われるのだが、終わった後のスース―する感じが苦手だ。

「はい終わり。んー…綺麗になったねー」

ようやく解放された吾輩はご主人から距離を取り、物陰で顔を振るう。
まったく、ご主人はどうしてこんなことをするのか理解に苦しむ。
大体、顔の掃除ぐらい自分でできるというのに。
ほれ、こうしてペロリとして顔をゴシゴシっと…。
うむ、綺麗になった。







随分日が高くなったのが、差し込む光で分かる。
ご主人は先程から何やら手元にある四角い板をいじっているが、吾輩はその傍で身を伏せている。

この状態のご主人は何をしても無視するので、あの板いじりに飽きたところで遊ぶためにこうして待っている。
ふっふっふ、さぁご主人。
早く吾輩と遊ぶ…じゃない。
吾輩が遊んでやろうではないか。
さぁ!さぁさぁさぁさぁ!
早く!まだそれいじってんの!
もういいだろう!早く紐の引っ張り合いをしよう!
ご主人ー!






はっ!
いかん、少し眠っていたようだ。


※犬は一日の大半を眠って過ごします。一度に深い睡眠をとるのではなく、浅い眠りを何度もとるため、眠っているのを無理に起こして遊ぼうとするのはやめてあげましょう。


ご主人は…いない?
ふむ、差し込む光はかなり赤い。
どうやらもう夕方らしい。

ご主人の匂いがかすかに残っているが、音が一つもないのはまたどこかに行ったらしい。

時々ご主人は吾輩が眠っている間にいなくなる。
餌を手に入れに行ったと思うが、出来れば吾輩を連れて行って欲しかった。
何処からか手に入れてくる、あのカリカリしたものも悪いものではないがたまには違うものも食べたい。

そう、例えば血の滴るー

「ただいまー。金時、いい子にしてたー?犬チャール買ってきたよー」

ぃいやっほー!
この匂いは例のアレだー!

ご主人、はよ!はよー!

………くぅー!この一口のために四足歩行やってるぅ!

そこからはもう夢中だ。
差し出されていたご主人の手に掴みかかり、一心不乱に舐めていった。




ばっふ。
失礼、おくびが出てしまったな。

いやぁ、相変わらず美味いもんだ。
あれは一体どこで手に入るものなのだろうか?
きっとご主人がどこからか狩ってくるとは思うが、もうちょっと量が欲しい吾輩としては、いつかこの牙で仕留めて飽きるほど食らってやりたいものだ。

あ、鼻痒い。

なんだか突然鼻のすぐ上の辺りが痒くなり、後ろ足で顔をガッガッとかくが、痒みは取れない。
おかしいな、場所はあってるはずなんだが。

かゆっ痒い!うぉぉおお!
段々イライラしてきたからなんか噛んじゃおう。
お?目の前になんかチラチラ動くものがあるから、これにしよう。
ガブリ、ってこれ吾輩の脚じゃん。

…ま、まぁ丁度足も痒かったし?
たまには足も噛んでおきたい気分だったし~。







パグ、それは特徴的な顔を持った犬。
好きな人間にはたまらないその顔と、愛らしい性格で高い人気を誇っているが、時々アホになることで有名な犬。
そんなパグの日常の一コマでした。
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